2012年 09月 09日
ユーミンのSUPER WOMAN 「長谷川祐子と現代美術をめぐる」<1>
巡ったのは、香川県の直島と豊島、岡山県の犬島。私は子供の頃に淡路島には行った覚えは仄かにあるけれど、瀬戸内海の島、というのは未踏。そして、こういう島々で近年、現代アートプロジェクトが進行してた、とは今回知った次第。
ユーミンは、冒頭島に向かうクルーズ船で、瀬戸内海は地中海、などと言ってたけれど、茫洋と明るい海と空のブルーの中、他の島が遠近に見えたりする景色に、「瞳を閉じて」イメージが浮かんだりも。(↓直島からの眺め:この記事中の風景写真はトリップアドバイザー提供)
今回もなかなか、明るい島々+アートな広がりの旅、ユーミン語録、長谷川女史とのコラボとか、暑気などでちぢこまり気味な心境に、風通しいいリフレッシュ感をくれた旅、という感じ。
そう大きくない島の生活と共存、また過去の建物などを生かした現代アート色々、というのも面白かったけれど、今回一番インパクトだったのは、
意外な所での私の好きな”ユーミンとモネ”、というドッキング、そしてテーマ曲「MODEL」のルーツがモネだった、ということ。
ユーミンが最初に行った直島の、「地中美術館」に、モネの睡蓮の連作や、ジヴェルニーの庭の「水の庭」「花の庭」を参考に創った、という「地中の庭」(↓)があって、
ユーミンは、以前からモネの作品に強く惹かれてた、そうで、今回、睡蓮の部屋や庭の前で、「止まっているのに動いてる」
「風が吹いている所と止まっている所が描き分けられている」「何故こんなに時間を止められたんだろう」「時間を越えて教えてほしい」などとしみじみ感動。
後で手元のモネカードの睡蓮のを見てみたら、1枚そこに展示の一つと同じ製作年度1914ー17年、録画での構図も同じようなのを発見(↑)。
これは裏面の表示だと「印象派から現代へ・美の系譜100年」という展示会で買ったようで、所蔵館名はなし。
展示のないカードだけを買ったのかも知れないけれど、その時来日して見てたのを、’04年にオープンした地中美術館が入手、という方が有り得そうで。
録画での絵は紫基調に見え、カードの方がかなり青っぽいけれど、PCで色合い調整してみたら少し似てきたかと。
そして、テーマ曲「MODEL」がバックに流れて、「SUPER WOMANとは、モネにとっての睡蓮のように、誰かの心にインスピレーションを呼び覚ますことのが出来る存在なのではないか」、という思いをこの歌にこめた、とのことで。
初回の記事でも触れてたように、この「MODEL」は、近年のユーミン曲の中でも、往年の感性の震え漂うような、今にしてのナイーブ名曲、と私は気に入っているのだけれど、
それを生んだのが、この島の美術館で、ユーミンの感性を揺らした”モネの睡蓮”、ということに、ちょっと感慨。
9/10追記:この美術館は、直島の景観に配慮して、大半が地中に造られてて、吹き抜けの空間も多く、頭上の空の見え方や、館内に入ってくるバッタやトンボとか小生物もアートの一部、のような感じで、
やはり都心に、でなく、こういうまだのどかな小島にあるからこそ、というような自然を取り入れた独特さ。
やはり吹き抜けの、白い瓦礫を敷き詰めてる「三角形にの中庭」に足を踏み入れたユーミンが、モンゴルでこういう所を歩いた!と回想。
16年前NHK番組で行った時の、アルタイ山のそばの氷河の跡がこういう感じでできてる広い谷、だそうで、理屈じゃなくそこに立つと急にフラッシュバックしてくる、というのは、
高野山で建物を見て、エジプトやギリシャみたい、オリエントな感じ、などと言ってたような、膨大な記憶の断片の中からの、瞬時の感覚の重なりなんだろう、というか。
プリミティブな風景にいると、地球は惑星の一つなんだな、そのクレーターに今立ってるんだな、と思った、などというのも、興味深いユーミン語録。
この美術館は、モネと、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3人だけの作品を展示してて、マリア、ダレルは現役のアメリカ人、どちらもインスタレーション作品が多い芸術家、らしく、
installationは「「取り付け、装置」などだけれど、現代アートでは、ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術、だと。
ユーミンは、モネを鑑賞後、ダレル作品の「オープンスカイ」という部屋?作品場?に行って、そこで長谷川祐子と合流。
「オープンスカイ」は、シンプルな白い壁の四角い部屋、壁を背もたれに座れるようになってて、天井が四角にくり抜かれてて、長谷川女史によると、ここの空は、外で見る空と違って、空の絵画、という趣向のようで。
なるほど、と思って、青い空に割と雲の変化があったりしたら趣もありそうだけれど、雨の日だと部屋が水浸しになりそうだし、ドーム式に天井を閉じるのだろうか?とか。
そして、その開けっ放しの天井からトンボが入ってきて、ユーミンは、これほどミニマルな空間だと、神様はどうしてこういうもの(トンボ)をこのデザインで造られたんだろう、というのが際立つ気がする、のようなことを言ってて、
それを受けて長谷川女史は、(この作品は)光、音と共に、そういう小生物の姿もフレームして見せてくれるので、私たちの目に強く入ってきますよね、のようなコメント。
ユーミンは前のアイルランド旅でも、自然信仰~キリスト教にまつわるアイテムだった、三つ葉のクローバーを手にとって、そのような素朴な感想を洩らしてたけれど、そういう所が少女、子供のようなままの感性の断片、という感じも。
ユーミンは長谷川女史と、'04年同女史が「金沢21世紀美術館」にいた時出会ってて、同館を案内してもらい、
彼女と再会してアートの話をしたい、と思ってたようで、私は同女史も初耳だったけれど、国内外で活動、たまたまか、前回の鶴岡真弓さんと同じく、ユーミン母校多摩美教授、の肩書きもあるようで。
瀬戸内海は'10年に犬島でアートプロジェクトのディレクションをした、という縁らしく、ユーミンが彼女に、金沢と瀬戸内海の違いは?と聞いたら、
金沢は北陸だし、天気が悪いというか、空が低い、由実さんの歌じゃないんですけれど・・。でも瀬戸内は快晴の日が多くて、空が高く感じられる、地中海のように、光の粒が大きくてキラキラしてるように感じられる、などと答えてたのだけれど、
これもたまたまか、前回の鶴岡女史も、アイルランドの街で、空が低い、ユーミンさんの歌じゃないですけれど、と、2人とも、空が低い~「ベルベット・イースター」をふとした会話の中に出してたのが、ちょっと面白いというか。
9/11追記:長谷川女史は、生年月日の情報はないけれど、大学卒業年度から逆算したら、やはり鶴岡女史と同じユーミンより2才上位、のようで、
この同世代女史達が触れる曲として、初期の程よい知名度の「ベルベット・・」は何だか妥当、というか、微笑ましいというか。
長谷川女史は、京大法学部卒業後東京芸大に、という経歴で、そこら辺ユーミンに聞かれて、小さい頃から目で見たものを覚える能力があって、音楽より美術の方に才覚が、と思ってたけれど、
美術では食べていけない、という保守的な親御さんの意向で、法学部に行って、法律も理論として面白かったけれど、やはり仕事としてするなら、美術の方が、と、自活しながら芸大に入り直した、とか淡々と語ってて、
そう詳しい話はなく、自活しながらの芸大再受験、の具体的な苦労、というのは不明だけれど、まともに考えて、なかなかなタフさだったのでは、と。
その後、2人が野外に出て、眺めてた入り江は、ユーミンが来る時にとても素敵だな、と思った、横長のパノラマが似合う、と語った風景、のどかな海に島々があって、
長谷川女史が、とても平和な風景だけれど、いかに一つ一つの島々が違う形で、違うスケールがあるか、見ていてとても面白い、と言ってて、
何だか180度(以上に)ぐるりと広がる水平線は、潮岬など思い出すけれど、+様々な島々が点在、こういう風景からも、「瞳を閉じて」的な叙情ある、新たなユーミン曲が生まれたら嬉しいのだけれど。
そして「地中の庭」を鑑賞。ユーミンが日本でこういう庭が見られるなんて、と言ってて、日本に「ジヴェルニーの庭」モデルの庭は、他にも幾つかあるようで、まあそういう日本版、でもいいから一度実際見てみたい気も。
1週目の最後、2人は直島現代アート目玉の一つ、海辺にある草間彌生作品の「南瓜」(←)を見に行って、
そこへ向かいながらユーミンが、島の要所要所にアートがあって、この島全体がアートで出来てて、時間が自在に流れる気がする、
一方向に時間が進んでなくて、うまく言えないけれど、島のロックフェスに来たような感じがする、音楽があちこちで聞こえてる、などと、この島での体験を表現。
「南瓜」を目前にして、このカボチャは、やっぱりポップですよ、やっぱりアメリカ、NYパンク、エッジーでポップで忘れられない、忘れられないんだけれど、今(を表してる?)。
モネが格闘したように、草間さんも格闘している、楽しく厳しく、それぞれのアーティストの格闘の仕方、人生が違うように、
自分の絵しか描けない、自分の作品しか創れない、という所を真摯に受け止めてて、それが伝わってきて感動する、などとコメント。
9/12追記:この島での、草間作品はもう一つ、冒頭ユーミンの船が島に近づいた時、港にある「赤かぼちゃ」(→)が見えたり。これは直径7m、らしく。
草間彌生さんは、私は名は知ってた程度、多分作品を見たことは何度かありつつ、余り意識したことはなかったけれど、今回ちょっと検索してみたら、
自分のドキュメンタリー映画以外に、村上龍作品「トパーズ」('92)に占い師役で出演してた、というのも、どんな役、風貌だったか全く思い出せないけれど、ちょっと驚き、だけれど、
今御歳83才、この二つのカボチャ作品を創ったのが'06年、77才にして、というのもさらに驚き。
正直、こういうオブジェがここに?というコンセプト、価値は私はよく判らないけれど、その年代にして、こういうものを創ってみせる、ある種の気骨、パワーというのは確か、というか。
ここで紹介したのが、ベテラン女性アーティスト作品、というのも、やはりこの番組ならではかも、という1週目締めくくりのカボチャオブジェ、でした。
<2>に続く。
関連サイト:ユーミンのSUPER WOMAN、ユーミンのSUPER WOMAN 「長谷川裕子と現代美術をめぐる」<1>・<2>、ベネッセアートサイト直島 地中美術館
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