2009年 03月 22日
黒いオルフェ(’59)
冒頭、リオの街や海を見下ろす丘、そこで踊る人々、頭上に物を載せて運ぶ女性達等バックに「フェリシダーヂ」が流れ、劇中、オルフェ(ブレノ・メロ)がギターを手に子供達に歌う「黒いオルフェ」に、街で出会ったばかりのユリディス(マルペッサ・ドーン)が惹かれて、曲に合わせて踊ったり、2人が恋に落ちた翌朝、やはりオルフェがギターで昇る朝日をバックに「フェリシダーヂ」を歌ったりと、2曲が印象的に使われてました。
3/23追記:全編に漂う’60年頃のリオの活気、打楽器のサンバリズムで踊る人々、カーニバルの喧騒の合間で、ひっそりと生まれた恋、でもユリディスを脅かす、全身スーツで覆い死神のイメージの不気味な追っ手、オルフェの勝気なフィアンセのエスカレートする嫉妬、そういう状況に巻き込まれて、絵に描いたような悲恋物語でした。
オルフェが、混乱の中死んだと言われたユリディスの姿を求めてさ迷う内に、彼女が乗り移ったかのような女性からの声が、振り返ってはいけない、と訴えるシーンがあって、そもそもベースのギリシア神話だった物語を思い出したのですが、
確かめると、オルぺウスが毒蛇に噛まれて亡くなった妻エウリュディケを冥界に迎えに行ったものの、そこから抜け出るまでは、決して自分の後ろを歩く妻を振り返ってはいけない、と言われながら、不安にかられてついに振り返ってしまい、それが本当の別れになってしまった、という内容で、昔読んだのは少年少女文学本か何かでだったのか、その緊迫の道程シーンは、薄っすらですが覚えありました。
「フェリシダーヂ」=幸せの意味ですが、淡いメロディにのせて、改めて字幕での歌詞は、露のような束の間の幸せ、という内容で、この物語のモチーフ曲になっていたのでした。「ディス・イズ・ボサノヴァ」でもあったように、当時リオでの、騒いで楽しめるサンバの躍動感の合間に、そっとボサノバ曲での叙情、という趣でもありました。関連で「「黒いオルフェ」を探してーブラジル音楽を巡る旅ー」というDVDもあったので、これもチェックしてみたいと思います。
関連サイト:http://www.amazon.co.jp/%E9%BB%92%E3%81%84%E3%82%AA%
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<’90年5月、キーウエストにて>