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Something Impressive(KYOKOⅢ)

サガン 疾走する生(’09)

先日で、サガンの評伝を読み終えました。一昨年6月「サガン~悲しみよこんにちは~」を見た時に、劇場で買ってた本で、ボリュームもあったのですが、足掛け2年余りで。

なかなか一気には進まず、放置してた時期も割とあり、最近また少しずつ進めてて、先日高井戸訪問で母が仕事を終わるのを待ってる時に、後ろの4分の1程を読み終えたのですが、初めて行った西友のベンチで読むサガンの人生、というのも、何だか異次元感覚も。

一昨年前まで私が知ってたサガン関連人物、と言えば、初婚の時の夫、ギイ、親友ベルナール、息子ドゥニ、サルトルとの交友、オーソン・ウェルズ、ビリー・ホリディ、新潮文庫のサガン小説の表紙のビュッフェ、位で、

映画で新たに知った人物もあったですが、この本では、作者のマリー=ドミニク・ルリエーヴルの綿密な取材で、色々次々人物が登場、それも、読み進めるのが滞ってた一因でしたが、やはり終盤も色んな人が続々登場。

それでも、やはりこれを興味途切れず一通り読み通せたのは、ひとえに、以前サガン小説が好きだったから、その愛着で、サガン自身の面影、エキスのようなものが、味わいだったから。やはり2時間の映画よりは、その人となりが、細かく描写されてた感で読み応えありました。


サガンの車やギャンブル絡みの破天荒な生活は、インタビュー本などで前からそれとなく知ってましたが、映画とこの本で、イメージよりも深刻な薬物依存とか、バイセクシュアル癖、なども今にして、そうだったのか、という所で、

また、2度の結婚生活の、幸福もあっても悲哀、無防備、繊細、ある品性を崩さない一線、聡明さと軽率さ、少女っぽさと大胆さ、とか入り混じった人間性の一画、というのも今にして。

昔、サガン本を好きで読んでた頃は、作者のそういう部分は全く知らず、ただ、そこに繰り広げられるフランスブルジョア階層の、恋の世界、微妙な心のアヤ、何か人の本質を突いてるような描き方、など子供なりに惹かれて、その後も近年まで、折々味わってきたのでしたが、

前に年間ベスト記事に書いてたように、そういう実態は情報として知らなかったからこそ、作品自体、その作家としての力量を、そのまま純粋に受け入れられた面も、とも。

サガンは最後までカミングアウトはしなかった、という所からしても、性格的にも、もし現代であっても、プライバシーには一定の線を守るタイプだったのでは、と思うのですが、

やはりもし、同時中継的に、今時のように、エキセントリックさやスキャンダル的関係などの、素顔がネット上で散りばめられていたりしたら、果たしてそのままに小説の繊細さを味わえたか、というと、無理だったかと。


敗戦、戦後を子供時代に体験、収容所の残酷な様子なども目にしたり、という影も持ちながら、社会的に切り込む作風でなく、自分の住む階級の、内面世界を描いたサガン。彼女は自分の苦悩を読者に押し付けたりはしなかった、読者は自分の悩みだけで精一杯なのだ、というような記述もあったり、

サガンの無頓着さ、人の良さは、世知辛い現代だったら、誤解を受けたかもしれない、というような趣旨の所もちょっと印象的だったのですが、今思えば、サガン世界の、世知辛さのない洒脱さ、優しさ、鋭いというより、軽い苦笑い的なシニカルな所とかが、好きだった、とも。


新たに知った交友歴で印象的だったのは、ミッテラン大統領から、詐欺師まがいの人物、’04年の臨終の時、その手を握ってた世話役の老女マリーなど、幅広さも改めて、でしたが、やはりペギー・ロッシュとフロレンス・マルロー。

フロレンスは、映画ではマルゴ・バスカルが演じてて、彼女とは、多分生粋の友情で結ばれてた、という関係のようですが、アンドレ・マルローの娘、この本で知る限りでも、芯はあっても、サガンとは対をなすような、一歩引いたような落ち着いた聡明さで、サガンを支えてた、と。

かつて映画監督アラン・レネと結婚、数々の監督の助監督を務めてた、とも。ベルナールは、「一年ののち」などに登場人物と同名、彼がモデル、というような事も聞いたのだったか、前から知ってたのですが、フロレンスもサガンにとって、彼に劣らない、身近な存在だったのだった、と。

それと映画ではジャンヌ・バリバールが演じてた、ペギー・ロッシュ。人物的魅力、というより、やはり本でも、サガンの最愛のパートナー、彼女の死が、サガンに与えた衝撃の強さ、という部分が映画より細かに書かれてて、サガン自身の孤独の深さ、というものも浮き彫りになったようで、頭に残ったエピソード。

個々の作品には折に触れられてても、特にそれ自体の項目、というのはなかったですが、サガン伝説のその実態に迫った、という味わいあった1冊でした。

関連サイト:Amazon 「サガン 疾走する生」
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          著者:マリー=ドミニク・ルリエーヴル/訳者:永田千奈
     
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by MIEKOMISSLIM | 2011-08-19 22:14 | | Trackback | Comments(0)