2015年 05月 24日
新しい靴を買わなくちゃ(’12)
これは「ハルフウェイ」と同じ監督北川悦吏子&プロデュース岩井俊二のタッグ作、ということと、「Love Letter」以来の岩井監督&ヒロイン中山美穂コラボ作、舞台がパリのラブストーリー、とのことで、気にはなっていた作品。
また、この音楽担当はが坂本龍一だった、というのは今にして知った次第。
パリで一人暮らしのヒロイン勅使河原アオイ(中山)と、偶然出会った日本から来たカメラマン八神千(向井理)が過ごした3日間の出来事、という物語。<(C)キングレコード→>
映画での中山美穂の姿も私は久方、冒頭登場した時には正直、巷で折に言われるような”劣化”というのは失礼だけど、やっぱり歳はとったかも、という印象ではあったけれど、
さすがに10年程になるのか、私生活で結婚後のパリ在住歴で、流暢なフランス語、一回り近い年下になる向井理演じる青年をナビゲートして迷子状態から救う、現地の年上女性らしいリード面も見せつつ、
泥酔状態になってしまって、送られ、家に招き入れる成り行きになった彼に、愛着を持ちようになって、辛い過去も打ち明けたり、自然に接近しつつも、
相手はすぐに日本に帰る身、引き留められはしない、という切なさのある役柄を、今のこの人なりにキュートにこなしてたのでは、という感じ。
近年離婚報道もあったけれど、やはり「Love Letter」の頃からは、私生活でも色々経て、パリ在住歴も含めて、今のこの人での大人版岩井色作品、と思えばちょっと感慨も。
5/25追記:まあ不自然さといえば、出会ったばかりの旅人青年に、異国のラフ感覚+同じ日本人愛着、というのもあるかもしれないけれど「勅使河原だと呼びにくいから、アオイで」などというのとか、思えばちょっとあざとい?感じもしたり。
元々日本で美大を出て、単身パリに来て画廊で働いていて、フランス人画家と結婚・離婚、仕事はあるけれど、1人暮らし、という境遇にしては、
パリの割と中心地らしき所で、結構な広さの家に住んでて、というのもやや?で、別れた時に子供が出来ていてその子を産んでシングルマザーに、という経過で、
その画家からそれなりの仕送りなりがあったのか?そこら辺は触れられてなかったけれど、仕事にしても、大手の会社でバリバリキャリアウーマン、というより、
ローカルっぽいフリーぺーパーの編集をボチボチ、という感じで、パリの実際の住宅相場って詳細不明だけれど、どうもあの住居の生活水準が謎?だったり。
そこら辺、突っ込み所はご愛嬌、だけれど、相手の青年、千については、向井理演じるソフト路線、そもそも人当りいいキャラ?にしても、アオイへの接近の仕方が妙にナチュラルすぎ、
パリに来た理由も、妹スズメ(桐谷美玲)の恋愛沙汰でお伴として連れられて、だし、一見優柔不断、でもありながら、一応現実味があったのは、不平不満だらけの日本でのカメラマンの仕事、だけれど、
やはりその仕事を軸足にはしていて、アオイに魅かれる部分はありながらも、刹那的な恋に溺れるわけでなく、日本へ戻る、という意識は通していた、という点。
だからアオイとの距離もそれなりにキープ、彼女の家での2晩目も、ムード的には一線を越えて結ばれても、という流れはありながら、少なくても映像では、彼女を癒すハグどまり。
多分、映像外でそれ以上に進んだ?という印象も、その後の流れからは受けなかったのだけれど。それは、息子を亡くしたというトラウマの告白、辛い過去を持つ彼女のピュアさを感じて、という部分と、
彼女側が強く押せば、そういう関係もあったかもしれないけれど、彼女も、劇中故郷であるらしい東京への望郷の気持ちをちらつかせたりしていながらも、やはりパリの住人、
彼は所詮束の間の旅人、深入りは色んな意味で無理、という意識があったからこそ、揺れる気持ちはありながら、切ないけれど淡い交流で留まった、
所々好意の告白っぽいジョブのようなやり取りもありつつ、大人の中山美穂が演じながらも、結局ある種品のいい純愛物語だった、という点もこの物語への好感点。
坂本龍一音楽は、特にそういう終盤の微妙な揺らめき、切なさ感に寄り添っていたような感じ。
また、同時進行的だったもう一つのサブのラブストーリー、スズメとアーティスト志望のカンゴ(綾野剛)カップル、
こちらは、もしかして「ハルフウェイ」の北乃きいと岡田将生のように、設定だけは決まってて、やり取りは2人任せのアドリブ科白?と思うような節も折にあったのだけれど、後で、この2人のシーンについてはほとんどアドリブだった、と見かけてやっぱり、と納得。
ケジメをつけにパリに乗り込んできて、ストレートに思いをぶつけるスズメ、その思いを受けきれないカンゴ、というナマっぽさもあって、辛いけれどスズメの決断がきっぱりした結末で、これはこれでやはり好感。
桐谷美玲って近年、ニュース番組とかで見かけて、美人だけれど硬派っぽい印象だったけれど、こういう、女の子っぽい役もしてたのだった、と。
メインカップルについては、中山美穂インタビューで、彼女はアドリブは禁じられていた、そうでだけれど、
一つのヤマ場だった2晩目のハグシーンや、終盤、千がタクシーに乗り込む直前の別れのシーン、などは、やはりもしかして、少なくとも向井理はアドリブだったのでは?と思ったり。
またこのメインカップルは、後日談でタイトルの”靴”絡みエピソードで、パリでのアオイとの出会いで一皮むけた千、そして悲しい過去から一歩進むアオイ、というニュアンスもあって、この2人の今後?という含みも少し漂ったり、という仄かな明るい後味。
それと、この作品エキスとして、やはり私は未踏のパリ。観光地ばかりが舞台だった訳ではないけれど、凱旋門、シャンゼリゼ通り、ジャンヌ・ダルクの像、セーヌ川、その河畔のノートルダム寺院、エッフェル塔など、
やはり同じパリ舞台ではあっても洋画とは違う、迷子同様の千がアオイに携帯で案内されて歩く街並み、2人で乗ったセーヌの遊覧船など、日本人目線での、ちょっとした観光気分味わい、という趣も。
家並みが低いから何処からでも見えるエッフェル塔が、心の拠り所、というようなアオイの言葉もあって、
なるほど、ビルだらけの東京では、東京タワーやスカイツリーなんて、そういう訳にはいかないはず、と、改めて低い街並みのパリのエレガントさ、を思ったり。
あと目に残ったのは、撮影自体は岩井監督自身ではないのだろうけれど、折々の”逆光”シーン。ああ久方の岩井(関連)作品、という気がして懐かしかったり。
そういう所で、「ハルフウェイ」の北川&岩井色を思えば、こういう合う種のラフさ、というのも路線かもしれないけど、
近年の中山起用作品、としては、息子を亡くした悲しみを切々と語るアオイ、というのは、一瞬、最近離婚して一人息子の親権は元夫、という中山美穂、ということも重なったりして、やはりこの人も色々経てきての、こういう役柄、とも思ったり。
でもまあ全般として、思ったより何というか、可愛らしく頬笑ましい、パリ舞台ラブストーリーでした。
関連サイト:Amazon 「新しい靴を買わなくちゃ」、象のロケット 「新しい靴を買わなくちゃ」
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