2014年 07月 15日
思い出のマーニー(’14)
観客層は、女の子を連れた母子の親子連れや若~中年層などの、女性が割と多かった印象。(→チラシ表)
ジブリ新作、「借りぐらしのアリエッティ」の米林監督の2作目、とのことで気にはなってて、お話的には、そもそも住む世界が違う2人の少女同士の一時の友情物語のような、と思って見てみたら、
確かにそういう流れではあったけれど、終盤、杏奈(声:高月彩良)とマーニー(有村架純)のやや意外な関係が明るみになって、単なる友情ものではない、運命の絡みもあって、時空を超えた絆、という物語だった、と。
後で思えば、ちょっと一時代前のドラマティック少女漫画風な趣もあって、+ポイントの舞台の北海道の、水際に佇む時空を超えて2人を引き合わした”湿っ地屋敷”、
そこへボートで行くまでの入江の風景、月夜の水面など瑞々しい丁寧な描写、+バックの清涼感あるプリシラ・アーンの歌声などミックスで、
やはり「借りぐらし・・」同様、そう大作感、という訳ではないけれど、優しい温みの珠玉作で、なかなか好感持てた、という後味。
7/15追記:前半、喘息の持病もちで、周囲にそっけない対応の女子中学生杏奈。義母の頼子(松嶋菜々子)にも、北海道で知り合って世話を焼こうとする同年代の女子にも、つい侮蔑的な言葉を吐いて、壁をつくる、
絵を描くのは好きで得意そうだけれど、ジブリヒロインにしては、どうもややスケールの小さいひねくれキャラクター。唯一、滞在先のサバサバした夫婦(寺島進、根岸季衣)は余り気に留めず、大らか、大ざっぱに接するスタンスだったけれど。
で、入江の向こうの屋敷で出会った不思議少女マニーには、何故か素直に接して、心を開いていく過程で、マニーへの告白で、杏奈のひねくれキャラの原因が判明。
ある時偶然、頼子が自分を育ててる背景で、何らかの機関からその援助金を受け取ってた、と知ったことがきっかけで心を閉ざしていった、らしいけれど、
やや記憶曖昧だけれど、頼子の夫、というのはどうも明確に覚えなく、どういう仕組みでの援助金なのかも?だけれど、女手一つで、ならなおさら、夫婦であっても、
身よりもなく、施設暮らしでも仕方なかったのに、自分を引き取り愛情をもって育ててくれてる相手が、その代償的にたとえお幾らかの金をもらってたとしても、子供心にでも、それならそれで自分のかけた負担が少なくて、良かった、という発想はないのか?と。
まあ子供&少女時の潔癖さ、というか、純粋に自分が好きで育ててくれた訳じゃなく、背後にお金の流れがあった、ということで、大人に不信感を抱いてしまった、という多感さ、かもしれないけれど、何だかどうも我儘、ある意味純粋、潔癖すぎ?という印象。
7/16追記;そういう杏奈をほんわり包み込むようなマーニーも、大きなパーティーを屋敷で開いたり華やかな両親、でも多忙で留守がちで、世話係のばあや(吉行和子)や女中達から冷遇され、経済的には恵まれてても孤独な境遇。
この2人が自然と心を通わしていくプロセスはほのぼの。マーニーは、その立ち居振る舞い、やや謎っぽい存在自体、境遇、長い豊かな髪、ドレッシーな装いなど、何だか昔読んだ少女漫画ヒロインのような、で、
この作品の映像、作画は、風景もいつもながら手作り風の丁寧さ、美しさ、人物もそれぞれ馴染みのジブリ風タッチで、良かったとは思うのだけれど、唯一ちょっと引っ掛かったのが、このマーニーの髪の描き方。
これまでのジブリヒロインでは思い当たらない、金髪のふさふさした長い髪、それが、余り細かい動きはなく、ほぼベタに描かれてたのが、少し残念。
まあこれが従来のジブリヒロインの髪タッチだし、場面ごとの細かく変化する長い髪の描写も大変そうだし、ショートカットで茶の少し入った黒髪の杏奈の描写とのバランスもあるのかもしれないけれど、
せっかく珍しくエレガントな髪型少女だし、会場にあった「思い出のマーニー×種田陽平展」チラシ(↑)の原画の一種らしいマーニーのようなタッチのを見てみたかった気も。
7/18追記:そういうマーニーから、ばあやや女中の日常の仕打ちを聞いた杏奈が、声を荒げて「そんな話は聞いたことがないわ!」と憤った時、初めて一瞬、ジブリヒロインらしい力強さ、正義感のほとばしりを見せたのも印象的。
荒天の日の丘の上の塔のシーンで、マーニーの辛かった思い出が明るみに出て、2人の世界の隔たりが露呈され、その時登場のおさなじみがマーニーを救った男性、
そう表立ったわけではないけれど、そういうロマンスも組み入れつつ、終始杏奈とマーニーの関係への焦点がぶれなかったのも、好感だったけれど、
終盤、明らかになっていく、マーニーのその後のなかなか苦難の人生、
そして、ああそうだったのか、と、ファンタジーながら、ジグゾーパズルの最後のピースがぴたっとはまるような、明らかになった2人の真実。(→チラシ裏)
劇中、ちょっとだけ触れられてた杏奈の目の色、それぞれの境遇エピソードなどから、そう言われれば、という所だったけれど、これは見ている間には私は想像つかず。
これはやはり、マーニーが時空を超え同じく寂しさを抱えていた少女だった姿で、杏奈に会いに、というか救いに来ていたのだった、と瞬時に頭を巡ると共に、じんわりくるものが。
ひと夏の間に、伸びやかな自然をバックに、一時の友情とうだけではなかった、大らかな愛情、絆を体験した杏奈が、頼子にも心を開き、元来そうだったのであろうくったくない少女らしさ、人を信じる気持ちを取り戻し、
ファンタジーながら、ほのぼの心洗われる、そうメジャーでもなさそうなさりげないイギリス生まれの児童文学に目を付けて、子供(~大人)向けの温みあるものに作り上げてくる、さすがジブリだな、という感じ。
母は、映画は一緒に行った「あなたへ。」以来、どうも歳のせいか、パッパと話が呑み込めなくて、とぼやいてたし、私は今回も本当に顛末が判ったのか?だったけれど、大体は判ってた、そうで、景色が綺麗だったし、最後にちゃんと繋がるように上手く作ってる、とのことで、
「借りぐらしのアリエッティ」公開の時も一緒に見たのだったけれど、どちらが良かった?と聞いたら、今回の方が良かった、そうで、終わった後も、映画も久し振りだけどいいものを見た、と漠然とかもしれないけれど、満足そう。
そういう所で、そこそこの期待だったこの作品だけれど、見る前にまあ女の子の友情もの、と思っていたよりは、意外な広がりあって、後味的にも大らかなハートウォーミング感、
2人が一緒に過ごす時間に、何だか姉妹、従妹、家族、友人達などと過ごしてたかもしれない、ずっと続くようなくったくのない夏休み感覚、というのが仄かに蘇るようなノスタルジー感もあったジブリ新作でした。
関連サイト:思い出のマーニー 公式サイト、象のロケット 「思い出のマーニー」
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