2012年 04月 03日
鈴子の恋(’12)
連ドラを通しで見たのは、'思えば’08年「風のガーデン」以来。本名日向鈴子、だったミヤコ喋々さんの伝記で、私は本人の姿は薄っすら覚えある程度、’00年に亡くなってて、にわかに出演シーンは浮かばないけれど、その前年の市川作品「大阪物語」に出てたのだった、と。
この人の伝記物、というのは初見、戦時中の混乱の時代の波もあったり、芸人、一女性として結構波乱の人生模様。
序盤、美山加恋演じた子役時代から、旅一座「日向鈴子一座」の看板を背負ってて、幼くして大人の座員から”座長”と呼ばれるだけの自覚、芯の強さ、というのは垣間見えたり。
生い立ちも、父(片岡鶴太郎)が、彼女を連れて義理の母(浅野ゆう子)と駆け落ち、という過程のため、実の母(多岐川裕美)、兄(真山明大)と幼くして生き別れ。後に再会するけれど、一少女としてのその家庭での平凡な幸せ人生よりは、舞台での道を選ぶ、という自らの決断。
そしてこの頃は、筑豊のバイオリン少年良太(西井幸人)との淡い純愛、だったけれど、さすがに昼ドラ、そういうテイストから次第に、旅一座の中でも色々恋愛沙汰の様相、
大人になったヒロイン鈴子(映美くらら)自身も、劇場の息子佐伯(木村了)と駆け落ち、別れさせられたり、三遊亭柳枝(神保悟志)との不倫、略奪愛、相手の浮気で別れ、弟子だった南都雄二(山崎樹範)と結ばれ、でも再び相手の浮気で別れ、と、それなりにドロドロ展開。
最初の結婚の辺りで、見るのは止めようか、と思いつつ、まあ毎回部分的にだけれど流れるユーミン曲絡みで見始めた、というのもあったし、いっそ、と、結局ラストまできていた、という所。
4/4追記:中国遠征での、ミス・ワカナ(三倉佳奈)、春夫(佐野和真)との「笑わし隊」漫才辺りから、またその後”ミヤコ喋々”の名を持って、ますます、”芸人”になっていった感じの鈴子。
恋模様で、柳枝との関係は、そもそも彼の方から強引に誘惑、一途ゆえに不倫にはまって突っ走ってしまった、面もあるけれど、その時妻(岩橋道子)から言い渡された通り、奪ったものは後で必ず報いを受ける、という定石通りになってしまって、皮肉だけれど自業自得、という感じ、
でもまだその頃は、微妙な関係の時、仕事上のコンビを躊躇ったり、子供まで作る浮気で裏切られた時には、ショックの余りヒロポンという薬中毒になってしまったり、混乱して苦しんだりもしていたけれど、
南都雄二との頃は、やはり同様の浮気をされて結婚生活が破綻した後も、彼と「夫婦善哉」のペア司会を客の前で明るくこなしていく、凄まじい、というか、一女性としては何だか痛々しいまでのプロ根性。
終盤、彼女に接近するプロデューサー田淵(田中幸太郎)が、柳枝も雄二も、芸人としては絶対妥協しないけれど、女性としてはとことん尽くす、そんな彼女が併せ持つギャップに、付いていけなくなったのでは、と指摘してて、
要は彼らの器の狭さ、甲斐性のなさ+彼女の懐の広すぎ、と言ってしまえばそれまでだけど、雄二と浮気相手郁子(宮下ともみ)の家にも訪問して、嫌味な風でもなく、その子供2人と明るく接触する、まるで雄二の母の立場、でもあるかのようなシュールなシーンも。
結局劇中、病死した柳枝、雄二のそれぞれの最期を看取ったのは彼女、他の女性に走りながら、その女性達にも愛想つかされて、戻る場所が彼女の所だった、というのも皮肉、余りに勝手すぎ、だけれど。
また終盤、そんな彼女の、芸人、女性としての両面を受け入れつつあるスタンスだった田淵も、郁子との関係も並行させてたり、何だか、という感じ。
でも、そういう世俗まみれの男性陣とは異質な存在、ラブストーリーとして唯一、ピュアな味付けした印象なのが、初恋の相手の良太(鈴木裕樹)。
裕福な家庭に育ちながら家が破産、戦争で手を負傷、バイオリンを弾けなくなりつつも、音楽家として頭角を現して、「荒野の女神」という曲で名を知られ、それを耳にした鈴子(喋々)が、詞を変えて歌い、
良太の勧めもあって、「女神のワルツ」として自分の持ち歌に。最終回含め、彼女がステージでこの歌を歌うシーンが何度かあって、劇中、ちょっと印象的だった哀愁の曲。
私は映美くららは初見、元宝塚娘役No.1とのことで、昼ドラヒロインにしてはピュアな方か、さすがに華あるムード、勝手な男達に「あほ!」を連発、女性として翻弄されたり激しさ、情、芸人としてのきっぷのよさを見せたりしてたけれど、この歌のシーンが一番インパクトかも。
実際こういう、ミヤコ喋々曲があったんだろうか、と、ちょっと検索したら、どうもこの坂巻良太自体、架空の人物らしく、この曲も、番組のためのオリジナル曲で、作詞は脚本担当の大石静、作曲は番組の音楽担当の森英治ではないか、とのことで。
まあ実話ベースのみでの、男達の無節操さに振り回される女性としての悲哀が、この架空の、結ばれることはなかったけれど、時をかける純愛で、緩和された、というか。この人物を話に折り入れたのは、なかなかの構成だったのでは、とも。
脇役陣で印象的だったのは、放送開始後数日目に、漫才師ミス・ワカナ役がマナカナの片割れ三倉佳奈、と気付いて、姿も久方だったけど、大人になって、単独でも出るようになったんだ、と思ったり。「GSワンダーランド」で見かけた時は、2人ペア出演だったけれど。
あと柳枝の浮気相手の美麗役は、後で「旅の贈りもの 0:00時発」で孤独な少女役だった、多岐川華子だった、と知って、絡みは全くなかったけれど、鈴子の実母役の多岐川裕美と母娘共演だったのだったり、
また子供時代の鈴子役の美山加恋もなかなか芸達者、私は初見かと思ったら、すでに「いま、会いにゆきます」に、息子役武井証の友人役で出てたのだったと。
4/5追記:そして、ユーミンテーマ曲「恋をリリース」。ユーミン曲のこういう時間帯のテーマ曲、というのは、覚えある限り、大分前のNHK銀河テレビ小説「夏の故郷・幻のぶどう園」の「晩夏(ひとりの季節)」以来。
今回の内容にしてはややポップすぎ、に感じた時もあったけれど、しんみりした曲だったとして、かえって重くなって難しかった気もするし、
実際手痛い失恋、でもこういう風に明るいテンポで、相手にエールを送って、自分も前に、というのが、結果的に、相手に振り回され傷つきながらも、深い懐で、波乱を走りぬいたミヤコ喋々的スタンスにマッチしてた感じで、
やはり近年の「RAILWAYS・・」2作のテーマ曲同様、注目の場で”はずしてない”曲を持ってくるのはさすが、というか。
もし既成ユーミン曲なら似合いそうなのは、とちょっと考えてみたけれど、もろ失恋ソング、でも合わないし、なかなか難しく、当面引っ掛かるのは「恋の一時間は孤独の千年」「とこしえにGood Night(夜明けの色)」「二人のストリート」とか。
そういう所で、ユーミン曲絡みでの久方の連ドラ鑑賞、まあ全般的に恋物語としては、何だか、という後味でしたけれど、伝説の芸人ミヤコ喋々題材で、
昭和前期のTVが広まる前の娯楽としての色々舞台シーン、その裏側や、「女神のワルツ」などの音楽の味付けなどもあって、約3ヶ月間、それなりに味わいでした。
関連サイト:東海テレビ 鈴子の恋、「鈴子の恋」オリジナル・サウンドトラック EMI Music Japan(試聴可、「女神のワルツ」は最終曲。右画面の音楽をミュートにしてからの方が聞き易いです。)、Amaozn 「恋をリリース/松任谷由実」
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