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Something Impressive(KYOKOⅢ)

ゆずり葉 ー君もまた次の君へー(’09)

昨日15日(火)、近くの成田図書館で映画会、「ゆずり葉」という未見のもので、都合も合ったので久方に図書館で鑑賞。

全日本ろうあ連盟の結成60周年を記念作、とのことで、初耳の作品。主な登場人物はろうあ者達、なのだけど、特にそう障害者もの、という後味は薄く、しみじみとした家族・青春もの、という感じ。

意外と、というか結構じんわり来るものがあるかも、と思ったら、Wikipediaによると公開時、その週の「ぴあ」満足度ランキング1位だったそうで。



主人公の大工木村(庄崎隆志)の亡き妻早苗役で、今や国会議員、先日不倫沙汰騒ぎがあったばかりの今井絵理子が出てて、

女優業もやってたのだ、と初めて知ったけど、一瞬、何だか地味な映画に出たものだ、と思ったけれど、

そういえば、政界進出のルーツとなったのは、お子さんが何かの障害を持ってて、というのを思い出して、そういう背景もあってか、と納得。後で確かめたら、お子さんの障害はやはり聴覚障害だったのだったと。



その他健聴者達、木村の働く工務店の先代店主役の大和田伸也、多分早苗の母役だった山口果林、ちょっとどこで出ていたか?友情出演だったらしい西村知美、のクレジットとかもあったけれど、

主な出演者、役者を目指す吾郎(福嶋一生)、その恋人さやか(津田絵里奈)、その妹で薬剤師を目指す尚美(貴田みどり)など皆ろうあ者で、演じる俳優陣もそのようで、

後で知ってちょっと驚いたのは、さすがに監督は健聴者だろうと思っていたら、その早瀬憲太郎監督自身もろうあ者で、普段ろうあ者向けの塾をやってるそうで。





大分前に見たやはりろうあ者出演の「アイ・ラヴ・ユー」「アイ・ラブ・ピース」「アイ・ラブ・フレンズ」等シリーズの、

「アイ・ラブ・ユー」の監督のお一人はろうあ者だったけれど、健聴者の監督と2人で共同、だったし、こういう風にろうあ者でありながら単独での監督、というのは初耳。

劇中の木村のように、この監督も映画は好きだけれど字幕のある洋画でないと見られず、だったそうで、

でもこうして一般公開作品を撮るまでに、というのはやはり情熱、努力、才覚あったのだろうと。


印象的だったのは、木村が帰宅して、出血して倒れている身重の早苗を目前にして、しゃべれないがゆえに病院に電話もかけられず、雪の中彼女を運んでいくしかない、身を切るようなもどかしさ。

ほのぼのシーンとしては、海の見える丘公園で、男子高校生が手話で、さやかの手話アクション手助けを受けながら、女子生徒に告白、のシーン。

You tube映像でも、聞こえない、という個性を生かすことでこれまでの映画では表現できない面白さが加わった、というくだりがあったけれど、

そういう手話というツールならではのストレートで爽やかなな温かみ、というか。


健聴者の早苗が木村に魅かれていく、というくだりは、まあ手話には縁がない自分としては、想像でしかないけれど、

この作品の後味的なものもあるのだろうけど、もどかしいことは山盛り、にしても、何だかもしかして普通にしゃべれるより、

”手話”という手段を通じて、の方が、余分な駆け引き、摩擦、すれ違いが少なく良くも悪くもストレート、ピュアに気持ちが通じ合って、相手によってはハマる、ということがあるのかも、とか。

あとやはり、まあお話的には出来すぎ、ではあるけれど、病魔が迫る木村の、ずっとぬぐえなかった亡き早苗に対する自責の念が、

思いがけない形で、自分の血筋を引く命を宿すさやかの身をアクシデントから救った、という形で緩和出来た、というカタルシス。


作品の根底的には、薬剤師の資格に合格しながら、厚生省に取り消された尚美、のエピソードにもあったように、ろうあ者への差別を失くす、という意義があるのだろうけれど、

むしろそういう所よりも、余りそういう障害ゆえのマイナス部分を乗り越えて、というより、普通に日常を頑張ったり落ち込んだりしつつ過ごす人々の人生ドラマ、という感じ。


俳優陣的には、今井絵理子もこの作品のスパイスの1つ、かもしれないけれど、やはり過去に傷を持つ主人公木村役の庄崎隆志の深みある物腰、

一見今時のイケメン風の吾郎役の福嶋一生の、等身大のろうあ青年の、恋人さやかや木村とのやり取りでの揺れ動く心情、とか、

演技力というのは?何とも言えないけれど、この作品の表立っての”柱”だったような。


ゆずり葉 ー君もまた次の君へー(’09)_a0116217_239354.jpg上映前、図書館スタッフが携帯は切っておくように、と言ってたと思うけれど、上映中はそのスタッフは部屋にいず、

途中、観客の男性の携帯が鳴って、仕事のことか何かしばらくそう声をひそめるでもなく話してて、マナー的には困ったもんで、だけど、

丁度木村が自分の過去の出来事について、多分早苗の事以外で何か仲間に告白してた、というシーンで、

ずっと字幕は出たいたのだけれど、何だか気が散って、見落としたまま不明だったのだけが、ちょっと鑑賞中も気にはかかってて、

この作品はノベライズもされているようで、図書館に在庫あるようなので、そのシーンがあるか?だけど、一応予約して、読んでみることに。<↑(C)汐文社>


そういう所で、まあたまたま今話題の今井絵理子の出演映画?という、ちょっとした興味以外、正直そう期待を持って、という訳ではなかった鑑賞だけれど、意外と良かった、

人それぞれの幸せ、人生のケジメのつけ方、みたいなことも思わせられた作品でした。

関連サイト:ゆずり葉ー君もまた次の君へー サイト成田図書館 イベントページ
関連記事:埋もれ木(’05)理由(’04)それでもボクはやってない(’07)

by MIEKOMISSLIM | 2017-08-16 02:55 | 邦画 | Trackback | Comments(0)