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Something Impressive(KYOKOⅢ)

インポッシブル(’12)

30日(火)、虎の門のニッショーホールで「インポッシブル」試写会、招待メールが来ていて、都合も合ったので、「いい加減な・・・」ブログのいい加減人(Yamato)さんとご一緒して見てきました。


'04年のスマトラ島沖地震題材の、実話ベースのスペイン・アメリカ合作作品、手掛けたのはスペインのJ・A・バヨナ監督、主演は一家の母マリア役ナオミ・ワッツ、父ヘンリー役ユアン・マクレガー、

ユアン・マクレガーは、私は3月の試写会での「ジャックと天空の巨人」に続いて、で、その時は姫とジャックをサポートするジェントルな兵士役、だったけれど、

今回も、突然の惨事に混乱、動揺しつつも、幼い次男トマス(サミュエル・ジョスリン)、三男サイモン(オークリー・ヘンダーガスト)の父として、彼らを励まし、諦めず必死に妻と長男ルーカス(トム・ホランド)を探す、誠実な一家の父、という役。

        

この作品は、モデルになった実際の一家の母の話が原案、やはり劇中も母役ナオミ・ワッツがメイン、まさに身体を張った熱演、

この演技で、今年度アカデミー、ゴールデングローブ賞の主演女優賞ノミネート、だったらしいけれど、マクレガーも、なかなかの人間味、男気の父親ぶり。



インポッシブル(’12)_a0116217_21354930.jpg序盤、タイのリゾートの優雅なプール付きホテルでくつろぐ一家。(→チラシ)

どうもヘンリーにはちょっとした仕事上の心配事があるようだけれど、男3人兄弟の、まあ賑やかで平穏そうな普通の一家。

特に前半、かなりリアルな津波の災害シーン、というのは判ってて、一応心の準備的には、やはりこれまで見た中で最も衝撃的な津波映像、TVで何度か見た3.11の東北での津波イメージ、があったのだけれど、

その時の、大きな揺れがあって、一呼吸して襲ってくる巨大な波、というより、実際劇中では、そこそこの揺れの後、結構間髪なく、直接波が襲来。

その高さは思ってたより低かったけれど、土色の、水、というより海自体がドーッと押し寄せ色んな物を破壊していく凄まじい勢い、というのは想像以上、

まさに海岸沿いにいる人々、建物、樹木などにとっては、全くなすすべなし、マリア目線で、が多かった気がするけれど、濁った水に視界もなく飲込まれて、様々な漂流物に身体を打たれながら、翻弄されるしかない、というリアルな臨場感。



その大混乱の中、マリアが、濁流中長男ルーカスと付かず離れず声が届く距離にいて、というのも、かなり奇遇、励まし支え合えて、というのも結果的にラッキー、

その後の展開も、言ってみれば、多くの犠牲者が出た大災害の中、を思えば、結構幸運だったある一家の物語、なのだけれど。



5/4追記:印象的だったのは、マリア自身医者だった、という背景もあるかもしれないけれど、ようやく何とか陸地を歩く状態になって、自身足に大怪我を負いつつ、幼い子の泣き声に、人助けしてる場合じゃない、と言い張るルーカスに、「でも、助けなきゃ」と諭したり、

病院で、重症の自分の傍らにいる彼に、「皆が大変、人に役立つ事をしなさい」と告げて、ルーカスが、周りの人々の家族探しをしたり、のようなシーン。

色んな意味で余裕がある時ならまだしも、なかなか究極の時、言えることじゃない、という、濁流の中必死に息子を案じる母としての思い、とはまた違う次元で、理屈抜きのヒューマニズム溢れる姿勢。

その非常事態での母の言葉の思い出が、ルーカス少年の中で、どういう風に受け止められて、記憶に残っていくのかは?だけれど、

結果的に、日常生活の中で、これ以上の、親が一個人として身をもって出来る教え、というのがそうあるだろうか、という感じも。



また、ヘンリーが、はぐれたマリアとルーカスを見つけられず、絶望感に襲われている時、傍らにいた同様の観光客らしい被害者の男性が、携帯を貸してくれて、自宅に連絡が取れ、

他の人も皆電話が必要、という状況の中、動揺が酷く嗚咽しながら電話を切って返した彼に、その持ち主や周りの人々が、それじゃいけない、と、再度携帯を使うように差し出し促して、

再度かけて、自身を奮い立たせるように、きっと2人を見つける、という前向きな言葉を口に出来た、という辺り。

それより前、ヘンリーが携帯を貸してくれるよう頼んだ人に断られたように、誰もが自分の事で目一杯、という非常時の中、彼の極度の動揺を察しての人情味、ここら辺、どこまで細部忠実なのか?だけれど、大災害の片隅の実話、としてもいい話、と。



それと、事前に見ていた出演者の中に、ジェラルディン・チャップリン、の名、初耳だったけれど、この人はチャップリンの実の娘、女優をしてたのだった、とその時初めて意識、でも後で、一体何処に出てたのか?にわかには思い当たらず。

病院でマリアの隣のベッドにいた女性?とも思ったけれど、それなりに年配、にしてはその女性は中年位そうだったし、などと思ってる内に、

今日になって、見かけた某記事で、避難地で夜、トマスに話しかけ、星の話をしてた老婦人だった、と。

何気ないシーン、ではあったけれど、劇中、思えば、登場人物の口からタイトルの「インポッシブル」という言葉が出たのは、

この人が話の中で、見える星が、今も実際あるのか、光が届いてるだけか、知るのは「インポッシブル」と言ってた以外、どうも覚えなく。

その時や見た直後はそう引っ掛かった訳ではなかったけれど、ストーリーの、大災害で離れ離れに引き裂かれた家族、その生死も判らない苦境、

でも相手を思う、希望を持って探し続けることは止められない、というコアに触れるような、意外とさり気なく大事、というか深味あるシーンだったかも、と今にして。

このジェラルヂィン・チャップリンは、見てた中では「ハイジ」で、唯一ハイジと敵対する女性役だったのだった、と。



あと、災害前のまだ平穏だった序盤、映像的に印象的だったのは、ポスターやチラシにも使われてる、夜、人々が白い円筒形の筒状のものを、中に灯を点して、上空に飛ばしてた、ちょっと幻想的なシーン。

これは、後で「コムローイ祭り」というタイのチェンマイという所の伝統行事で、「コムローイ」は「灯篭」の意味で、鐘楼流し、のようなイベントのようで、幾つもの灯りがふわりと夜空に昇っていく様子は、何ともファンタジック。



そしてその後、やはり改めて、映像として見せつけられた自然の猛威、恐ろしさ。そういう時の人間のなすすべない非力、小ささ、儚さ。

終わった後、Yamatoさんと、3.11の時はまだ寒かったけれど、リゾートで軽装だから余計傷も負いやすい、のようなお話も出たけれど、

劇中具体的には、マリアが濁流の中で受けてた、様々な漂流物からの無数にも思えた打撃、その結果の、命にも関わりそうだった、重症の胸や足の傷。

ただ流され、溺れる危機だけでなく、津波に襲われる、というのは、まるで棒切れのように、そういう危機にも否応なく晒される、という実態。



このJ・A・バヨナ監督、という名は私は初耳、「コムローイ祭り」の辺りでは、一瞬もしかして女性監督?とも頭を過ぎったりもしたのだけれど、男性監督、と判って、これが長編2本目の人、だと。

チラシの裏には、同監督は”スピルバーグとイーストウッドの領域に到達した”などいう賞賛のコメントもあるけれど、まあ確かに、津波の脅威リアル再現の骨太映像+家族愛、ヒューマニズムをブレンド、

115分、長い、とも思えず、結末は何となく見えてはいたけれど、前半のパニック~後半の人間ドラマに引き入れられる技量あった作品、という感じ。



昨年すでに、日本では東京国際映画祭で上映されてた、そうで、3.11から2年目の時期、見続けるに忍ばず席を立つ人もいた一方、感動を呼んで好意で迎えられた、とも聞くけれど、

やはり、直接津波災害に遭われた方々にとっては、そうでない地域の観客よりも、映像的には結構シビア、体感的に、理屈抜きに見るには辛そうな、とも思えるし、

ヒューマンドラマ、としては、実話に基付いて、余り余分な要素を入れず、非常時の一家族の絆の心情を追った、こういうストレートな内容のものが、何か心に染み入って、何らかのプラスになるならそれはいいこと、とも。

東北地方でも、7月に公開予定、らしく、3.11の記憶の感覚は、個人差もあるだろうし、気の進まない映画を、わざわざ料金を払って見に行く必要はないけれど、果たして反響はどうなんだろう?と。



私個人としては、3.11では、ここ東京で人生最大の地震体験、それを機に、色んな意味で多かれ少なかれ生活観も変わった、という部分はあったのだけれど、今回この作品を見て、想像以上にリアルな災害の脅威、

やはり、平穏、平凡に思える日常生活の中でも、いつ何が起こるか判らないし、備え様のないようなこともあるけれど、言葉にしたらありきたりではあるけれど、日々大事に過ごさなければ、ということ、

そして、普段いるのが当り前、と思ってる家族、というものとの繋がりを、悔いのないよう、出来る範囲で大事にしなければ、と改めて意識、という1本でした。

関連サイト:「インポッシブル」 公式サイト象のロケット 「インポッシブル」
関連記事:マルホランドドライブ(’01)21グラム(’03)キングコング(’05)ミス・ポター(’06)ジャックと天空の巨人(’13)ハイジ(’05)「インポッシブル」マリア・ベロン来日 「心の復興を考える」トークイベント
<スレッドファイルリンク(ここでは「キングコング」)は開かない場合あるようです。>



Tracked from とりあえず、コメントです at 2013-05-04 13:21
タイトル : インポッシブル ~東京国際映画祭より~
2004年の年末に発生したスマトラ沖地震の津波に巻き込まれた家族の物語です。 もの凄く怖そうですけど実話を基にしていて、主演がナオミ・ワッツ&ユアン・マクレガーなので やっぱり観てみたい!とチャレンジしてみました。 黒いスクリーンに“Based on a true story”という文字が浮かび上がる出だしから聞こえ始めた、 遠くから地響きが鳴るような恐ろしい音に、すぐに逃げ出したくなるような気持ちにさせられる作品でした。 ... more
Tracked from 象のロケット at 2013-05-04 23:21
タイトル : インポッシブル
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Tracked from 風に吹かれて at 2013-06-11 16:07
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Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2013-07-12 22:11
タイトル : インポッシブル
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Tracked from ここなつ映画レビュー at 2013-10-11 13:36
タイトル : 「インポッシブル」
泣く、と判っていたけれど、本当に泣けました。津波の恐怖や、災害時に家族の消息がわからない不安感、それにももちろん同化して胸が苦しくなったけれど、最も泣けたのは、家族の中の長男が、精神的に少年から青年に成長して行く姿。 2004年、スマトラ沖で発生した、地震による津波の惨事に遭遇した、あるアメリカ人家族の物語。 クリスマス休暇でタイのリゾートへ幼子を含む家族5人で来ていたヘンリー(ユアン・マクレガー)とマリア(ナオミ・ワッツ)夫妻だったが、12月26日、スマトラ沖地震が現地を襲い、家族はバラ...... more
Tracked from kintyre&#039.. at 2013-12-25 21:31
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Commented by いい加減人(Yamato) at 2013-05-02 22:00 x
こんにちは。
先日はありがとうございました。
この時期にこの映画を公開する配給会社はずいぶん勇気が有っただろうなぁ〜と思いました。
Commented by MIEKOMISSLIM at 2013-05-03 20:18
いい加減人(Yamato)さん、改めて、先日はまた楽しかったです。記事にも書いたのですけど、東北でも7月に公開予定だそうで、やっぱり3.11直接被災の方々には、映像的には結構辛そうですけれど、非常時の人間ドラマ、としては、余り余分な所もなくストレートで、プラスに受け入れられる部分もありそうな、という感じでしょうか。
by MIEKOMISSLIM | 2013-05-02 10:38 | 洋画 | Trackback(7) | Comments(2)