2015年 04月 04日
龍三と七人の子分たち(’15)
北野武監督新作で、北野作品といえば私は「監督・ばんざい!」以来、今回のも近年のヤクザものの一環かと思ってたら、もろハードボイルドというより、コミカル任侠もの、というか、
たけし本人は刑事役で出ていて、中心は元ヤクザの老人たちグループ、演じるのも、主演の龍三役藤竜也はじめ、平均年齢72才、というベテラン陣。おまけに音楽担当も、まあ60代だけれどベテラン鈴木慶一。<→チラシ>
彼らが、今時のオレオレ詐欺などで悪事を働くチンピラ集団「京浜連合」を征伐すべく、再び龍三を親分とする「一龍会」を結成して、一旗揚げようとするのだけれど、
何分、拳銃を持つ手もブルブル震えるご老体集団、その笑いを誘う奮闘ぶり、今時の感覚と彼らの任侠メンタルとのギャップ、折に混じるそれなりの人情っぽさ、とか、
たけし流?ブラックユーモアも交じってたけれど、正直ちょっと意味不明?だった「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」などより流れ的にわかりやすく、面白かった、という感じ。
4/7日追記:概して京浜連合の今のチンピラ達は、昔のヤクザ老人達に敬意を払ってる風はなく、特に強気な幹部達は、はなから見下してるのだけれど、
下っ端メンバーが単独で老人達に一杯食わせようとする時、オレオレ詐欺を信じた龍三の、息子の不始末に筋を通すため指を詰めようとそうとするパフォーマンスや、老人たちの拠点で入れ墨群を目の当たりにして、<←チラシ裏>
何か理屈抜きの圧力を感じて、思わずひるんで逃げ出すシーンとか、あっさり一筋縄ではいかない微妙な力関係の空気なども、たけし目線、なのか、ちょっとリアルな気もして可笑しかったり。
一番インパクトシーン、といえば、やはり終盤の、老人達がバスジャック、京浜連合の連中の車を追って、狭い商店街の店先をなぎ倒しながらの暴走チェイス、だけれど、
滑稽さ的には、龍三がキャバクラママ(萬田久子)の部屋で京浜連合幹部達とニアミス、ママの下着をまとって脱出、ゲイバー界隈で同業者と思われてゲイ達に絡まれて、のくだりで、
藤竜也は私は「村の写真集」での父役以来だったのだけれど、まあひたすら渋イメージだった「愛のコリーダ」俳優も、こういうシーンまでやるように・・とちょっと苦笑。
その兄弟分の若頭のマサ役の近藤正臣も、昔は2枚目イメージ、随分歳もとった、とは思ったけれど、こういうコミカルさ、というのもやや意外。
そうイメージギャップなかったのは、馴染みあった中では、はばかりのモキチ役の中尾彬、だけれど、終盤彼の身に起こる急展開、扱われ方は結構ブラックユーモアな、というきわどさ。
4/8追記:こういう老人躍動ものって、前に「死に花」というのがあった、とは浮かんで、そこそこ面白かった覚え、でもどうも詳細薄れてて、ちょっと検索したら、
犬童監督作品で、老人ホームのおじいちゃん集団が銀行強盗をやろうとする、みたいな話だったのだったけれど、これはまあそのやさぐれ北野版、というか。<↑チラシ中>
今回も、老人ホームからやってきたカミソリのタカ(吉澤健)というキャラクターもいたけれど、そもそもが元ヤクザ老人達、
龍三は家で、息子夫婦に一目置かれるどころか、入れ墨露出などを露骨に疎んじられ、「義理も人情もありゃしねえ」と肩身の狭い日々、
そういう鬱憤晴らしか、若頭のマサと共に飲食店で勝手な賭けをして、客に難癖つけたり、スケール小さいコミカルタッチの不良翁ぶり、
それでもまんまとオレオレ詐欺に引っ掛かりそうになり、息子を救おうとしたり、京浜連合の徳永(下條アトム)のマネをして恐喝しようとした主婦の話にほだされて、逆に金を渡したり、情に弱い一面、
また終盤、決死の京浜連合殴り込みの前、息子に電話しても、余りまともに相手にされないけれど、孫息子がおじいちゃんを恋しがる、のようなことがチラッと垣間見えたり、そこら辺、たまに散りばめられた人情スパイス、というのか。
まあ大人しく余生を過ごす、というには、くすぶる部分もある彼らが再結集したことで、チンピラ集団に宣戦布告、ひと肌挙げて、という意気の盛り上がり~ひと騒動、
折々早撃ちのマック(品川徹)が怪しい手元ながら放つ銃弾など、で、威嚇はするけれど、老いた身で、体力的にもメンタル的にもそうスマートにも行かず、ハチャメチャぶりが笑える見もの、だったけれど、
たけし自身は刑事役で、彼らを大目に見たりたしなめたり警告したり、という脇役、というのも、これの前の未見の「アウトレイジ」2作ではやはり主演だったようだけれど、
今回は役者ビートたけしとしては、中心キャスト高齢ベテラン陣に、もろに絡んだり仕切ったり、というより、彼らに主な所はまかせて、締める所は締める、という傍観的な位置を選んだのかも、とか思ったり。
そういう所で、私は久方の北野作品、やはり一応任侠もの、ではあったけれど、予想以上に笑いもあって、なかなかの怪作を楽しんだ、という後味でした。
関連サイト:龍三と七人の子分たち 公式サイト、象のロケット 「龍三と七人の子分たち」
関連記事:TAKESHIS’(’05)、監督・ばんざい!(’07)、あなたへ(’12)、村の写真館(’04)、カナリア(’04)、大停電の夜に(’05)、ユメ十夜(’07)(「市川崑物語」スレッドの10)、愛の流刑地(’07)、人の砂漠(’10)、山桜(’08)、,蝉しぐれ(’05)、THE 有頂天ホテル(’06)、県庁の星(’06)、日本沈没(’06)、それでもボクはやってない(’07)、犬と私の10の約束(’08)、クライマーズ・ハイ(’08)、HERO(’07)、時をかける少女(’10)、犬神家の一族(’06)(「市川崑物語」スレッドの9)
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