2012年 06月 09日
虹色ほたる 永遠の夏休み(’12)
これはとにかく「RAILWAYS・・」シリーズ2作に続いてテーマ曲がユーミン、また正隆氏が音楽監修、とのことで気になってた作品。
先月半ば公開で、そう長い上映期間でなく、この日の入りもどうかと思ってたら、この劇場のマチネ割引の時間帯でもあってか、結構座席埋まってて、観客は若~中年層。
原作は川口雅幸の小説、手掛けたのは中高生などがたまに気に入ってる、と挙げるのを聞いたことある「ONE PIECE」の宇田鋼之介監督、宇田作品は私は未見、どんな感じのアニメかと思ったけれど、
CGを一切使わず手描きを重ねた映像で、人肌感ある、というか丁寧な田舎の背景描写、人物は輪郭が途切れてるラフなタッチ、折に劇画風になったり、ジブリや細田守作品などとも一風違うテイスト。
暑い夏の日の、濃い緑が道路に落とす影の感じ、とか、体感的にどこか懐かしさもあったり、冒頭から、ユウタ少年(声:武井証)がタイムスリップしていくダムに沈んだはずの幻の村へと、割と画面の中の世界に引き入れらていった感じ。
それは、映像に加えて、虫の声や水の音とか、いつになく結構リアルな音響、のせいもあった気がしたのだけれど、後で、音も一切打ち込みを使わず、生音、音楽もオーケストラを使った、と見かけて、あの臨場感はそれでだったのだった、と。
6/10追記:ユウタがタイムスリップしたのは’77年。TVには一瞬、解散前のキャンディーズ、微かに流れたのは「暑中お見舞い申し上げます」のようだったり、
風鈴、湧き水で冷やしてるスイカ、子供達の岩場の水遊び、澄んだ水、山中の蛍の里、村の寺、その神主青天狗(声:大塚周夫)の威厳、
その青天狗の発案で、まもなくダムの下に消えるこの村の最後の夏祭りのため、子供達が祭りのため作る灯篭、花火、祭りのヨーヨーすくいや色々食べ物の屋台、とか、
村がダムに沈む前の、のどかな暮らしぶり。ユウタは、舞台回しのような謎の老人(声:石田太郎)の手配で、出会った少女さえ子(声:木村彩由実)の従兄弟として受け入れられ、さえ子の祖母の家に居候、
謎の老人から”手続き”に時間はかかるけれど元の時代に戻れる、と聞いて安心感もあってか、さえ子や隣の少年ケンゾー(声: 新田海統)達と、その村での夏を楽しく過ごしていく日々。
でもさえ子も違う時代からトリップしてきた身のようで、どうも彼女の兄との死別に、ユウタの父が死んだバイク事故が関係、という因縁も判ったり、彼女を気にかけるユウタ、また彼に愛着を寄せるさえ子。
彼女がその時代を去る、別れの予感が漂った時、どの時代にいても、(雌の蛍が短い命だからこそ自分を見つけてほしい、と必死で光るように)自分も信号を出すから、きっと見つけてね、と訴えかけて、
きっと見つけるよ、と答えるユウタ、というのは、時空を越えての切ない純愛テイスト、まさに「時をかける少女」の和子とケン・ソゴル、が彷彿したり。
そして、その祭りの夜、さえ子の手を引いてユウタが蛍の里に駆けてゆくシーンで流れ出したのが、ユーミン版ではないけれど、女性シンガーでの「水の影」。
これには不意を打たれて、やはり条件反射的に何だかジーン、というのは、リメイク「時をかける少女」の冒頭、いきものがかり版「時をかける・・」イントロが流れた時と同じ。
今回は、ここでこの曲が、というサプライズも拍車。1番だけだったけれど、これがフルバージョン続いたら、私の涙腺はどうなってたか、この作品のインパクトは、これに持っていかれてたかも。
エンドロールで、歌ってたのは井上水晶という人、と見かけて、後でちょっと検索しても余り詳しくは出てこないけれど、慶大生のシンガーソングライター、だそうで。
オリジナルは、ユーミンマイベスト10とかに入れる程のインパクト曲、という訳ではないけれど、時の流れの無常の切なさ漂い、いぶし銀的に好きな方の曲。これの入ってた「時のないホテル」は、思えば’80年、この村の時間と近い頃。
今思えば、時の狭間で出会って束の間の時間を過ごすユウタとさえ子の切なさ、というだけでなく、もうすぐダムの下に消え行く運命の村、散ってゆく人々、という惜別の状況にもフィット、という感じ。
6/11追記:その後終盤にかけて、元の時代に戻って成長したユウタ(声:櫻井孝宏)が再びダムの地にやってきて、大人になったさえ子(声:能登麻美子)と再会、は予定調和だけれど、
ああいう村で、住人の1人として人々に受け入れられて、小6位の頃に戻って、切なさモードの恋模様はさておき、で、自然や人情味の中で、ああいう牧歌的ひと夏を過ごす、というのも、叶うものなら見てみたい夢、という気も。
そして繰り広げられる、多数の虹色ほたるの舞うファンタジー世界は、やはり劇画タッチ手描きでダイナミックに頑張ってて、だけれど、正直、ここら辺はCGの方がより鮮やかだろうとは思ったり、
やはり素朴な手描きの味は、冒頭~村の様々な風景や家の内部の描写+ラフな人物のミックスの妙、の方が印象的。
そしてラストの注目のユーミンテーマ曲「愛と遠い日の未来へ」は、正直何分「水の影」の余韻が色濃く、漠然と大らかなスケールのバラード、とは思いつつ、やや散漫に聞いてるうちに終わってしまって、だけれど、
後で改めてYou tubeで聞いたり歌詞を見てみたら、ストーリーに沿った時空を越えてのラブソング、やはり以前の瑞々しい感性の震えあった「水の影」、には比べられないけれど、
「RAILROAD・・」の時同様、内容を外してない、クオリティある曲を持ってくるのはさすが、という感じ。
もしも既成ユーミン曲でラスト、テーマ曲に持ってくるとしたら、と考えても、「水の影」だと離れ行くニュアンスだし、なかなか難しく、
当面思い浮かぶのは「ジュピター」挿入曲に使われたことのある「青い船で」とか、’97年版「時かけ」テーマ曲「夢の中で~We are not alone forever」位。
また正隆氏監修の全編の音楽も、最初のうちは同氏担当の、と思いながら、でもあったけれど、途中から特にそういう意識もなく、自然にストーリーのサポートとして自然に聞いてたと思うけれど、
場面場面に沿った、ダイナミック、繊細、様々なニュアンスの旋律、打ち込みでなくオーケストラを使ったらしい、というのもあってやはりクオリティある臨場サウンドだったのでは、という印象。
そういう所で、ユーミンテーマ曲+正隆氏音楽監修、という興味で見た作品、特に「水の影」挿入サプライズの感慨、などもありましたけれど、
一アニメ作品としても、内容は、ノスタルジックな世界に、ダムで消え行く村、という哀愁+時空を越えた純愛ミックスで、独特な手描きの妙、臨場サウンドなど、視聴覚的にも味わい、
やはりこれは、劇場スクリーンで見応えあった、という実感もあって、思ったより色々味わいで満足でした。
関連サイト:虹色ほたる 永遠の夏休み 公式サイト、象のロケット 「虹色ほたる 永遠の夏休み」
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「ひと夏モノにハズレなし」と何度か書いてきたけど、このアニメーション『虹色ほたる~永遠の夏休み~』はひと夏ものに加えて、ダムに沈んだ村で過ごす少し昔の物語と、郷愁てんこ盛りのハズレな訳がない最強の設定。これでダメだったら宇田鋼之介監督以下スタッフの面々は才能を疑われたところだが、単なるノスタルジーだけではない、設定を活かした見事な作品に仕上がっていた。2001年夏、小学6年生のユウタは独り山へ昆虫採集に来ていた。そこは亡き父と訪れたことのある思い出の場所。なかなか昆虫が見つからず森を彷徨っているとひと...... more