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Something Impressive(KYOKOⅢ)

マンタの天ぷら(’97)・僕の散財日記(’05) / 松任谷正隆

先日図書館在庫で発見、未読だった正隆氏の本2冊を読みました。

「マンタの天ぷら」は車関係中心のエッセイ、「僕の散財日記」は、以前Men's EXという雑誌に連載してらしい同氏の買い物日記、'05年に単行本が出て、’09年それが文庫になってて、今回読んだのは文庫版。

ユーミン本は追ってきたけれど、正隆氏本、というのは手をつけておらず、どんなものかと思ったけれど、妻ユーミンのことも折に登場、

でも音楽ネタも少なく、車、様々なブランド系グッズ話、と、正直私には縁も興味も薄いトピックが多め、なので余り熟読というより、ざっと斜め読みの箇所も。


                                       (C)岩崎美術社
マンタの天ぷら(’97)・僕の散財日記(’05) / 松任谷正隆_a0116217_1251445.jpgでも「僕の・・」に登場の様々なグッズの中、アンセル・アダムスの写真、という項目があって、唯一私と共通嗜好。

同氏は彼の写真が気に入って、ネットで「ものすごくリーズナブルな値段」でコピーが手に入る、とというのが判って、同氏がいう「ものすごくリーズナブル」というのはどの位か?だけれど、23枚とカレンダー、額を買って、8枚をトイレに飾ってる、と。

アダムスの写真を知った詳しい経緯は触れてないけれど、「ふと見せられた写真集の、あまりにも焦点深度の深い写真に目を奪われた。・・何がすごいって、これ、ただの風景写真じゃないでしょう。

なんだか神がかってる。・・何か目に見えないものまで写っている、と思った。・・なんだろう、森の精みたいなものなんだろうか。」のような感想に、共感する所が。

これがカラーだったらどんなにか雄大、また鮮やかな眺めか、とも頭を過ぎるけれど、これはモノクロだからこそ、の自然の造形の美しさを漂わす、渋さ。

私がアダムスの写真を知ったきっかけも、どうも思い出せず、同氏の文中、「この人についてはものすごく詳しい人達がごまんといるから、知ったようなことを書くな、とかみさんに言われている。」と、ユーミンも登場してるし、

もしかして、ラジオか雑誌か何らかの媒体で、ユーミン絡みで知ったのか、別関連かもしれないけれど、気付けばインプットしてた、という写真家。手元に、’99年のA3版カレンダー、2冊のカードブック、カード7枚。
(C)MUSEUN GRAPHICS
マンタの天ぷら(’97)・僕の散財日記(’05) / 松任谷正隆_a0116217_1253715.jpg最近目にしてなかったけれど、’96年サンフランシスコ~周辺旅の時、当時MOMAの近くにあったアンセル・アダムス・センターに寄ったり、その前か後かに、東京写真文化館での展示会に行ったのだったと。

その時の回顧記事でも触れてたけれど、月の出、墓地を照らす一瞬を捉えた「ムーンライズ」(↑上側)が有名、センターでも足を止めて一番長く見ていたのだったけれど、

今改めて見直して、一枚マイベストを選ぶとしたら、アラスカのDenami 国立公園での「MOUNT McKINLEY & WONDER LAKE」(↑)かと。ちょっと荘厳な気持にさせられる1枚。


あと、印象的だったのは、「僕の散財・・」での「かみさんからのプレゼント」で、25年程前の誕生日に、ユーミンが手編みのマフラーをくれて、すごく嬉しかったけれど、

その3年後位に、船を借り切ってのユーミンクリスマスコンサートの、企画の1つのオークションで、そのマフラーを出して、7万円という値が付いて、まだ上がりそうだったけれどそこでストップをかけて、売ってしまって、

数年経ってかなり後悔、何かあるにつけその話をして歩いてて、それを落札者がききつけて、事務所に返却してくれた、という話。

別のページでは、オークション後反省した同氏、何年かかかって、マフラーの居場所を突き止め、返してもらった、とあって、微妙にニュアンス違うけれど、とにかくそういうことがあったのだった、と。

そのオークションの事前にユーミンに話したら、面白がってるように見えたんだと思う、とあって、その前後の正確なやり取りは?だけれど、少なくともユーミンが激怒、というようなニュアンスは見られないし、

結婚14,5年目の辺りか、夫にマフラーを編むユーミン、という女らしさ、このオークションの件、というのも微妙な女心だったのでは、という感じのエピソード。


その他「マンタ・・」の方で、まだユーミンと出会った頃レコーディングで遅くなった時、八王子まで送っていったのがマークⅡ、でも「中央フリーウェイ」はその時のことではない、とか、

結婚間近の時、アウディに目が向いて、でも資金が足りなかったけれど、当時も自分の5倍以上かせぎのあったユーミンが貸してくれて、箱根、熱海の新婚旅行もそのアウディで行って、吉田拓郎、かまやつひろし達が大勢押し寄せて、ドンちゃん騒ぎだった、と。

この夫妻の、にしては意外と地味というか近場だったのだ、というのと、押し寄せた顔ぶれも濃いけれど、そういう新婚旅行だったのだった、とか今にして。

同氏はかなり方向音痴、LAで夫婦で仕事に車で出掛けた時も迷ってしまって、夫婦間のあうんの呼吸で、不快を押さえてユーミンが直観で示唆する道も間違ってたようで、軽い諍い、

人に道を聞いたりする過程で険悪になるムード、無事元の場所に戻ったけれど、1日中口をきかず、のようなくだり。

正隆氏の車嗜好って、運転はしないユーミンとは一歩置いたテイスト、と思ってたけれど、やはり行動を共にする中、色々絡みも、とか改めて。


また、余り音楽関連には触れてなかったけれど、「僕の散財・・」の「ソニー・ネットワークウォークマン」の所で、同氏はウォークマンが生まれる前から、A4サイズのカセットポータブルプレイヤー「カセットデンスケ」やドイツ製カセットテープレコーダーを使ってたそうで、

「ウォークマンは、僕の音楽ライフをがらりと変えて、音楽そのものを重いものから軽いものへと、ひょっとしたら全ての音楽は、このウォークマンによって変えられてしまったのかもしれない、とさえ思う。」などという所。


あと、「マンタの・・」の最後の章「情報のつぶつぶ」は、全体に割と面白かった。「時間について思うこと」や、人の知覚、記憶について、また「エネルギー保存の法則」を挙げて、砂金のような?情報のつぶつぶ、が存在して、

人間が死ぬ時確かに重さが変わる、というのもそのつぶの重さ、とか、テープに入ったノイズが、機械で取れないのは、それが永久磁石で、電気では消せない、お化け、というのもそういうものじゃないか、

そういう磁力が普段隠れてるのは、植物じゃないか、公園でジョギングする時、木々が話しかけてくる気がする、気のせいかもしれないけれど、彼らと話すことで、もっと色々なことが見えてくるんじゃないか、というような所。

また、最後の文「デジタルとアナログ」で、デジタル化が進む今日だけど、同氏達はレコーディングでボーカルだけはアナログテープを回す、微妙なニュアンスや温かさが録音できるから、と。

取り終わったらデジタルに移すけれど、途中でアナログが入るだけで、アナログ的になる。アナログの世界は有機的かつ複雑で、すごいものだ、

科学は、大きさ、速さ的にも限界がある固体のから、液体の科学に変わるだろうし、その時、第2世代のアナログ文化が幕を開けるに違いない、のような締め。

情報のつぶつぶ、というのも抽象的、音作りのメカの専門的な所も判らないけれど、目に見えない”音楽”の創り手の言葉として、何となく言わんとすることは伝わってくるような。

ここら辺が2冊の中唯一、同氏の音楽メカの秘密、というか一端に触れてて、ユーミン中心に同氏の創る音楽に馴染んできた私としては、ちょっと興味深かった、という所。


タイトルの「天ぷら」については、あとがきで、僕はとんでもない天ぷら野郎、衣が厚くて中身が薄い、アレンジャーを目指したのも自然なこと、衣をつくるのはガキの頃から大得意だった、

すべてのことはカッコいいかカッコ悪いかで、「カッコいい」は最上級の褒め言葉、「カッコわるい」は普通。人間カッコ悪くて当たり前だから、などと、謙遜とも本音ともつかないような記述。

確かに「マンタ・・」では、苦い思い出の素朴な排泄ネタ披露などもあったり、結構ゆるいスタンス、文的には2冊とも普通に読みやすく、どちらも趣味本、ではあるけれど、

ユーミン以外の具体的な固有名詞で他の女性の登場はなく、やはり彼女への敬意、ある種の礼節というのは漂ってる気がして、そういう部分もまあ何だかほっとする、というか。


まあ前述のように、内容的には私は異次元世界的、が多かったけれど、アンセル・アダムスの所、折に登場のユーミンエピソード、「情報のつぶつぶ」章とか、やはり脳裏に残る所もあった、という2冊でした。

関連サイト:Amazon 「マンタの天ぷら」Amazon 「僕の散財日記」
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マンタの天ぷら(’97)・僕の散財日記(’05) / 松任谷正隆_a0116217_2044699.jpg

by MIEKOMISSLIM | 2012-06-01 23:13 | 本・音楽 | Trackback | Comments(0)