Something Impressive(KYOKOⅢ)


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豚と軍艦(’61)

今日、近くの成田図書館で「豚と軍艦」上映会、都合も合ったので行ってきました。観客は、いつもより席も増やしてて40人程、男性が多く中~高齢層中心。

今村昌平監督作でモノクロ作品、戦後の米軍基地の色濃い横須賀舞台に、そこで右往左往する若者達を描いた物語。主演の欣太役は、今年5月死去した長門裕之。

今村作品は、私は11人の監督作のオムニバス「セプテンバー11」('02)に参加の短編「おとなしい日本人」以来ですが、同監督は’06年に死去、その翌年、NHKのETV特集で同監督の特番があったのだった、と。

最近「踊る大紐育」('49)「錨を上げて」('45)とか、終戦の頃にアメリカではこういう娯楽作品が公開されてた、と、日米のギャップを改めて、でしたが、そのミュージカル作品での出演者達の躍動感ある揃いの水兵服姿は、別に抵抗なかったですが、

いざ、こういうほぼ同時代の邦画で、日本で闊歩するその同じ水兵服姿、それに群がり媚びる日本人女性達、というシーンを見ると、何かやはり、妙に情けない違和感。


9/25追記:貧しさゆえに、家庭でも、そういう売春婦的生き方を斡旋される様子。ヒロイン春子(吉村実子)の姉弘美(中原早苗)は、そういう身に馴染んで収入を得て、母ふみ(菅井きん)に重宝され、恋人欣太の存在もあって、渋る春子は疎まれる、という状態。

欣太の、ヤクザ組織で翻弄され続ける煮え切らない姿勢に、娼婦生活に進む気持に傾いた春子に、ふみが、1人(の米兵)に相手を決めて尽くしてこそ、日本女性の価値が認められる、のような事を、切々と真面目に語ってたのが、妙に印象的。

特に用語が劇中出てきたか、覚えないですが、gooの解説に、弘美はオンリー生活で左うちわ、とあって、不特定多数を相手にした層とは別に、特定の米兵との関係を結んでた者が「オンリー」で、ふみの言葉はそういう立場を指してるのだろうと。

また折に英語の会話があって、中国人らしき商人が、バーのような店で、日本人がリンカーンの言葉の意味を判る助けをしたい、のような事を言ってたと思うのですが、何だかそういう敗戦のほとぼりある時期、日本が高度成長前の立場の弱さ、のような部分が露骨に浮き彫り、という面も。

欣太に業を煮やしながらも、断ち切り難い恋心、というのは伝わってはきても、募るジレンマに、気晴らしに米兵と戯れてしまったり、この春子に感情移入も出来にくかったですが、

ラスト、欣太を失った彼女が、米兵に群がる女性達と反対方向の駅へ向かって、やはり娼婦的な生き方からは身を翻して1人旅立った、というのが、私は流れ的にはカタルシスになった、という所。

やはりいくら貧しさゆえやむなく、とは言っても、一括りには出来ずとも、女性の心の奥底に決定的な生理的嫌悪感、死んだ方がまし、位のものがあれば、いくら苦労はあっても、他の道があるはず、と思うので。


今まで見た今村作品は、覚えあるもので「楢山節考」「うなぎ」「おとなしい日本人(セプテンバー11)」で、今回の「豚と軍艦」は、正直またあえて見たい、とも今思えませんが、一番インパクト。

モノクロで展開する、殺風景な基地の街のヤクザ、女性達の刹那的、うらぶれた日々。早口で叩きつけるような科白が、聞こえにくかったりもするし、何か見て楽しい、というものじゃない、と思いながらの鑑賞でしたが、

折にユーモラスさも散りばめられ、笑いが起こったのは、ヤクザ達が食べる丸焼きの豚に”入れ歯”が混じってて、彼らが始末したとんでもない”餌”、を食べさせてた、というシーン、

それに吐き気を催した兄貴分の鉄次(丹波哲郎)が、病院で、持病の胃の病もあって自分は胃癌、と勘違い、墓場で欣太から、あと3日の命、と他人のだった診断を聞いて、木の墓碑を抱えてよろめくシーン、

そして一番受けてて、圧巻だったのが、終盤の豚の大群が街を駆け回るシーン。追い詰められた欣太が、やけになって、トラックにあったライフルを手に、自分たちの商売道具だった、豚たちをトラックから離すように命令、おびただしい豚が街に溢れ、ヤクザ達も下敷きに、という、シュールさ。

ドキュメンタリーで、自然界での動物の群れの様子、は折々あっても、実写で街中を豚達が、というのは初見。

欣太の、我が身への理不尽さ募る自暴自棄的な心境、その鬱憤、またこの話の中の、貧しい日本で蠢く生き様の鬱憤、という感覚もあって、なかなかの迫力、やはり一番インパクト、と言えばこのシーン。視覚的にもハイライト、と。


それと、前の今村特集番組でも指摘されてたのだった、予想のつかないカメラアングル、特に、人物の真上からのショット等、という場面も折に。内容的には、やはり小津監督らに「何を好んでウジ虫ばかり描くのか?」と言われた、生身の人間の邪悪さ、強さ、悲哀を描く、という特性、というのはありあり。

俳優陣では、やはり欣太演じる若い頃の長門裕之の、調子良く内心気弱な物腰。春子役の骨太感の吉村実子は、吉村真理の妹、とのことで、余り面差しは重なりませんでしたが、これが映画デビュー、

近年私が見た中では「みんなのいえ」「死に花」等に出てたり、「千の風になって」('04)の、新潟パートの老婦人役だったのだった、と。

その他では、印象的だったのは、やはり渋くはあるけれどややコミカルさもあった丹波哲郎。また、その妻か恋人かの勝代役の南田洋子、この頃もう長門裕之と夫婦共演?と思ったら、丁度この公開年に結婚、とか。


そういう所で、久方の今村作品、豚大群シーンは記憶に残ると思いつつ、全般的にこの手の喧騒、軋み具合が、やはり私は好み的には今一でしたが、

冒頭、この物語は全て架空である、というテロップ、でもある意味、戦後の日本の地を這うような蠢きの断片をざっくり斬った”その時代”漂う作品、という後味でした。

関連サイト:Amazon 「豚と軍艦」成田図書館 映画会象のロケット 「豚と軍艦」
関連記事:セプテンバー11(’02)(「「KYOKO」&イランはじめエスニック映画」スレッド32)、千の風になって(’04)理由(’04)日本沈没(’06)ETV特集 今村昌平に捧ぐ鬼龍院花子の生涯(’82)転校生 さよならあなた(’07)22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語(’07)春との旅(’10)
<スレッドファイルリンク(ここでは「セプテンバー11」(「KYOKO」&イランはじめエスニック映画」)、「千の風になって」「理由」「日本沈没」)は開かない場合あるようです。>


         
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by MIEKOMISSLIM | 2011-09-24 23:31 | 邦画 | Trackback(2) | Comments(0)


友だちのうちはどこ?(’87)

今日、近くの阿佐谷図書館の映画会で「友だちのうちはどこ?」を見てきました。観客は中~高齢層10人位。この作品は、私は7年前ビデオで見てて、今改めて、図書館のですが一応スクリーンで見られた、という所。

一時見続けてたイラン作品も、アッバス・キアロスタミ作品も久方。キアロスタミ作品は、確かめたら10作品見てて、4年前、DVDでの3監督共作の「明日へのチケット」('05)以来、そしてこの「友だち・・」は初めて見たキアロスタミ作品。

学校の隣の席の少年のノートを持って帰ってきてしまってて、それを、その少年の家まで届けに行く、というだけの話ですが、道中の大人達との接触、少年の心理も追ったそれなりの小冒険。


イラン映画は、見始めたら、ラフにドキュメンタリー風だったり、型にはまってないのが面白いと思ってて、これも初めて見た時、これだけの筋でちゃんと1本の映画が、というちょっとした驚き、だったのでしたが、

やや詳細薄れてて、今回改めて見て、主人公の健気な少年アハマッド(ババク・アハマッドプール)が行きつ戻りつする、ジグザグの坂道のシーンなど、そうだった、とちょっと懐かしく、

この作品入れて、キアロスタミ「ジグザグ道3部作」というのがあって、イラン地震後、同監督が、自作品に出演した子供達の様子を見に行くドキュメンタリータッチの「そして人生はつづく」('92)とか、マイベストキアロスタミ作品、ユニークなカップルの「オリーブの林をぬけて」('94)とかも思い出したり。


冒頭から、高圧的な教師(ホダバフシュ・デファイ)の元、少年達だけのクラス。今時の子供の伸びやかさはない、余りはっきり意思表示出来ない子供達。その中でも、宿題をノートにやってきてない3回目、という理由で、次回は退学、と宣告されるモハマッド少年(アハマッド・アハマッドプール)。

出演は素人の子供達、だったのでしたが、この気弱で悲しげなモハマッド、そして、大人達に無視されながら、その友だちの窮状に、持ってきてしまったノートを、今日中に返しに行かねば、という意志を通す健気なアハマッド演じる2少年が、改めて絶妙のハマり具合。

そもそも家でも、母(イラン・オリタ)は洗濯や赤ん坊の世話に忙しなく、ノートを返しに行かなくちゃ、というアハマッドの言葉など無視、ひたすら、宿題をしなさい!を繰り返すのみ。

8才なりの少年の内面の、切迫した義務感と、全く噛み合ってない、妙な空気のまま、ノートを手に密かに出掛けた少年。

その噛み合わない空気は、道中出会う大人達、少年の祖母やドア職人達が、少年がおずおずと発する事情を全く聞き入れず、自分達の躾の主義や、仕事のやり取りでかき消されてしまい、手にしたノートも1枚ページを奪われたり、ますます濃くなり、そして募るジレンマ。

このジレンマは、あえて出そうとしたのか、ドキュメンタリー風の当時のイランの地方の大人と子供模様だったのか、何だかこういう、相手の少年の(家の)地位とか大人の顔色とかいう損得勘定のない、小さな無私の行為など、世間の都合の前には”無”も同然、という世知辛い感じも改めて。

それでも、電話も携帯もない村で、大まかな場所しか知らないモハマッド少年の家目指して、身体1つで、試行錯誤しながら、駆け巡るアハマッド。

この背景の、改めて、不潔感というのはないですが、土、石、漆喰のまさに質素な材質の風景。でもこのイランの片田舎、迷路のような路地や階段がそのまま、少年の不安や焦りとも重なって、この小冒険の舞台になってる、というシュールさ。

質素は質素、ですが、折々、2階の手すりの大きな鉢の植物、終盤のアハマッドの家の内部の、白い壁+赤い模様の絨毯、など、久方のイランのエスニック味わいも。


モハマッドのと良く似たズボン、同じ姓の家、似た背格好の少年とか、やっと辿りついたか、と思わせてすれ違う、幾つかのシーンなど、それなりのサスペンス。

夜になって、光と影の陰影も濃くなって、心細さも増した所で、良心的な老人(ラフィア・ディファイ)と出会って、ゆっくりとしか歩けませんが、その道案内を受け、その道中話す、職人だったらしい老人がポツポツ語るドアや窓の話。

そう、見つからないままこういう風に暗くなったのだった、と思い出しましたが、改めて、シルエットで浮かび上がる、エスニック模様の窓の覆い、とか、渋い映像世界の展開、という趣も。

そして、辿りついたのはやはり昼間の同姓の別の家。ここで、その結果を率直に老人に告げて、さらに協力してもらう子供っぽさ、でなく、

親切を無駄にしてしまうと思ったのか、これ以上この老人に迷惑はかけられない、とか、彼と探すのは無理、と悟ったのか、目的達成の振りをしたのも、諦めというか大人っぽさというか、印象的だったのですが、

諦めて帰った少年を、ここで登場の父は無言でラジオをいじってて、母は怒るでもなく、夕飯を勧め、沈んだ様子で部屋で宿題を始めるアハマッド。特に癒しとか慰め、という暗示、という風でもなく、でも少年への何かの啓示、だったのか強い風が吹いて、ドアの向こうで舞う白い洗濯物。

翌朝、アハマッドの姿が教室になく、教師の宿題の点検が始まって、窮地のモハマッド少年の表情、という最後のヤマ場で、アハマッド登場。一計を案じてて、ばれずに、ハッピーエンド。ノートには、老人が昨夜くれた、小さな花、の締め。


こういう流れだったのだった、と改めて、ですが、7年ぶりに見て、この少年の無垢な志に、大人の中には、そのノートを平気で破り取る人もいれば、小さな花を添えてくれる人もいる、無視もされるけれど、認める目も存在する、とか、

さり気ないアンチ物質主義、とか、やるだけやって、最後に窮地を救ったのは、大人の助けでなく少年自分の機転だった、とか思ったり。

久方に見たイラン低予算系のキアロスタミ作品、苦味あってもやはりある種の作品よりは、余程若年層にもOKだと思うし、不思議な快作兼怪作感、という所でした。

関連サイト:Amazon 「友だちのうちはどこ?」阿佐谷図書館 映画会象のロケット 「友だちのうちはどこ?」
関連記事:「KYOKO」&イランはじめエスニック映画<2>(16:友だちのうちはどこ?(’87)、17:そして人生はつづく(’92)、18:オリーブの林をぬけて(’94)、20:ホームワーク(’89))、同スレッド<3>(38:トラベラー(’74)、39:桜桃の味(’99)、42:風が吹くまま(’99)、43:ABCアフリカ(’01)、44:10話(’02)、45:クローズ・アップ(’90))、前ブログのイラン映画感想記事一覧明日へのチケット(’05)
<スレッドファイルリンク(ここでは「KYOKO&イランはじめエスニック映画」<2>、同スレッド<3>)は開かない場合あるようです。>


               
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by MIEKOMISSLIM | 2011-09-17 22:17 | 洋画 | Trackback(3) | Comments(0)


ダニー・ケイの天国と地獄(’45)

今日、近くの成田図書館で「ダニー・ケイの天国と地獄」映画会、都合も合ったので見てきました。観客は中~高齢層30人位、これも私がここで経験した中で一番多い方。

ブルース・ハンバーストン監督作で、ダニー・ケイが双子の兄弟の二役を演じる音楽コメディ。私はハンバーストーン作品も、ダニー・ケイ出演作も初で、ダニー・ケイはユダヤ系、ジーン・ケリー同様歌って踊れる往年のスター、コメディアンでもあったのでしたが、なかなかの芸達者ぶり。


お話は、人気客席芸人バズィ(ダニー・ケイ)が、ギャングの殺人現場を目撃してしまったため、密かに殺されてしまい、幽霊になって、生き別れになっていた、双子の兄弟、学者肌のエドウィン(ダニー・ケイ)の元に現れ、復讐の協力を頼んで、彼の中に入り込んで、バズィを再現したり、

バズィのパートナーで恋人のミッジ(ヴェラ・エレン)や、エドウィンと接近しつつあった図書館員エレン(ヴァージニア・メイオ)達も巻き込んで、恋模様も絡んでの、ドタバタコメディ。

ミュージカル、という訳ではないですが、序盤、ダニー・ケイがバズィとして、ミッジと歌い踊るステージパフォーマンスや、

一番インパクトだったのは終盤ハイライト、ギャングに追われるエドウィンが、オペラ劇の中に紛れ込んでしまい、あせりつつ誤魔化しながら、見に来ていた検事に、バスィが証言するはずだった殺人事件の鍵を、歌って訴えかけたり、というシーン。

上映室でも笑いが起こってましたが、全くバスィとは違うキャラクターのエドウィンが、開き直ってバスィの力を借りずにオペラ風に歌いまくって危機を脱した辺りとか、ダニー・ケイの芸の多彩さ、というか、なかなか見もので楽しめました。

              


9/11追記:ダニー・ケイの同画像での二役、幽霊として物の一部に入り込んだり、透明人間のように行き過ぎたり、というような特撮もあって、アカデミー賞特殊効果賞受賞だったようですが、これも先日見た「錨を上げて」同様’45年製作、終戦の年に、アメリカではこういう作品も、と改めて。

ダニー・ケイは、ラフな芸人、繊細な学者肌若者、という兄弟の演じ分け、バズィのコンタクトを受けた直後のエドワードの倒錯ぶり、またステージでのそれぞれの役でのパフォーマンスとか、演技力というよりかなり器用、という印象も。

ミッジ役のヴェラ・エレンは、やはり先日見た「踊る大紐育」('49)で、ジーン・ケリーのマドンナ役、だったのでしたが、これが映画デビューだったようで、「踊る・・」の時よりはラフな物腰のショーガール役、やはり彼女のダンスも華を添えてて見ものの1つ。

それと、多分ラストで彼女と結婚する店の男性役、と思いますが、渋めのドナルド・ウッズは「夜も昼も」('46)で、コール・ポルターの友人役、だったのだったと。

また、故谷啓さんの芸名は、このダニー・ケイからだったと今にして。偶然ですが今日、谷啓さんの命日だったのだったと。

そういう所で、ダニー・ケイの芸達者ぶり、ショーやオペラ、音楽ミックスのコミカル劇で、一時リフレッシュでした。

関連サイト:Amazon 「ダニー・ケイの天国と地獄」成田図書館 映画会
関連記事:夜も昼も(’46)星砂の島、私の島~アイランド・ドリーミン~(’03)クレージーキャッツ日本一のホラ吹き男(’64)会社物語(’88)-追悼・市川準監督ー踊る大紐育(’49)


                
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by MIEKOMISSLIM | 2011-09-10 23:22 | 洋画 | Trackback | Comments(0)


遥かなる山の呼び声(’80)

今日、近くの高円寺図書館で「遥かなる山の呼び声」映画会、都合も合ったので見てきました。観客は中~高齢層中心で30人位、ここで私が経験した中で一番多かったかと。北海道の牧場舞台で、健さんが渋味を見せる山田洋次監督作のヒューマンドラマ。

山田作品は私は「武士の一分」以来、この作品は未見でしたが、故渥美清さんが人工授精師、というチョィ役で出てたり、ハナ肇、武田鉄矢、ムツゴロウ氏の畑正憲が獣医役、など若き日、在りし日の顔ぶれも味わい。


北海道東部の中標津という所で、牧場を女手1つで切り盛り、幼い息子武志(吉岡秀隆)と暮らす民子(倍賞千恵子)の元へ、ふらりとやってきて、住み込みで仕事を手伝いだした身元不明の男田島(高倉健)。

息子は、最初どうも似てる、と思ったら、しばらくしてキャスト名が出て、やはり子供時代の吉岡君。この時点で、彼の芸達者ぶりもあって、「北の国から」母子版、のような感じ漂ったりしましたが、

これは「北の・・」が始まる前年の公開で、オーディションで山田監督に見出されて、これが最初の山田作品出演だったのだった、と。

話の荒筋だと、苦労して暮らす母子の元に、懐の広い仙人のような健さんが現れて、という人情もの、をイメージしたのですが、確かに実直な人柄で母子の信頼を得て、心身の助けにもなるのですが、

終盤この本人自体、脛に傷があって警察に追われる身、と判ってきた所で、逆にこの男にとっての一時の憩いの場が、この母子だった、という予想とはやや逆転のドラマ展開。


またその辺りで、そう言えば、と、未見ですが「幸せの黄色いハンカチ」の事を思い出して、やはり北海道で高倉・倍賞コンビで山田作品だし、その、刑務所帰りの男を待つ女性、という大まかな荒筋が、この物語とリンクする気がして、

「幸せ・・」とこの作品の公開も、似たような頃、でも前後関係も不明でしたが、これってもしかして「黄色い・・」に続く、前振り的な作品?と思い始めてて、ラスト列車内で民子が田島に渡した黄色いハンカチ。それで、やはりそうなのかも、と思ったのですが、

後で確かめたら「黄色い・・」の方が3年前、そのもう少し詳細の荒筋からしても、どうもこの作品との繋がり、という訳ではなさそうで。

ならば、あの”黄色いハンカチ”は、話の流れからして、「黄色い・・」を知らない観客には、意味不明ですが、その知名度踏まえて、まさに民子の心情を表す恰好の小道具、として使われた演出、という所だったのだろうかと。


そういう事もちょっと引っ掛かって印象に残ったのですが、内容的には、島田の母子への誠実で男気ある接し方、からして、殺人を犯してしまい、その罪を問われるのが、どうにも苦痛で不本意、にしても、表社会から逃げ惑う身、というのがどうもしっくりこず。

母子と接する内に、本来の男気、を取り戻して変化、結局ラストは観念して、かもしれませんが、逃げるのを止めた、とも取れるのですが、そこら辺の心情は、自分の犯した罪、過去について、去ろうとする前、一度だけ民子に淡々と語るだけ。

唯一の肉親らしい兄(鈴木瑞穂)にも、余波の迷惑をかけて、の逃亡生活、実際は、時間稼ぎか、逃げおおせれば、という卑小な部分が多かったのか、やむにやまれぬ理不尽さを抱えて、妻の死の絡んだ非情極りない相手への行為で、罪を問われる位なら、野垂れ死にでも、という覚悟を持っての確信行為か、

原作はなさそうだし、そこら辺、どうも謎ですが、そういう風に、彼の心情吐露を最小限にして、余計な科白のなさ、が、健さん本人のイメージと相まって、そういう矛盾を薄めて、お伽噺のような話がヒューマンドラマになってた、という後味も。

健さんは、今回50才位の時でしたが、乗馬姿も颯爽、物腰もやはり概して渋かった。私は前作「単騎、千里を走る」('05)以来でしたが、その日本編担当だった降旗康男監督の、来年公開の「あなたへ」という作品に、6年ぶり映画出演、という記事を見かけて、健在なんだ、と。

どうもこの人のTwitterや公式ブログ、らしきものはなさそうで、何だか安心するのは私だけでしょうか。


それと、やはり倍賞千恵子演じる民子が、余り今時のシングルマザー、という横文字はややそぐわない感じの、芯のある気丈さ。

そうきつさ、というキャラクターではないですが、楽な生活をさせるのに、などと言い寄る虻田(ハナ肇)にも、毅然とした態度を見せ、思いやりも持ちつつ、筋の通った気骨ある女性、というのもこの物語の骨組みの1つ。

島田に当初警戒心を抱きながら、彼の働きぶり、息子への大らかな接し方、男気に、自然と信頼が湧いて、距離を縮める心情、突然出て行くと告げられた時の動揺、などが、妙な駆け引きやあざとさなく、自然に出てたのも好感。

この作品は、そもそも山田監督が、「シェーン」を題材に、そのテーマ曲「The call of the faraway hills」を和訳してタイトルにしてた、というのと、倍賞千恵子ヒロインの「民子三部作」の3作目だったのだった、と。

倍賞千恵子は、出演作名を見て、「植村直巳物語」での妻役、というのも気丈な印象だった、と思い出したり。


後やはり、先に挙げた、色んな顔ぶれの脇役陣が、島田の喧嘩の腕を知って降参、応援側に廻った虻田含め、民子を気遣ったり、場を和ませたり、大方皆良い人。護送員(下川辰平、笠井一彦)も、島田にさり気なく弁当を勧めたり、という人情をちらりと見せたり、というような所も 。

そういう所で、北海道の四季の美しさ、雄大さの中の、この頃の山田作品の風味+健さん・倍賞千恵子カップル軸の、恋愛は抑え目に隠し味にした、人情ドラマ味わい、でした。

関連サイトト:Amazon 「遥かなる山の呼び声」高円寺図書館 映画会象のロケット 遥かなる山の呼び声
関連記事:四日間の奇蹟(’05)星になった少年(’05)ALWAYS 三丁目の夕日(’05)ヨーロッパ特急(’84)単騎、千里を走る(’05)博士の愛した数式(’05)海は見ていた(’02)海へ、See You(’88)男はつらいよ 寅次郎夢枕(’72)武士の一分(’06)吉川晃司が外科医役 / 山田洋次監督談「日本の里100選」ALWAYS 続・三丁目の夕日(’08)会社物語(’88)ー追悼・市川準監督ー私は貝になりたい(’08)
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                     <’98年3月、北海道にて>  
 
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by MIEKOMISSLIM | 2011-09-03 23:20 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)

    

’09年1月末AOL映画掲示板、ブログが終了、気分新たにマイペースで、音楽・芸術鑑賞、ユーミン関連、読書、英検1級対策、グルメ、仕事等含めて書いてます。英検は’11年11月に無事合格達成出来ました!
by MIEKOMISSLIM
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学年末考査対策終了・祝合格
ひな祭り
大九州展&全国うまいものめぐり
確定申告
恵方巻
冬の北海道物産展
冬期講習・波乱のセンター試験終了
クリスマスデザート
リトルプリンス 星の王子さまと私(’15)
第20回 フィルモアコンサート
期末テスト対策終了
中間テスト対策終了・新入会
東西有名寿司と全国うまいもの大会&北海道大収穫祭
モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで
夏期講習終了
Bed&Breakfast / 大貫妙子(’99)
期末テスト対策終了・新入会
長崎の物産展
ユトリロとヴァラドン 母と子の物語ースュザンヌ・ヴァラドン生誕150年
赤毛のアンシリーズ再読・読破
ノルウェイの森(’10)
ブレッド&バター presents-DRAMA&LIVE-「あの頃のまま」(’08)
夜のとばりの物語 ー醒めない夢ー(’12)
サヨナライツカ(’10)
中間テスト対策終了
靴職人と魔法のミシン(’14)
夜のとばりの物語(’10)
新しい靴を買わなくちゃ(’12)
アナと雪の女王(’13)
EARTH × HEART LIVE 2015 松任谷由実・秦基博・JUJU
母の日
初夏の大北海道展
イバラードへの旅 第18回 井上直久絵画展
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