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カテゴリ:本・ドラマ( 1 )



アンのゆりかごー村岡花子の生涯ー / 村岡恵理(’08)

先日、文庫「アンのゆりかご」を読み終わりました。

赤毛のアンシリーズなどの翻訳者で、昨年のNHK連続テレビ小説「花子とアン」のヒロインだった村岡花子の孫、村岡恵理さんが著者の、村岡女史の評伝。

これも春頃だったか図書館に予約しておいたのが、先週ようやく到着。私の後にも70人程待ちがいて、なかなか人気ぶり。


子供時代に赤毛のアンは、シリーズ全部ではなかったけれど愛読、他にエミリーシリーズなど少女小説もあって、その翻訳の村岡花子、という名は、サガンシリーズの朝吹登水子と双璧で、人物像は全く知らないけれど、DNA的に染みついた馴染み感。

また「SONGS 絢香&「花子とアン」」でも触れてたように、偶然、昨年年頭にふとアンシリーズでもボチボチと読み返してみようか、と、手元の最初の2冊から始め、その後図書館ので辿っていて、春先に、今度の朝ドラが村岡女史ヒロインと知って、ちょっと驚き。

        

で、ドラマ関連で知ったこの「アンのゆりかご」も読んでみたいと思って予約入れたのだったけれど、アンシリーズは途切れなく図書館に在庫あって、寝る前1章ずつなど少しずつ味わいながら1年がかりで今最後の10冊目「アンの娘リラ」にかかった所。

ドラマの方も、普段はまず見ないNHK朝ドラだけど、この村岡女史ヒロイン、という興味で結構見ていて、
    
原案はこの本だったようで、大筋はドラマで知ってたのもあって、+内容的にも興味ひかれつつ、割と早く読了。

でも事実としてドラマとは違う所もちらほらで、やはりそれなりに朝ドラ的に脚色していたのだ、とも判った部分も。

ドラマでは、1冊目「赤毛のアン」がやっと出版され、最終回で2冊目に取り掛かり・・の所までだったけれど、この評伝では、その後の翻訳活動、

先に出てしまった「パットお嬢さん」の前のパットもの、17冊目のモンゴメリ翻訳作だったらしい「銀の森のパット」の翻訳にとりかかった4日後、突然脳血栓に襲われ75才で亡くなるまでの生涯も網羅してあったのが、目新しく、

やはりドラマも、もう少し後半~終盤、翻訳活動全般にスポットライトを当ててくれていたら、もっと見応えだったのに、とも改めて。



今手元にある村岡翻訳作品は、モンゴメリのアンシリーズ3冊とエミリーの2冊、「パットお嬢さん」+ブローティの「フェビアの初恋」。<↓(C)(株)新潮社>

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1/22追記:本文中印象的だったのは、まず、そういう将来の著名翻訳家への土台として、東洋英和女学校時代、英語の勉強にかなり熱中していた様子は「花子とアン」でもあったけれど、

授業のテキストでは物足らず、10代前半の頃すでに、学校の書籍室の、伝統的な英米児童文学作品原書を多量に読んでいた、ということ。

「ロビンソン・クルーソー」「若草物語」、スコット、ディケンズ、シャーロット・ブロンテその他色々挙がってて、面白いものは翻訳して寄宿舎の下級生に語り聞かせていた、そうで、

そういう素地が少女期に出来ていた、父の後押しもあって、本来場違いなお嬢様学校の給費生となって、好きな勉強が出来ている、という自負もあったかもしれないけれど、誰から促される訳でもなく、自ら着々と場数を踏んでいたのだった、と。


それと、「花子とアン」での蓮さま、柳原燁子(あきこ)が寄宿舎で歌を詠んで聞かしてくれた影響で、自分に日本文学の素養が欠けている、と悩んで、

燁子のとりなしで歌人・国文学者佐佐木信綱の元へ通って、本気で歌人を目指したり、佐佐木の勧めで森鴎外の翻訳作品を読んで日本語の美しさに浸ったり、などという経験もあった、ということ。

後年「翻訳家になるにはどうしたらいいか」と大学で英米文学専攻してる女性から相談された時、季節や自然、色彩、情感を表現する日本語の豊かな歴史を思えば、日本の古典文学や短歌や俳句に触れることも大切、と指摘する、という所があったけれど、

それは、村岡女史には、>そういう相談に来る若い女性達は、英語の勉強に意欲的で優秀だが、日本語の研鑽には余り必要を感じてないようで、

難しい言葉である必要はないが、豊富な語彙を持ち、その中の微妙なニュアンスを汲んで言葉を選ぶ感受性は、翻訳の上では英語の語学力と同じ位、あるいはそれ以上に大切な要素だと思う。<

というような考えが根本的にあったようで、それはまさに村岡翻訳の、確かにさりげなく豊富な語彙がちりばめられた、情感あって柔らかく豊かな文章の醍醐味、にそのままフィットするようで、説得力感じた所。


1/23追記:また、村岡花子は自ら創作もする児童文学者でもあったのだけれど、生涯の中で、色々な組織、会合、セミナー的なイベントなどを通して、柳原燁子(白蓮)だけでなく、数々の、特に女流の文学者、活動家との交流、接触があったということ。

林芙美子、宇野千代、与謝野晶子、市川房江、石井桃子、またパール・バック、ヘレン・ケラーなどとも、来日の時交流があったようで、一翻訳家というには、文学界での地位がそれなりに認められていたようで。

「花子とアン」に登場したアクの強い作家宇田川満代は、モデルが宇野千代、また児童文学者吉川信子説とかあるようで、

本の中でも、奔放なキャラ的には宇野千代、従軍ルポのため戦地に赴いたり、というようなエピソード的には吉川信子が重なったり。


1/24追記:私生活的には、やはり夫、村岡との出会い~結婚の過程。不倫で始まった恋だけれど、ドラマでは、村岡の病気の妻は、花子との関係に理解を示して、病死の後、しばらく時を経て2人が結ばれる、という流れだったけれど、

この本での実際の所は、妻が病気なのは同じだけれど、特に妻が村岡の不倫に寛容だったような記述もないし、ドラマには登場しなかった、村岡と妻との間に幼い息子がいたり、

妻は実家で療養で、実質的に家庭生活は破綻状態だったようだけれど、結局、村岡が花子との恋を選ぶ形で、籍の整理(妻との離婚)をして、花子と結ばれた、という形だったようで、

ドラマにはなかった、2人のやや鼻白むような熱烈ラブレターなども載っていて、まあ情熱家同士というのか。

ドラマでの、恋に落ちてしまってから村岡の妻の存在を知って、純に苦しみながら、一時は諦め、気丈に健気に仕事相手として村岡と接していて、

妻が病死、ということもあって、村岡自身も葛藤の末しばらくたって花子にプロポーズ、結果的に好きな相手と結ばれた花子、というヒロイン像とは、正直言ってギャップありあり。

まあ、そこら辺、やはりドラマ、しかも朝ドラ風に脚色されてたのだった、と改めて。勿論ドラマの方が、「赤毛のアン」という王道児童文学の女性翻訳者、としてはフィットするけれど、現実はそう綺麗事、という訳でもなかったのだった、と。


1/25追記;その後の村岡の前妻については書いていないけれど、前妻との息子は、その後村岡の兄の養子、兄の体調が悪くなって、村岡の知り合いの牧師に引き取られており、

関東大震災で7才にして死亡、この死には、村岡と花子の心に暗い影を落とした、という部分があったけれど、ドラマでは存在しなかった、2人の恋の背後の悲運の幼い影。


また、2人の息子道雄がこれも5才で疫痢で急死、という逸話もドラマ通りだけれど、花子は悲しみに打ちひしがれ、弔いの日「すべては神のみこころだ」と聞かされ、

>・・みこころなんかではない、病気の妻と幼い子供を離れた敞三(村岡)と、彼から敞三を奪った花子に対する制裁、ふたりが結ばれた罪の代償なのだーそれは与えて奪う、あまりにむごい仕打ち。<

というような、複雑な心情もあったようで、そこら辺ドラマでは割愛されていた、花子の人間としての裏側のタブー面、かも。


その後妹梅子の娘みどりを養女にして我が子とはするけれど、この一人息子を失った、という悲劇も、そこから翻訳に情熱を注ぐ人生を送る要素になった気がするけれど、

村岡との恋に走らせた、思い込んだら一筋、的な気質が「赤毛のアン」を世に出す原動力にもなったのも確かなようで、

ドラマでも、この本が辿った結構険しい道のり、がちょっと意外だったけれど、そもそも花子にこの本の1冊の原書を託したのは、出版畑からではなく、友人の市井のカナダ人女性宣教師、

しかも時代は第2次世界大戦直前、「命懸けの翻訳」という章もあるけれど、当時英語は「鬼畜米英」の敵国語、英語の本は容赦なく燃やされる、という中、

また空襲を受けて戦火の中、この原書と原稿をかかえて逃げたりもしつつ、平和の時を待っているのではなく、今、これが私のすべきことなのだ、という信念で、

灯火管制下、スタンドに黒い布をかぶせた薄暗い部屋で、「アン・オブ・グリン。ゲイブルス」を訳し続けた、という、

a0116217_2127067.jpg子供時代にこの物語に接してる頃には、全く夢にも思わない、美しいプリンス・エドワード島舞台のアンが躍動するストーリーが日本語で紡がれた際の、翻訳者の置かれてた現実。<(C)(株)新潮社→>

イメージ的には、どこか海でも見える優雅な別荘のような所で、ゆったりした気分で訳していたような、でもおかしくないのに、というギャップ。

やはり並の女性だったら、とても翻訳どころじゃなくギブアップしていた所が、やり通し、しかもその後も次々アンシリーズ、モンゴメリ作品など手掛けていった、というのは、

やはり言葉の世界でのある種の才能に加え、並ならぬ情熱があったのだろう、と改めて。


1/26追記:本人は、73才にして初めて海外旅行、アメリカにいるみどり一家を訪れて、その時プリンス・エドワード島にも行く予定だったものの、それは見送り。

この著者理恵さんを妊娠中だったみどりの体調を気遣って、また、そこを娘と訪れるのは夢のように素晴らしい企画だったけれども、

同時に、現実に目にすれば、心の中で慈しんでいた創造の世界が失われてしまう恐れもあって、もう少し、夢を夢のままで置いておくことにして、結局、生涯そこを実際訪れることはなかったようで。

       

写真などを見る機会はあったのだろうけれど、実際見ていない土地の、生き生きとした翻訳、というのも、ドラマでも折々触れられてた豊かな”想像力”の賜物なのだろう、と。

私も、プリンス・エドワード島はモネのジベルニーの庭などと共に、いつかは行ってみたい、憧れの地、ではあるけれど、実際行ってみたら、勿論感慨もあるだろうけれど、

こういうものだったのか、と、脳裏の中に広がる夢の土地の姿、というのは消えてしまうだろうし、実際行かないなら行かないなりのメリット、というものももあるだろう、とも。


そういう所で、「花子とアン」に加えて、村岡花子の生涯の様々な側面についての、なかなか面白く読めた1冊でした。

関連サイト:Amazon 「アンのゆりかご /村岡恵理」NHK連続テレビ小説 花子とアン 公式サイト
関連記事:アンを探して(’09)SONGS 絢香&「花子とアン」

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          <(C) ( 株)新潮社 >

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by MIEKOMISSLIM | 2015-01-21 00:04 | 本・ドラマ | Trackback | Comments(0)

    

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