Something Impressive(KYOKOⅢ)


名盤ドキュメント はっぴいえんど「風街ろまん」('71)~“日本語ロックの金字塔”はどう生まれたのか?~

年末30日(火)NHKBSで放送の「風街ろまん」特集、先日録画で見まて、これも記憶に新しいうちに優先で記しておきたいと思います。


「名盤ドキュメント」シリーズの3弾目、とのことで、当時のメンバーがスタジオに集まって、音源を聞きながら回顧、のスタイルは、てっきり一昨年の「「ひこうき雲」の秘密を探る」もこのシリーズだったのか、と思ったら、

1回目は陽水「氷の世界」、2回目佐野元春「VISITORS」だったそうで、どちらも気付かなかったけれど、陽水を中心に作成当時の様子や心境が語られたであろう「氷の世界」は特に、是非見てみたかった、と残念。


「風街ろまん」は、リアルタイム時ではなく、多分ユーミン~細野・鈴木ライン辺りからはっぴいえんどを知って、だったと思うけれど、後年LPを買って、今は手元に録音テープのみだけれど、

番組で紹介あった、ジャケット内側の路面電車の絵も薄っすら覚え、DNA的ノスタルジーな1枚。

今回、大瀧詠一の命日に合わせての放映のようだけれど、細野晴臣、松本隆、鈴木茂の当人達+当時はっぴいえんどに熱中した佐野史郎、高田渡の息子高田漣、星野源、野上眞宏らのトーク交えて。

  


当時20代前半~最年少の鈴木茂が19才だったメンバーの無名時代の、革新的な”ロックに日本語をのせる研究”をしつつの、レコーディングの逸話などでも、割とラフな、行き当たりばったり的な節も漂う若者グループ、

それでいて後世、金字塔、と言われる名盤を生んでいたのは、やはりそれぞれの後のキャリアからしても並外れた才能集団だった、ということにつきるのだろうけれど。

a0116217_237554.jpgその一環はやはり、はっぴいえんど曲の作詞担当だった松本隆の、以前の著作でも触れられてた「町」ではない「街」感覚、<(C)(株)新潮社>

今回本人も語ってたけれど、東京五輪を機に消えつつあった東京の、少年時代を過ごした路地や広場、路面電車などへの郷愁。そこから、記憶の中の架空の「風街」の(心象)風景が生まれていった、ということが改めて。

まあロックに日本語をのせるということについて、当時内田裕也が論争を吹っかけて、ということもあったそうだけれど、

いまだ素朴に思うのは、日本国内では、ロックに限らず、洋楽好きという日本人の、ミュージシャンや音楽評論家なども含めて、一体何%位の人が、英語の歌詞の意味も判った上で曲を聞いてるのか?ということ。


今回特に注目だったのは、やはり「朝」と共にほぼ横一線マイベストはっぴいえんど曲「風をあつめて」と「夏なんです」。

サウンド的には、作曲者が自分で歌う、という原則、それは細野晴臣が好きだった「バッファロー・スプリングフィールド」も全員作って、歌って、という流れもあって、のようだけれど、

2曲とも細野曲、本人は人生がベースになってしまう、低域で生きてる、などとも言ってたけれど、実は高い声が出なくて、というのがミソだった、という意外な話。

高い音の曲は歌いにくいけれど、自分の声に合わせるといい曲にならない、というジレンマで、録音までしてもボツにした曲もあったそうで、

1枚目の「ゆでめん」アルバムでボツにした「手紙」もその一つ、サビが「風を集めて おふくろの手紙読む」なんて歌詞で、細野氏はこの曲を、何もかも嫌い、これ、と苦笑。


松本隆は「風をあつめて」だけ生かして、全く別の詞にして、生まれたのが「風をあつめて」だった、ということで、

”風に吹かれて”って受け身になるけれど、集めるというのはものすごい能動的なことで、もうこのまま空中飛べるんじゃないか、みたいな瞬間がふっと来る、そこをみんなが憧れていることなんじゃないか、とか、

実際の生活とか人生とか、どろどろの中でみんな生きてる、もっとさっぱりした所に行きたい、風っていうのはそこに運んでくれる、それを歌にしてあげたい、などと、映像で本人の口から初めて聞く、まさに”風街詩人”たる言葉。

     


この新歌詞に曲が付けるのが難しく、細野晴臣はレコーディング当日朝まだ出来ておらず、松本隆だけを呼び出して、

壁にもたれてギターをかかえた細野晴臣が「ちょっと聞いてくれ、曲が付いたから」と、これから録音なのに、悠長な話だ、と思いつつ聞いてみたらめちゃくちゃいい曲で、アコギとドラムスで録音、

鈴木茂と大瀧詠一を呼ばなかったのは、まだ曲も出来てないし、余裕がなかった、ドラムは入れないと、と思ってたのでドラムスの松本隆だけを呼んだのだった、とか、

練習なしのぶっつけ本番の録音、曲が直前に出来てすぐ歌う、というレコーディングはこの曲しかしたことがない、細切れにとって(録音して)いった、だから今でもこの曲は歌えない、緊張するというか、と苦笑、2人も笑い。

       
松本隆が、まぐれで出来た世紀の名曲、と笑いながら言ってたけれど、詞については、原曲のボツ曲から「風をあつめて」、というフレーズがボツにされず生き延びて、

メロディも、切羽詰った段階で細野氏の脳裏に降りてきたものを、その場で歌って録音、という綱渡り的状況で出来ていた、という意外な事実。


最後の方で、「Lost in Translation」にこの曲が使われたことも紹介されて、公開当時これを見に行って、実際曲が流れた時の感慨も思い出して、

        

ビル・マーレ―とスカーレット・ヨハンソン演じるアメリカ人が異国都市TOKYOで、束の間同じ時を過ごして別れていく、淡いラブストーリー、だったのだけれど、

今思えば、こってり濃密、ではなく、あの淡さが曲の架空の「風街」感ノスタルジーにフィットしていた、いう感じ。


また、この作品で使われてから、日本語のままこの曲を歌う外人が続々と増えている、また、細野晴臣も、LAやNYで若いアメリカ人が、この曲を僕の前で日本語で歌ってくれる、という話で、

松本隆が、まあ英語で作ってたら、こんなグレードの高いものは出来なかった、日本語でやるかって細野さんと論争してる時に、

「日本語の歌詞で全世界に通用すると思うか?」「ある確率もある、これは否定できない、どんな小さな確率でも追究しとくと、あとで夢がかなう」のようなやり取りがあったようで、

実際、この曲が出来て30数年後に、ソフィア・コッポラというメジャー映画監督が劇中に採用、ということが起こった訳で、

世界進出をもくろんで英語盤を創る、のような企画とはそもそも方向性も違うけれど、ある意味肝が据わってた、という感じで、そういう所も、日本語ロック金字塔、と呼ばれる所以?とも。

      

「夏なんです」も、詞は同じで別メロディでの、3か月前のリハーサルテイクがあって、これを本人は余り覚えないようだけれど、

ナレーションで、サビの声域が完成版より高くて、細野晴臣が低い声で歌えるように作曲し直した、ということだ、と。

      

このきっかけを与えたのは、ジェイムス・テイラー、「ひこうき雲」番組でも、ユーミンが細野晴臣に「あの頃ジェイムス・テイラーにはまってなかった?」と名前が挙がってたけれど、

その音域が僕にぴったりだった、そうで、松本隆も細野晴臣に呼び出されて、初めてジェイムス・テイラーを聞かされて、こういう感じでやりたいんだ、これだったら僕の声にも合う、ということで、作曲術に開眼、という背景があったのだった、と。

ジェイムス・テイラーといえば、私はユーミン曲も使われてた中山美穂&織田裕二の映画「波の数だけ抱きしめて」を見た後、そのサウンドトラック盤を聞いて、

その中の「Her Town Too」という曲が、テンポといいメロディ展開といい、好きなタイプだった、という思い出。

      

それを機に、何かアルバムは聞いたかもしれないけれど、特に他の曲は浮かばないけれど、ジェイムス・テイラー~細野晴臣、はっぴいえんど、「夏なんです」繋がり、というのは今にして。

      


1/10追記:またこのメロディについて、星野源や高田蓮が、すごく変な音だなあと思う、でもそのコード進行の雑味が、日本の夏の雑味とちゃんとしてる感じ、とか、

そんなに色んなコードは使わないんけれど、うっすら転調を織り交ぜて風景がぼやける、夏ーって感じる曲、とか、

夏を感じさせる独特の空気感について、イントロの、DM7~CM7とメジャーセブンスが続く独特のフワーっとしたコードの、帰結感がないまま進んでいく感じ、着地してない、宙に浮いている感じ、などと言ってて、

この曲から漠然と漂ってくる、ザラッとした夏の感触、というのを、初めて他人が少し噛み砕いて具体的に話してる、と思ったり。


そのイントロルーツについて、高田蓮や佐野史郎、細野晴臣本人も挙げてたのが、モギー・グレープというグループの「He」、そして、本人が加えてバッファロー・スプリングフィールドの曲。

それと、細野晴臣、鈴木茂がギターを、ピックじゃなくてフィンガーピッキング、指で弾弾いてたり、松本隆のドラムスも、細野晴臣の要求で、単純にタン、じゃなくタタッという、

付点四分音符のリズム、シンコペーションを、足つりながらやってたよね、隠し味だね、などと、伴奏のミソ、のような内幕も。


その他、「風街」で遊ぶ子供達の歌「花いちもんめ」は、鈴木茂初作曲+ボーカル曲だったのだったけれど、後年の「砂の女」「ソバカスのある少女」とか洗練された曲のルーツはこれ、と思えば、

大瀧詠一を辿ったら、ルーツ曲の一つ「朝」のような、やや意外な、まだ無名時代のザラっとした原石感、が漂ったり。


このアルバムの都電の絵にこだわったのは松本隆らしく、やはり東京出身の細野晴臣も、よく彼と路面電車に乗った思い出があって、それがなくなったのは、やはり東京オリンピック。

道路拡張のため、松本隆の生家もほとんど強制立ち退きで青山キラー通りになってしまい、奪われたって感じがすごい強かった、そうで、

細野晴臣も、その当時の東京が好きで、春になれば春の匂いがする風が来たり、秋、冬も風がはこんでくるんでわかる、今はもうわからない、と。

来たる2020年の東京オリンピックについて、松本隆は、前のオリンピックのようなああいう良さもないだろうね、日本中が高揚する、あの時日本が下を向く、なんて想像もつかなかった、

細野晴臣も、いいこともあったんだろうけど、弊害もある、20年に、反省なしでやっていいのか?ということですね。だから今こそその歌詞が響いてくる、のような、

両者共、次回の東京五輪にはやや醒めたスタンス、というのも、何だか安心感、というか。


そういう所で、「風街」ルーツ学習+「風をあつめて」「夏なんです」の意外なエピソードもちらほらあったメイキング過程、やはりこの2曲に自ずと意識集中すがち、ではあったけれど、

今回流れた中で「はいからはくち」のサビ~間奏の辺りなどの、ゆるい脱力感が、メンタル的にリフレッシュ効果、というような再発見あったり、これもなかなか色んな意味で、予想以上に味わい深い番組でした。

関連サイト:CINRA.NET 細野晴臣、松本隆、鈴木茂が『風街ろまん』秘話を語る、NHK番組『名盤ドキュメント』
関連記事:プレミアム10 YMOからHASへ音楽のチカラ「青春の言葉 風街の歌 作詞家 松本隆の40年」 A LONG VACATION From Ladies(’09)松本隆に捧ぐー風街DNA-(’10)追悼・大瀧詠一~朝 / はっぴいえんど(’70)ETV特集 細野晴臣 音楽の軌跡~ミュージシャンが向き合った「3.11」~MASTER TAPE~荒井由実「ひこうき雲」の秘密を探る~<1><2>クリスマスの約束(’14)

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by MIEKOMISSLIM | 2015-01-09 04:09 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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