Something Impressive(KYOKOⅢ)


SONGS 尾崎豊

「SONGS」先週は、動いている姿自体覚えのなかった郷愁の長谷川きよし、でしたけれど、その前回4月28日の尾崎豊の回をオンタイム、録画で見ました。

先月25日が命日で、没後20年経ったのだけれど、いまだにこうして、忘れかけた頃にふと取り上げられる尾崎。

今回は「15の夜」「卒業」太陽の破片」「誕生」「I LOVE YOU」ライブ映像。今回公開された約50冊の創作ノートの断片が折々、彼と縁(ゆかり)あったプロデューサー須藤晃氏のコメントを交えて。


今回一番インパクトはやはりラストの「I LOVE YOU」。’09年中森明菜がこの番組で、カバーシリーズの中、この曲も感極まりながら歌ってたのだった、と。

マイベスト尾崎曲はやはり、今回なかった「Oh My LIttle Girl」。近年では「うた魂♪」で薬師丸ひろ子版を聞いて、ちょっと感慨。
            
         

この曲もだけれど、「I LOVE YOU」も、若い尾崎豊が混迷の中、懸命に歌を通して他者に投げかけようとしてた”愛情の破片”という感じ、色褪せない曲の1つ、と改めて。


この人、と言えば、沢木さんの最新ルポ集「ポーカー・フェース」で、当時親交あった本人からコンサートに来てくれるよう誘われてたのに、行きそびれているうちに、急逝してしまい、心残りだった、などというようなエピソード。
                                 (C)(株)角川書店
a0116217_23561121.jpg尾崎豊と沢木さんというのは、'91年2月号「月刊カドカワ」で対談の顔合わせあって、精神講座「見えない水路」というタイトル。

この頃は、自分の事務所設立、コンサートツアーも控えてた充実期、でもこの1年数ヵ月後に亡くなってしまって、

その訃報を知ったのは、私は確か吉祥寺にユーミンコンサートのチケットを入手しに行ってて、駅の近くで号外のビラを見かけたのだった、などと薄っすら記憶浮かんだり。

本人の歌声を聞いた最新は、振り返れば’08年に市川準監督追悼でDVDで見た「大阪物語」のテーマ曲、どうも旋律は定かに浮かばないけれど「風にうたえば」、

また今回流れた「15の夜」は、やはり「うた魂♪」で男コーラスが勢いで歌ってたのだった、とか。


5/17追記:「月カド」の沢木さんとの対談で、印象的だったのは、沢木さんが、井上陽水と彼との決定的な違いは、陽水は単数と単数の世界しか歌ってこなかった、自分も、と言っていいけれど、1対1で誰かに向けて書いているはず、

でも尾崎豊は、複数に向かって歌いかけたことがあるし、歌いかけたいと思っているところがある、聞き手を救済したい、という願望があって、それは陽水にも僕にも絶対ないものだ、のように述べて、

尾崎豊は、自分が幸せになるためには、他人も幸せでなくてはならない、という気持がある、という話に対して、

沢木さんは、それは素晴らしいことだと思う、僕も陽水もそこには断念してしまって、やはり1人1人にラブレターを書いて、そういうもので確実な手触りのあるものを作っていくしかしょうがないと思ったから、のようなやり取り。


10代の頃、学校という支配への反発、をコンセプトにカリスマになった彼が、20代になって方向性を模索、NYに行ったり、覚せい剤に手を出してしまったりして混迷、

今回須藤氏がその薬物事件について、自分の享楽、快楽のために人を傷つけたり、薬物をやったりする人ではいということだけは判ってたので、やはり自分が歌うべきものを探しながら、絶対開けてはいけない扉を開けてしまった、とコメント。

拘置所の中で書いた、という「太陽の破片」も流れたけれど、正直20代の彼の曲は私は余り馴染みもインパクトも残っておらず、折に耳にしても、何か抽象的な痛々しさ、という印象。


(C)(株)大田出版、(株)角川書店
a0116217_253182.jpg対談で語ってたように、ピュアで大きな愛情、のようなコンセプトを根本に持っていたとは思うのだけれど、

手元にある、鬼頭明嗣の尾崎回顧本「アイ・ラヴ・ユー 尾崎豊」サブタイトル「尾崎豊との激走345日」では、伝説ミュージシャンの裏のかなりエキセントリック、破天荒、脆弱な実態も。

鬼頭氏は、やはり「月カド」編集長見城氏が取り持った縁で、彼のコンサートを見て、予想つかない全身全霊さ、に魅せられ、後にマネージャーになって、尾崎が社長となった事務所「アイソトープ」をお膳立て、そしてコンサートツアー活動を援助した人物。

先日尾崎写真詩集「白紙の散乱」と共に取り出してみて、どちらの表紙もいつのまにか一部破れてしまっているけれど、久方に開いてみて、

鬼頭氏本では、尾崎豊の礼儀正しさ、人懐っこさ、超多忙でもグッズ売り上げなど会社の細かい経理も自分で目を通す完璧主義さ、常に周りに自分への注意・注目を求める我儘さ、ガラス細工のような繊細さ、

先日の「マリリン 7日間の恋」のマリリン・モンローではないけれど、1つ1つの行動自体、本人の微妙なメンタリティによって、かなり時間がかかったり、回りはヤキモキ状態、

でもどんなに不安的でも一旦ステージに立ったら必ずやり遂げてみせる力、とか、鬼頭氏が書いてるように、まさに”多面体”。


5/18追記:繁美夫人との結婚、長男誕生、という私生活での糧もあったけれど、この本での限りでは、彼の死の前の数年に夫人、息子はほとんど登場せず。

一時不倫スキャンダルがあった斉藤由貴との関係については、同氏は、彼らは恋愛関係でなく本当に”同志”だった、と書いてるけれど、ああいう騒がれ方で出る、というのはそれが”同志愛”であれ何であれ、夫人にとっては裏切り、ではなかったかと。

いつかこの夫人のインタビューだったか、文章でだったか、彼は猜疑心が凄い所があって、ありもしない自分(夫人)の方の裏切り、を思い込んで、小説にも書いていた、ようなエピソードも。


そして結局、彼に振り回されつつ側近として奔走した鬼頭氏とも、ツアー中に決別。

その理由が、ツアー中常に尾崎豊の隣の部屋で待機状態の同氏が、スタッフ慰労会を省いて、たまたま一夜だけ深夜、現場の責任者に誘われて博多の祭り見物に出かけている時、尾崎が彼の部屋に電話、怒りの形相でてホテル中を駆けずり回ってて、

その夜のうちに、尾崎と母との電話の”役員会議”で、一緒にでかけたスタッフともども帰京、自宅待機決定、尾崎の母は残る方向で話し合って、と言ってくれたけれど、その頃には同氏は疲労困憊、やや醒めた心境もあって、その後決別となった、というようなくだり。

何だかまさに24時間中スタッフに、自分への注視を求め、たった一度深夜にそれがされなかったからといって即離脱命令、という理不尽の極み、というようなエピソードだけれど、

そのやや前の記述から、敏感な尾崎が、自分に疲れ、やや引き気味になってる鬼頭氏の心情を察してる節もあって、もしかして、去られて傷つくのを恐れてて、この件をきっかけに、先手を打って自分から別れを切り出したのかも、とも。

鬼頭氏なしでツアーは無事終了、でもその後尾崎は酒に溺れ荒れ気味、秋以降、鬼頭氏の所に、彼ではないか、という無言電話が増え、そういう彼の唯一の拠り所だったお母さんも’91年末に病死。

この本でも折に名が出てた須藤氏は番組中、このお母さんの死のショックで、尾崎はおかしくなっていった、と。


それでもニューアルバムを準備、コンサートツアー予定も出てたけれど、運命の'92年4月25日未明、知人と飲みに出てた鬼頭氏が、もう一軒行こう、と誘われ、携帯の電池が切れてるのを気にしつつ付き合って、

早朝帰ったら、自宅に、倒れた尾崎が警察から病院にまわされ、同氏に着替えを持ってくるように頼んだ、と連絡が入ってた、と。

急いで飛び出そうとした所に警察から、尾崎は奥さんと一緒に帰った、安心して下さい、と連絡あったけれど、その日の午後に訃報。

ツアー中、ホテルからの1時間の留守が、決別になって、またしても、もう一軒だけ、というハシゴ酒で尾崎からのSOSをキャッチし損ねた、という思い。

でも、その究極の時に、奥さんでも周囲のスタッフなどでもなく、母の葬儀では会ってたけれど決別していたかつてのマネージャーに、着替えを届けるよう連絡、というエピソードが、彼の孤独を浮き彫りにしてるようでも。

護国寺の葬儀で、整然と静かに並ぶ3万5千の参列者を目の当たりにして涙、「やったな、尾崎・・・。君はすごいものをこの世に残していったんだよ・・・。」という感慨。

以前家庭教師をしてた、結構尾崎ファンらしかった女子高生がいたのを思い出して、訃報当時には20代前半位か、やはりあの参列に行ったのだろうか、

今頃は40才位なはずで、現実の生活の中、もう尾崎のことなど忘却の彼方か、まだ好きで、こういう番組も見たりしてるのだろうか、とかふと思ったり。


この鬼頭氏本は、勿論起こった事への同氏の記録、見解、100%事実か?他人には判らないし、ある意味暴露本、でもある感もするけれど、ある意味、日本のミュージシャン題材本、としては、マイベスト3には入るインパクト。

やはりサガンの映画化の時なども思ったけれど、こういうスーパースターの素顔のエキセントリックさ、を今時のネットなどで、リアルタイムで知ってたとしたら、その創作品の好み、とは別の所で、私は辟易してただろうと。

大きな他者への愛、という理想、その反面自分が裏切られ、傷つくのを恐れる極度なナイーブさ。そういう心の振り子の狭間でもがいて、ある意味太く短くの、享年26才だったのだった、と。


無論、30分番組「SONGS」では、経歴映像や須藤氏のコメントから多少なりとも尾崎豊の心の葛藤、は垣間見えても、鬼頭氏本での裏面のエキセントリックさ、ある種脆弱さ、などは浮かばず、彼の代表曲のスポットライトの中のパフォーマンスの輝き、のインパクトが残るのだけれど、

何だか、彼の激しくかつ繊細な感性は、豊かな現代の、しかもバブル期だった日本、ではもてあまし気味だったのでは、

10代の頃は、それでも学校という権力への反発、というコンセプトが持てたけれど、そういう時代が過ぎて、次に何を、という段になって、

大きな愛に向けて、というピュアな理想が、基本的に豊かで資本主義の日本だと、ある種、誤解されたりから回りの空しさ、という部分もあったのでは、とも。

葬儀に並んだ3万5千人の市井のファン、いまだに命日には墓碑に集まる人々、語り継がれる伝説、日本の若者にも何か伝わったもの、残したものがあるのは事実だと思うけれど、

対談中沢木さんが、今書いてる小説や絵はあなた自身の水路にはなっているけれど、その水路が読み手につながらないものがあるんじゃないか、と指摘してたり、そういう文学性、という所もあったけれど、

もし彼が、もっと社会的貧困国などに生まれていたら、周囲の”負”の状況に、秘められた資質から異種のパワーを発揮、メンタル的混迷や不安に落ち込む暇もなく活動して、生き長らえてたかも、などとも。

以前の特番感想記事で、今彼が生きてたらどういう曲を歌うのだろう、とか書いてたのだったけれど、日本も3.11という打撃を受けた今、上記のもしも、のような事も改めて思った、今回の尾崎特集。


先日尾崎関連検索中、彼の逝去時2才だった息子尾崎裕哉君、というのが、今慶大生、ラジオ番組で活動したりも、という情報を見かけて、

あの訃報後、色々憶測もあったり、混乱を避けて繁美夫人と息子は渡米、というのは聞いた覚えだったけれど、帰国してたのだった、と今にして。

そしてその息子が、'08年文化祭か何かだったらしいけれど「I LOVE YOU」を歌う画像発見、You tubeにも、その「I LOVE・・」と「15の夜」が。

          

            

面差しは、父のような精悍さ、ではなく草食系な印象、歌は、最初「I LOVE・・」を聞いた時、歌い出しの辺りでは多少上手い素人、な感じ、でも曲が進んでいく内、さすがに声のメロウさは尾崎遺伝子的、今にして聞く実の息子版、と、何だか感慨も。

最初見かけた記事で、生前の父を意識してか否か「音楽で世界を救いたい」願いを持ってる、とのことで、いずれ何かの形で、もっと公に出てくるのかもしれないけれど、そういうちょっとプラスα、番外編発見もあった今回でした。

関連サイト:SONGS 第217回 尾崎豊
関連記事:白紙の散乱(’93)LOVE SONGS(’01)あの歌がきこえる 「僕が僕であるために」プレミアム10 尾崎豊がいた夏うた魂♪(’08)大阪物語(’99)-追悼・市川準監督ークリスマスの約束(’06)SONGS 中森明菜<1>LIFE 井上陽水~40年を語る~<1><2>ポーカー・フェース / 沢木耕太郎(’11)
<スレッドファイルリンク(ここでは「うた魂♪」)は開かない場合あるようです。>


              
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by MIEKOMISSLIM | 2012-05-16 23:03 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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