2013年 11月 09日
SONGS 今井美樹
昨年夏から夫、娘と住んでいるロンドンで、街の店や公園を巡って現地での生活ぶりも垣間見せつつ、MV制作の様子や、このアルバム、その制作過程、思春期から今に至るユーミン曲への思いを語りつつ。
この番組前にCDを一通り聞いていて、正直、今回歌った3曲はそう引っ掛かる、という訳ではなかったのだけれど、
やはり本人の「中央フリーウェイ」「青春のリグレット」への当時の、また現在の思いを聞いてから、改めてライブで聞くと、CDの時とはやや違った感触。
最初の「中央フリーウェイ」は、この曲アレンジ担当のブルーイが率いるイギリスのアシッド・ジャズのグループ、インコグニートとセッション、この曲と「ようこそ輝く時間へ」がブルーイ担当、
アルバムでもこの2曲は同様のセッションだったのだろうけれど、CDの中でアレンジが印象的、というかちょっと面白いと思ったのはこの2曲だったし、改めて、なかなか今井ボイス+グルーブ感のノリで、好感。
今井美樹自身、初めて中央高速に乗った頃、オープンカーに乗ったつもりで、右に見える競馬場、左はビール工場、と毎回言ってた、
故郷を離れ上京した頃、何もなかったけれど、この先には未来があって、人生がキラキラ輝いて見えた、などと思い出を語り、
アレンジをしたブルーイが、この曲はただの道の曲ではなくある人の”心の旅”を描いた歌なんだ、それが判ってアレンジの方向性が見えてきた、旅する感覚が大事なんだ、などとコメント。
先日「Dialogue」記事で挙げた、今井ユーミン曲私的理想のミディアム~アップテンポ選曲アルバム、まあ実現は無理だろうけれど、全曲この人のアレンジとこのバンドとのセッション、というのも、真骨頂、と思ったリリカル路線とは別の趣ありそうで、聞いてみたい気が。
11/12追記:次の「青春のリグレット」については、どうしても歌いたかった曲だったそうで、
>この曲を聞いたバブル期当時は、きっと歌詞の表面の所しか受け取ってなかった、この女の人ずるい、のような所があるじゃないですか、
今回、「私を許さないで 憎んでも覚えてて」というのが、本当にそれほど”あなた”のことが好きだった、というものすごく深い思い、死ぬまで誰にもこの扉は開け放たないけれど、
自分の中では絶対忘れられない大切な、扉の奥にしまったものとして、その人のことを思っている歌なんだな、歌なんじゃないかって思えたんですよ。< のようなコメント。
この歌詞を改めて思い返すと、それ程相手が好きだったのなら、何故それを「胸に秘めて」別の相手と「普通に結婚」していかなければならないのか?、やはり女性側の気まぐれ、のような印象はぬぐえず、だけれど、
仲睦まじかった3か月前から、別れるまでに、一体何が起こったのか? もしかしたらそこには、本人には如何ともしがたい双方の家庭、周囲の事情とか、があって、そこをあえて伏せたこういう別れの歌、という可能性もあるのかも?とか、
それにしては、「笑って話せるね そのうちにって握手した」というのも軽い、けれど、精いっぱいの強がなのかも?とか、今にして。
そして、ユーミンの歌をカバーする、その時今井美樹さん自身の人生経験が問われた、大人の女性として今、ようやく向き合える深い愛の歌です、のようなナレーションに続いて、この曲ライブ。
この曲は、麗美バージョン、そしてユーミンセルフカバー、やはり麗美ボイスでの切ない感触があって、今回CDを聞いた時には、やはり「霧雨で見えない」同様、麗美版の印象色濃く、余り引っ掛からなかった今井版、だけれど、
こうして、この人自身の、深い女心、的な解釈を聞いてからライブを聞くと、若干19才で、やはりそこまで奥深い感慨なく歌ってたのであろう麗美、それでも少女心の硬質な切なさ漂ってた、やはり”麗美曲”とは思ってたけれど、
「霧雨で・・」よりは、この今井版も、もう少し切実な女心版、としてしっとり深み味、これはこれで”有り”かも、と感触の変化。
まあ今井美樹自身の人生経験、ということでふと頭をよぎったのは、今回の選曲の中には、過去の自分の”略奪愛”とも言われた布袋寅泰との経緯がダブる曲は意識的にか無意識にか避けたのか?
不倫愛や、相手には恋人がいるのに追いすがる、とか忘れられない、諦め(きれ)ず粘る、攻撃的に愛を”勝ち取る”、的なものはさすがになく、ユーミン曲の中にそういう類の曲自体多くある訳でもないし、
本人の意識にも自身の過去についてそういう略奪愛的感覚自体なく、今回単にたまたま選曲中になかっただけかもしれないけれど、
さすがに「忘れないでね」「まちぶせ」「DANG DANG」「LOVE WARS」などあって切々、堂々と歌われたら、多分私は反射的に鼻白み、微妙な感じだっただろうと。
そしてノッティング・ヒルの街で、50代になっての抱負、ユーミンの音楽が存在することで、私の青春の全てでもあったし、ユーミンのから全てのことを感じたといっても過言ではないし、
直接お会いしたら、思いが募りすぎてうまく伝えられないかもしれないくらいに、「ありがとうございます」、って言いたいです、のようなコメント。
以前「ミュージックポートレート」でも語ってたように思春期からのユーミン曲への傾倒ぶり、「あの日にかえりたい」が出会いで、初めて買ったアルバムが「14番目の月」、その後小遣いを貯めてはユーミンアルバムを買って、心酔、
そしてユーミン曲に導かれるように上京、のような経過が垣間見られ、私自身とも重なるようで、まあ一体どれくらいの数の、こういうパターンの女性がいるんだろう、とも改めて。
そういう、ユーミン傾倒で上京した田舎娘群、の中で、こうしてエンタメ界でそこそこに根を張り、50才にしてだけれど、ユーミンカバーアルバムを出したこの人は、やはりユーミンに最も近付いた成功者の一人、なのだろうけれど、
「中央フリーウェイ」「ようこそ輝く時間へ」以外の10曲を編曲したサイモン・ヘイルに、ムードとか、体温とか、風の寒さとか、空気の凍る感じとか、そういうニュアンスが、ユーミンの世界観で凄く大事だと思ってるから、一生懸命そこを説明した、のような話、
そういう、日本の四季、日常の中からユーミンがすくって曲に降り入れてる空気感、体感、というのはやはりファンの琴線に触れる、スタンダードなのだろうと。
サイモン・ヘイルは、美樹さんがユーミンと共に子供時代を過ごし、大人になって、アルバム一枚まるごとユーミンの曲を歌う気持ちを想像したとき、ぼくはその責任の重さを実感したよ、のようなコメント。
まあそういう風に、本人から長年のユーミン曲への思い、本人が感じる曲のニュアンスを詳しく聞いていたからこそ、そう原曲からは飛躍のない、よく言えば割と原曲に忠実で、本人も感情移入し易く歌い易いアレンジになったのかも、と。
そういう様々な経過を聞いてからの、最後の「卒業写真」ライブも、特に本人からこの曲についてのコメントはなかったけれど、
まあこのスタンダード曲を歌うことでのユーミン(曲)への敬意の表現、のような気もして、CDの冒頭にあったのを聞いた時よりは、ちょっと感慨。
You tubeにハイファイセットとユーミンコラボでのこの曲ライブ、があったのだけれど、こうして同じステージでの2人のバージョンを聞き比べて、今改めて思うのは、
やはり歌唱力、という点では、山本潤子や今の今井美樹の方が、美しい声での安定した歌いっぷり、なのだけれど、当時のユーミンの、ノンビブラートではあるけれど、微妙なボーカルの震え自体が、思春期の感性の震え、を表すのに絶妙マッチ、
何だかメジャーになりすぎて、そう顧みることも少ない曲だったけれど、やはりこれは”あの頃の”ユーミン曲、と改めて。
そういう所で、本人談でのこのアルバムへの思い、同世代女性として思春期からのユーミン曲傾倒の話も感覚的にダブる部分があったり、
CDだけでは特に引っ掛からなかった今回歌った3曲も、そういうエピソード+ライブで感触が変わったり、CDにプラスアルファで、なかなかの濃さ、の今回でした。
関連サイト:SONGS 今井美樹、「Dialogue / 今井美樹」サイト
関連記事:アメリカの旅<7>、A Long Vacation From Ladies(’09)、手のひらの東京タワー/松任谷由実(’81)、麗美ファーストフライト(’85)、SONGS 山本潤子、Dialogue / 今井美樹(’13)
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<「Dialogue」ジャケット (C)EMI Records Japan>