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Something Impressive(KYOKOⅢ)

ナイト・オン・ザ・プラネット(’91)

昨日、近くの阿佐ヶ谷図書館の映画会で「ナイト・オン・ザ・プラネット」上映。都合も合ったので見てきました。この作品は大分前、ビデオで見て以来。

同じ夜、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキのタクシー運転手と客のやり取りを描いたオムニバス。

内容の記憶は薄れてても、何だか世界の各都市同時実況中継的、ファンタジック作、という感触が残ってて、この機会にどんな詳細だったか?確かめたいとも思ったのだけれど、

今回実際見てみて、冒頭、地球の遠景~地球儀映像にかぶって、かなりダミ声の男性ボーカルのテーマ曲、これは音楽担当のトム・ウェイツのようで、

そういう所から、やはりストーリーもほぼ記憶になく、かろうじて、ベアトリス・ダルが出てたのは薄っすら覚えあっても、盲目の女性役、というのも覚えなく、5話共それぞれこういう内容だった、と改めて。

そして、ファンタジックだった印象とは裏腹に、意外と、というか、現実的な人間模様、心の機微を感じて、前回余り真剣に見てなかったのか、当時ファンタジック、と感じたのが、自分が年を経て見方が変わったのか?とにかく、結構印象が変化。


今回1編気に入ったのを挙げるなら、2話目のNY編。若い黒人ヨーヨー(ジャンカルロ・エスポジート)が、やっとタクシーを拾った、と思ったら、運転手は東ドイツから来たばかりの移民ヘルムート(アーミン・ミューラー・スタール)。

地理も疎く、運転自体かなり怪しく、ヨーヨーがブルックリンまでの運転を買って出て、途中、妹のアンジェラ(ロージー・ペレズ)も加わって、ヘルムートが元道化師だったり、互いの名前などをネタに車中盛り上がって、というなんと言うことのない話だけれど、一時の陽気な交流、という感じ。

           

今回の5都市で、私は訪問歴あるのはLA、NY、ローマ、タクシーに乗ったのはNYでのみ、この作品の前年'90年。でも、その時は、明朝早くシカゴ方面への別空港への乗り換え前の一泊のためで、初のアメリカ大陸着、深夜だったせいもあって、とにかくかなり緊張してて、

翌朝ラガーディア空港へもタクシーで行ったはずだけど、同様で、唯一のNYタクシー経験が、ほぼ記憶になく残念だった、と思い出したり。

他のNY舞台作品でも、たまにタクシー模様は覚えあるけれど、やはり移民の街、さまざまな国籍、背景のタクシードライバーがいるんだろうと。


他の話では、1話目LAのコーキー(ウィノナ・ライダー)は5話中唯一女性ドライバー、乗せた女性客(ジーナ・ローランズ)が、映画のキャスティングの仕事をしてて、車内でラフに接してる内、コーキーが新作の配役にフィット、と閃いて、彼女を映画に出ないか、と勧誘。

通常ならシンデレラストーリー、という所だけれど、コーキーは、整備工になる人生設計を立ててるから、と断って別れ。ワイルドな物腰の彼女の、やや硬派な筋の通し方、がちょっと印象的。


3話目パリ、高官らしい黒人2人の酔い客になじられ、コートジヴォアール人の運転手イザーク(イザーク・ド・バンコレ)は、彼らを車から追い出し、うんざりモード。そして盲目の若い女性(ベアトリス・ダル)を拾い、蓮っ葉ではあるけれど、彼女の盲目故、でもある鋭い感性にやや驚き、感慨。

あえて安めの料金を告げるけれど、彼女は、もっと走ったはず、憐れみを受ける筋合いはない、のような趣旨のことを言って、正規の料金を払って下車。


4話目ローマ、しゃべり好き運転手ジーノ(ロベルト・ベニーニ)は客の神父(パオロ・ボナチェッリ)に、下ネタ系の懺悔を勝手に語りまくり、途中、心臓の弱い神父は薬を飲もうとするけれど、急ブレーキで、車中にこぼしてしまい、ついには息絶えてしまい、

それに気付いたジーノは罪の大きさにおののき、街のベンチに彼を置き去り。これが一番ブラック、というか、くだけた話だったけれど、まあ状況では、彼の破廉恥話が神父にショックを与えた、にしても、元々心臓が弱く、薬を飲めなかった急ブレーキも故意に、でなく罪に問われる可能性は薄いだろうし、

神父自身、傲慢さとか嫌な印象は全くなく、車中、聞きたくもない不埒な懺悔を聞かされた被害者だし、別に人道主義的作風じゃないにしても、何だか後味悪いし、軽薄キャラクターなりに、逃げるのでなく、出来るだけの事後処理はさせて欲しかった、と。


そして最終ヘルシンキ、ここでの話が一番内容的には重み。運転手ミカ(マッティ・ペロンパー)は、酔った男3人組を拾い、その内のアキ(トミ・サルミラ)は酔いつぶれ状態。

同僚の2人(カリ・ヴァーナネン、サカリ・クオスマネン)が、仕事を首になったのを初め、その日アキに起きた不幸の数々を語って、ミカも流れで自分の過去の不幸、生まれてまもない娘を亡くした時の複雑な心の揺れ、後悔などを語り、

それを聞いた2人はすすり泣き、アキの不幸など大した事じゃない、これからきっと良くなる、などとミカにエールを送り、抱擁して下車。何も聞いてなかったアキはミカに起こされ、何もタダのものはない、厳しいね、などと退職金からタクシー代を払って、ふらふらと下車。

          

どの都市の夜も、様々なネオン、雨に濡れた石畳、仄かな街灯の明かり、そこを走るタクシー、無機的な感じの夜景だったけれど、このヘルシンキは、いかにも冷たそうな、雪が覆う白い道の背景+ドライバーミカが語る悲しい話、が相まって、ある意味濃縮人間ドラマ短編、という後味。


改めて、前述のように、こういう内容だったのだ、と再認識のオムニバス。ジャームッシュ作品は、一番最新ではDVDで「コーヒー&シガレッツ」を見てて、これもやや記憶曖昧だけれど、この「ナイト・・」の方が、やはりオフビートさはあっても密度濃かった感じ。

そして前ブログ記事で、工藤夕貴が「ミステリー・トレイン」以来再びジャームッシュ作品に出演、というのをチェックしてて、これは「リミッツ・オブ・コントロール」(’09)という作品で、未見のまま。

スペイン舞台らしく、外人俳優達と渡り合う工藤夕貴、は興味あっても、ハードボイルド系のようで荒筋見る限りでは、余り見たい気はしないのだけれど、まあもし折あれば、という所。

また、こういうタクシー舞台作品で、思い出したのがキアロスタミ作品「10話」。あれは、女性ドライバーの車に次々客が乗り込んできて、それぞれの背景の話をしながら展開、だったのだったけれど、いわば密室劇、タクシーという狭い空間でのやり取りだからこそ滲み出る人間性、というような感じも改めて。


そういう所で、久方に見たこの作品、それぞれの夜の都会の片隅のエピソード、今改めて見て、人間ドラマとして色々新たに思う所もあった、という後味でした。

関連サイト:Amazon [ナイト・オン・ザ・プラネット」阿佐ヶ谷図書館 映画会象のロケット 「ナイト・オン・ザ・プラネット」
関連記事:ブロークン・フラワーズ(’05)コーヒー&シガレッツ(’05)工藤夕貴、ジャームッシュ作品に10話(’02)(「「KYOKO」&イランはじめエスニック映画」スレッド44)
<スレッドファイルリンク(ここでは「「KYOKO」&イランはじめエスニック映画」)は開かない場合あるようです。>

     
Tracked from 象のロケット at 2012-04-09 12:07
タイトル : ナイト・オン・ザ・プラネット
地球上の5つの都市ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキのある一夜。 タクシー運転手と乗客の人間模様を短編5編を連ねて描くオムニバス。... more
by MIEKOMISSLIM | 2012-04-08 23:16 | 洋画 | Trackback(1) | Comments(0)