2012年 06月 29日
才輝礼賛 38のyumiyoriな話 / 松任谷由実(’11)<1>
'08年8月~'11年8月まで読売新聞夕刊に連載されてたコーナーの再編集、とのことで、中にたまにネットで見かけた回も。
春先頃だったか図書館に予約入れてて、やっと番が来て読んだのだけれど、さすがに何かと引っ掛かる箇所も多々。余りもう手元の本は増やしたくないのだけれど、これはやはり折を見て入手しておきたい、と思う。
対談相手は、ジャンル別にしてみたら、
★音楽界 北島三郎、小林武史、ゆず、辻井伸行、杏(兼俳優)、井上陽水
★俳優 唐沢寿明、吉永小百合、森光子、寺島しのぶ、中井貴一、杏(兼俳優)、井上真央
★脚本家・映画監督 宮藤官九郎、三谷幸喜 ★スポーツ界 朝青龍明徳、高橋尚子、岡田武史
★お笑い界 爆笑問題、千原ジュニア ★伝統演芸界 市川海老蔵、立川談志
★ジャーナリスト 久米宏、池上彰 ★政界 石原慎太郎、鳩山幸
★ファッション界 益若つばさ、森英恵 ★漫画家 やなせたかし、やくみつる
★科学畑 バズ・オルドリン ★化学畑 根岸英一 ★コピーライター 石田衣良
★建築家 隈研吾 ★画家 松井冬子 ★社会学者 上野千鶴子
★政治学者 姜尚中 ★映画評論家 おすぎ ★DJ 小林克也
という色々、まさにユーミンの興味の懐示すような幅広さ。
6/30追記:この内で一番インパクト残った対談、を挙げるとしたら石原都知事、か。「サーフ天国、スキー天国」のような曲は、どういう風に出てくるんだろう?と聞かれて、
ユーミンも気を使って、という訳でもないかもしれないけれど、湘南サウンド的なリゾートソングは、元をたどれば「太陽族」、そういう人達を切り取ったのが「太陽の季節」で、元々は石原さんだったと思いますよ、というような返答。
弟裕次郎や三島由紀夫の話も出たり、正隆氏との「ユーミンユニット」に、うらやましい理想の夫婦だねえ、お子さんはいないの?というのに、
いないんです。それはもう、自分にしか興味のない人間が一緒になってるから、とてもそんな(笑)・・あなたみたいな才能のDNAを残さなきゃダメだねえ。いや、一代限りだと思っています。のようなザクッとした応酬。
ユーミンが何人かに聞いてたように、日本はこれからどうなっていくと思われますか?に対して、
日本人ってシャイだけれど、受動的な姿勢を変えないと。日本人が外国に影響を与え、存在を示せるのは芸術、あなた(ユーミン)の歌も外国で受け入れられるだろうし、日本の絵画も印象派に影響を与えた、
そして自分の話として、’62年トリュフォーと合作のオムニバス映画「二十歳の恋」を作った時、君のヌーベルバーグって誰の影響を受けた?と聞いたら黒澤でも溝口でもない「浜辺の情熱」という映画、だと言って、
それって原作、シナリオが石原氏の「狂った果実」のことだと判って、じゃあ、僕が君のヌーベルバーグの師匠なんだ、と大笑い、というようなエピソード披露。
トリュフォーも気を使ってそういう風に答えた、という訳でもなかったのだろうけれど、そこら辺の話は著書「弟」にも書いてたようで。で、日本人には、自分の持つ技術、感覚の素晴らしさを発信する力が必要です、のような提言。
私は石原氏の本は多分未読だけれど、そういう風に脚本も書いてた、とか、「二十歳の恋」は、ロッセリーニなども関わってた5カ国監督でのオムニバスだったのだけれど、そういう作品で映画監督経験もあった、というのも初耳。
その少し前に、自分は小説と政治が相互にいい刺激になってて、やはり文学と政治は両方口説の徒なので、対極のようで背中合わせ、音楽家や絵描きは政治家にならない、音楽はスポーツに似てる、というようなコメントで、
立川談志の回で、話の最後に、ユーミンが・・今はまだ、体が悪くなるぐらいのことをやった方が面白いかもしれませんけどね、というのを受けて、多分冗談めかしで、選挙でもやったらどう?と言われてたけれど、それはまずなさそうだし、して欲しくもないと思う。
でもまあ石原氏とのそういうやり取りは、他の対談相手も皆個性的だけれど、特に濃いキャラクターに負けてない濃さ同士、という感じでちょっと面白かった。
7/1追記:ユーミンが、割と女性としての本音をざっくばらんに話してる感じだったのが、上野千鶴子との回。私はこの人の著作は、内容記憶薄れてるけど「ミッドナイト・コール」が手元にあるはず。
ユーミンが、上野作品の1つ「女ぎらい」には、胸のすく思いがしました。という話から始まって、松任谷さんのような、あまりミソジニー(女性嫌悪)には縁がなさそうな方がどうして、と関心あります、と応じたら、
正隆氏と交際中から「髪結いの亭主」的に言われるのが、すごく嫌だった、ということで、ユーミン自身、父が呉服屋の婿養子、という環境から、長男だけれどリベラルな夫を持って、家父長制が家になかったのを気付かなかったし、
80~90年代のブームの頃、すごいバッシングにあった、旨。上野女史も「あの程度の才能だったら男の世界にはざらにいる。上野は女だから得した」ような事を言われた、とか。
私はミソジニー(misogyny)という言い方も英語も目新しかったけれど、ユーミンは、作ってる時は、外でどう風が吹こうと、叩かれようと、自分のクリエイティブには関係ない、と意識して、それが、戦ってるってことかも知れません、などとと言ってて、
絶頂期だった分、そういうものとの戦いもシビアだったのだと改めて、だけれど、やはりあれだけのクオリティ保って走り続けたのは、メンタルの強靭さ+正隆氏とのコンビ性、も少なからず、だったのだろうと。
上野女史に、互いの才能の評価に厳しい同業者カップルはたいがい破綻します、旦那さまから嫉妬されることは?と聞かれて、
昔はあったと思うけれど、今は同化してますね。・・まあ、軋轢もしょっちゅうありますけれどね。と言うのに対して、作品を作る上で?それとも男女間の?と聞かれ、そこの境目がない、家の中にスタジオがありますし、と。
上野女史が、じゃ、合宿生活を34年やってる感じ(笑)、ほとんど同志愛ですね。同志愛でいっしょに走ってるとゲイカップルみたいになりますね。などという応酬。
後半、互いのファンとの関係など話してて、今後の日本について、上野女史が、余り明るい展望はない、少子化が覆る兆しは全くないから。
社会もソフトランディング(軟着陸)出来ればいいけれど、そのシナリオを現場で生かすのは現場の実践家で、介護保険ができて、本当によかったと思うのは、助け合いがビジネスになったことで、
草の根の現場で色んな活動をしてる大半が女性、本当にやさしいこの人達がいるから介護保険が信じられる・・高齢化の現場にいる人達のバックグラウンドに、ユーミンの音楽がある。・・などと言うのに対して、
ユーミンが、私が、その人達がいる板の上で死ぬっていうの、どうですか(笑)、あ、いいですね(笑)。特養やデイセンターにユーミンの音楽があるというのは。きっと大人気ですよ。
などという終盤も、ちょっと現実味で、趣あったけれど、ユーミン夫妻について、直接本人にこういう風にざっくばらんに語ったのって、余り覚えなく、そういう意味でこれも面白かった回。
7/2追記:その他、色んな対談の中で、引っ掛かった所も折々。
このシリーズの初回は爆笑問題、途中でバッシングの話になって、太田は一切ネットをやってなくて、田中は一時期、そういう書き込みをすごく見て、傷ついて、悪口を書いてるのは明らかだし、そんなのは知らない方がよっぽど幸せだ、のような話。
ユーミンも、私もやらない。傷つくほうなのでね。自分のってついつい見ちゃうじゃないですか。だから・・のようなコメント。
ユーミンの公式サイトはあるし、数年前エキブロで期間限定でブログをしてた時期があったり、正隆氏はブログもツイッターなどもしてるけれど、そういえば、ユーミンは定期的ネット活動にはノータッチ。
「(みんなの)春よ、来い」チャリティは、ネットを利用したプロジェクトだったけれど、通常、特にネットで仰々しく広告しなくても、というスタンスだし、
今更ながらネットって人に、相手に面と向かって、また現実界では取れないような行為、出来ないような発言を平気でさせる麻痺感覚増長、の怖さや、思いつきの言葉を巻き散らかす無節操さ、
何だか、という鼻白み、興ざめ感、意味不明?という折もあるし、まともに感受性、誠実さがあったら出来ないだろう、見て傷つくだろう、と思うような事も公然とあるし、
私が折に正隆氏のブログやツイッターを垣間見て知る限り、ユーミンが同氏の書き込みを見て傷つく、というのはなさそうな、とは思うけれど、やはりメンタル的影響含めて、ユーミンにとってネットというツールは余りプラス価値はないんだろう、というのも納得、という感じ。
対談相手の中で、一番ユーミンに気を使ってなさそう、というか、淡々と自分の事をしゃべる、という感じだったのは千原ジュニアだけれど、その話の中で、
彼は、15才で吉本に行くまで引きこもりで、吉本の養成所で初めて自分で考えたネタをした時、それがドカーンと受けて、電気走る感じで、「うわー、何だこれ」って、なんか泣きそうになって、・・のような思い出話を聞いて、
ユーミンが、香港のライブで一生懸命覚えて広東語で冗談を言ったらかなりウケて、お笑いの人の気持が分かる、って思った、というエピソードと、そういう、人が本当に笑った時の波形のようなものを浴び続ける影響、に関連して、
中学の時、それ自体がパイプオルガンみたいな教会で「トッカータとフーガ ニ短調」を聴いて、それが建物全体に響いて体にガーッと来た時、ぶわーっと涙が出て、それから、声が、パイプオルガンみたいになっちゃったの。・・私は絶対そのせいだと思ってるんです。
声帯まで全部影響受けちゃったというか。そのくらいの衝撃で。・・のような話。それは母校立教女学院のチャペルのことかとは思うけれど、ユーミンの声が、”パイプオルガン”のような、という表現も初耳、
また、その元になったその曲名にもピンとこなかったけれど、You tubeにあったのを聞いてみたら、出だしので、ああ、これのことだったのか、という聞き馴染みインパクトメロディ。バッハの曲だったのだったけれど、今にして、これが独特のユーミン声帯?ルーツ曲、と。
あと、ユーミンが自身の方向性について話してて引っ掛かったのは、宮藤官九郎との時、ユーミンが、オーバーグラウンド(世の中に受けれられた)作品と時代との接点について何か思う事は?と聞いて、
クドカンは、王道のことをやっても、無意識にド真ん中を歩かないようにしてるのかもしれないですね。逆に(「守ってあげたい」がテーマ曲の)「少年メリケンサック」は、パンクってメジャーな音楽じゃないので、コア(マニア向け)の映画になりすぎないようにした、
のような返答で、それに対してユーミンが、それがバランス感覚なんですね、私の場合、王道が与えられたとしたら、「じゃあ、ど真ん中歩いてやろうじゃないか」っていうタイプなんですよ。・・のようなコメント。
この本のあとがきで、ユーミンは、・・私自身がここまでやってこられたのは、どこかでメジャーとカルトを両立させようとしてきたからなんですよね。
・・そういう意味でも中庸でいようと思うんですけれど、だからこそ、すごいメジャーな人と、カルトな人、両方に会ってみたかった。・・のような部分も。
(才輝礼賛 38のyumiyoriな話 / 松任谷由実(’11)<2>に続く。)
関連サイト:Amaon 「才輝礼賛/松任谷由実」
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