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ノルウェイの森(’10)

気になっていながら未見だった作品のDVD鑑賞期間、一応今回締めは「ノルウェイの森」を見ました。


a0116217_0154933.jpgやはり今まで読んだ村上春樹の中で、脳裏に残る一冊を挙げるとしたら、この原作<(C)(株)講談社→>だし、

その映像化、というのは公開当時も気にはなったのだけれど、

ナイーブな内容がどう映像化?と、ちょっと見るのも怖い、という感じもあったり、結局未見のままだったので、この折に、とチョイス。

どうも原作自体もやや記憶薄れてたし、どうせならこの機会に復習・予習がてらに、と思って久方に例の赤・緑の単行本を取り出して、最初と最後の方だけでもざっと、と思って読み始めたら、

随分久方、村上春樹ってこんなだったっけ?という読み易い文体にも引き入れられて、やや前後はしたけれど、ほとんど一通り読了。

そう、こういう空気感、流れだった、というのは蘇ったのだけれど、ここまで突っ込んだエピソードもあったのだった、という再認識部分も。


a0116217_0183077.jpgで、いざ本作を見始めたら、やはりこれは、原作を読んでいる観客対象作品、かつ創り手側の原作へのオマージュ、という色濃い感じ、

もし原作未体験でこれを見たらどう受け取るのか? 原作に忠実な各登場人物の科白も、原作の下敷きなしに聞くと、どう聞こえるのか?

ちょっと想像つかない、というのが正直な所。<←(C)ソニー・ピクチャーズエンタテインメント>

大幅な独自展開、という部分もなく、やはり細部割愛エピソードも色々あって、まあ長編「ノルウェイの森」村上ワールドのダイジェスト映像化版、と思えばこういう所なのかも、という、トータル的に可もなく不可もなく、という後味。


ただ、一番インパクト残ったのは、唯一原作にはなかった、ワタナベ(松山ケンイチ)と直子(菊池凛子)の緊迫シーン。

施設に2度目に会いに行ったワタナベに、直子が、何故自分のような者にかまうのか、放っておいてほしい、あなたの存在が私を苦しめるのが、どうして判らないの!?と、思いを吐き出して号泣、

必死に彼女を抱きとめるワタナベ、という、最後になってしまったこの2人の逢瀬の1シーン、原作ではずっと穏やかなままのやり取りだったけれど、

直子の内部に積もっていた行き場のない感情が噴出、という展開にしたのは、やはり映像化ならでは、で、ある意味、ここが、原作から踏み込んだプラスα的な描写2か所の一つで、

取り方は様々かもしれないけれど、それなりに意義を感じた、というか、この部分がなかったら、もしかして、この作品への後味はもっと低評価感、だったかも。


6/13追記:配役的には、ワタナベ=松山ケンイチというのは、まあ見てみたら、松ケンの草食青年っぽさがワタナベのサラッとしたマイペース感に、それなりにフィット、

直子=菊地凛子、というのは、原作での儚げな直子よりもやや線太感、だったけれど、この人なりの直子像を見せた、という感じ。

緑=水原希子は、モデル畑のスタイルの良さで長身、科白は原作通りの天衣無縫さ、の割に、話し方があえてそういう演出だったのか?何だか直子モードで、もう少し弾けたタイプでも良かった気も。

一番原作人物と違和感なかったのは、というと、クールな変人永沢=玉山鉄二かも。そして次に、そう出番が多かった訳ではないけれど、その永沢の恋人ハツミ=初音映莉子。

この初音映莉子は、見てた中では「マナに抱かれて」に出てたのだったけれど、名前も初耳、原作中ワタナベが、永沢があえて恋人にしている女性として納得の魅力、というのが、

登場した時から漂うような、華、受けのソフト、純粋さミックスで、映像化としたら、こういう女優化も、と思えたり。

その他、主な人物ではレイコ=霧島れいか、というのは、原作での一見普通の中年女性、でも深みあるイメージ、よりはオーソドックスな美人型、だったけれど、まあ特に浮いて、という訳でもなく、

やはり原作より結構出番は端折られてた、ワタナベの量の同室の”突撃隊”=柄本時生、というのも、イメージ的には合ってた印象。

あと、ワタナベのバイト先の店主にさり気なく細野晴臣!とか、直子の施設、阿美寮の門番に高橋幸宏とか、彼らは特にこの作品の音楽に関わったという訳ではないようだけれど、豪華なカメオ出演陣。


6/14追記:背景で印象的だったのは、やはり阿美寮周辺、原作だと京都奥地の高原地、ロケ地は兵庫県の峰山高原と砥峰高原らしいけれど、一見ヨーロッパの何処か?かとも思う緑の広がり。

ここは直子の心象風景的な場所、としても、原作イメージを損ねることもなく、良かったと思うスポット。

     

最初のワタナベの訪問時、直子が、以前ワタナベから問われた、何故キズキ(高良健吾)と関係を持たなかったのか?という疑問に答えようとする場面、

原作ではレイコもいる部屋の中で、のことで、その苦悩を告白した直後不安定状態に陥ってしまって、しばらくワタナベは席を外す、という流れだったけれど、

劇中では、2人が早朝の高原を歩きながらその問答、という風にアレンジされてて、心情を吐き出しながら足早で歩く直子を追いかけるワタナベ、

最後に感情が高ぶって、キズキに先立たれた苦悩の叫びをあげる直子、なすすべもなくそれを鎮めようとするワタナベ、という所も、

前途の私の一番のインパクトシーン、2度目の訪問時の2人の緊迫シーンと共に、ここら辺も映像化ならではの、直子の内面の、より露わな描写、だったかと思うのだけれど。

     

まあ序盤から、ワタナベの大学生活の描写の中に、原作にもあるように、60年代後半らしい学園闘争シーンが折々あって、原作では物語のトーン自体のせいもあってかそれ程過激な印象はなかったけれど、

やはり忠実な映像化だと、そういう”動的”背景も露わになって、その中で、直子の心情表現も、原作のような抑えたトーン、というのから踏み込んで、より普遍的に、判り易くしてたような、というか。


これを手掛けたトラン・アン・ユン監督作では、前に放映のあった「青いパパイヤの香り」を見ていて、映像が綺麗だった感触はあるのだけれど、やや記憶薄れてて、

自分の感想を見直したら、まったりとした芸術っぽい作品、という後味だったようだけれど、このベストセラー小説映像化にあたって、映像美も意識しつつ、

テーマ的には、余り原作の中傷的なエキスに重点をおいて芸術作品、にするのでなく、登場人物の言動、割と明け透けに語られ展開する性の問題、なども割と忠実に追って、

一般的に判り易くしようとした、ある意味冒険は侵さず、オーソドックスに映像化を試みた、という感じ。


あと、改めてこのタイトルの、ビートルズ「ノルウェイの森」、今にして、だけれど、歌詞を追ってみたら、馴染みの牧歌的なメロディに乗せて、寓話風だけれど、物語絡みとしてやや意味深な、という内容だったおだった、と。

    

    


今こうして、映像化での「ノルウェイの森」再体験して、原作を読んだ当時は、ワタナベは直子を失ったけれど、半ばすがるように、にしても緑と生きる、という「生」(せい)を選んだ、という決着、という落ち着き所、だったのだけれど、

原作冒頭の37才時からの回顧シーンからしても、ワタナベは、直子やキズキが引き入れられた「死」には踏み込まず、「生」ワールドに健在、というのは確かで、

でも思えばそこに、回想の締めでもあるラストでは紆余曲折の末ハッピーエンドに思えた恋、緑の存在は描かれておらず、彼女がその後の彼の健在の支えになってきたのか、それともその後、離れてしまったのか?不明、

一旦「死は正の対象としてではなく、その一部として存在している」という”空気のかたまり”のようなものを10代にして実感してしまったワタナベと、

ナイーブさもありながら基本的に「生」を前提とするエネルギーを持つ緑との顛末は、果たして如何に?というようなことも改めて思ってたり、

どちらにしても、時折そういう切ない回顧に襲われながら、まあ日常生活は飄々と行っている、というのが妥当かも、とは思うのだけれど。


そういう所で、久方に、本置き場に埋もれていた原作含めて、映像化「ノルウェイの森」での復習、トータル後味的には前述のように可もなく不可もなく、ではあるけれど、それなりにこの映像化意義、を感じられた部分もあったり、

ある種読み易くサラサラした手触り感の奥の、コリッとした苦みある”切なさの塊”的赤・緑本、村上春樹ワールド再体験、というこの鑑賞でした。

関連サイト:ノルウェイの森 公式サイトAmazon 「ノルウェイの森」象のロケット 「ノルウェイの森」
関連記事:トニー滝谷(’04)青いパパイヤの香り(’93)

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by MIEKOMISSLIM | 2015-06-11 00:23 | 本・邦画 | Trackback(1) | Comments(0)


ブレッド&バター presents-DRAMA&LIVE-「あの頃のまま」(’08)

先日レンタルサイトで、キーワード荒井由実や松任谷由実で検索してて出てきたDVDの一つ、DRAMA&LIVE「あの頃のまま」を見ました。

’08年5月13日~18日銀座の博品館劇場での舞台、ユーミン提供のブレバタ曲「あの頃のまま」をモチーフにしたライブと演劇のミックス公演のDVD化で、こういう催しがあったこと自体今にして初耳でちょっと驚き。


a0116217_0312068.jpgブレバタは、近年余り名は聞かないけれど、結録アルバム録音も手元にある馴染みの好きなデュオだったし、「あの頃のまま」も好み曲、

2人もステージで「あの頃のまま」その他の曲を披露、とのことで、これは見ることに決定。<(C)DefSTAR RECORDS>


小池竹見という人が脚本・演出、主演は「あの頃のまま」の歌詞の、”他愛ない夢なんてとっくに切り捨てた”ネクタイ姿の男コウタ役が寺泉憲、”夢を捨てきれない”男タダミチが井上純一、

それぞれの青年時代を、この公演の年に活動中止したらしい、兄弟デュオ平川地一丁目の兄、林隆一郎と弟直次郎、一旦彼らとカフェを開く夢を持つマドンナ的女性マリエ役が藤澤志帆など。

構成は、物語がすすみながら、折々にシーンにフィットした曲をブレバタが歌ったり、ユーミンの帝劇のラフなブレバタ版、という感じもあるけれど、

違うのは、ブレバタが自曲だけでなく「春夏秋冬」や洋楽カバー曲も歌ったり、平川地一丁目や他の出演者も、舞台のカフェでの劇中歌としてなど、何曲か歌ったり、

ユーミン帝劇は、割と歌は歌、芝居は芝居コーナー、という風だったけれど、こちらは歌の間にも出演者たちの動きがあったり、

また常にステージの後方にブレバタとバックミュージシャン達がいてスタンバイ状態、ブレバタの2人もたまに劇に参加したり、まあ舞台が音楽カフェ、という設定もあるけれど、歌と劇のミックス具合がより自然、という感じ。

「あの頃のまま」自体、何か普遍的な人生観の切り口、サビの「For yourself For yourself そらさないでおくれ その瞳を 人は自分を生きてゆくのだから」

「For myself For myself 幸せの形にとらわれずに 人は自分を生きてゆくのだから」という部分が、ユーミン作品の中でも特に、他人への懐ある眼差し、のような感触がして印象的、引っ掛かりあるスタンダード曲なのだけれど、

友情・三角関係風にやや縺れた恋愛を絡めて、こういう風な物語に成りえるものだな、と改めて感慨。

また、さすがにやはり歳は取った、という風貌ではあるけれど、柔らかなファニーボイス健在のブレバタの2人の歌声、楽曲がフィットして、思ったより見応え+聞き応え。


曲リストは、

1.あの頃のまま (ブレッド&バター)
2.海岸へおいでよ (ブレッド&バター)
3.春夏秋冬 (ブレッド&バター)
4.Route 66 (寺泉 憲)
5.The Sound Of Silence (平川地一丁目)
6.渚に行こう (平川地一丁目/藤澤志帆)
7.Happier Than The Morning Sun (ブレッド&バター)
8.マリエ (ブレッド&バター)
9.Summer Breeze (ブレッド&バター)
10.The Loco-Motion (ブレッド&バター)
11.Pink Shadow (ブレッド&バター)
12.The Sound Of Silence (ブレッド&バター)
13.マリエ (ブレッド&バター)
14.あの頃のまま (平川地一丁目)
15.あの頃のまま (ブレッド&バター/平川地一丁目)
16.桜の隠す別れ道 (平川地一丁目/ブレッド&バター)
17.湘南ガール (ブレッド&バター/平川地一丁目)
18.特別な気持ちで (「あの頃のまま」オールスターズ)


一番インパクト、といえばやはりメイン曲、久方に聞く「あの頃のまま」。



また、このテンポアップした平川地一丁目バージョンもあって、元々カバーしてたようで、だけれど、これはやはり本家版の方が、しみじみ味わい深いものが。




次は、懐かしいブレバタ曲、平川地一丁目と藤澤志帆が歌った「渚へ行こう」。You tubeにはブレバタ版見当たらず、この時の劇中バージョンが。




それと、やはり懐かしいブレバタ曲「Pnk Shadow」。




また、歌詞の「サイモン&ガーファンクル 久しぶりに聞く」に忠実に、ブレバタ版と平川地一丁目版で歌った「The Sound of Silence」。

2人の青年時代の設定は’60年後半~70年代初頭のようで、2人とマリエとの会話で映画「卒業」の話も出てたり。先日「靴職人と魔法のミシン」に出てたダスティン・ホフマンもまだ若かった。




あと、アンコール演奏最後、ブレバタ中心で全員登場で合唱、日本語歌詞混りのスティービー・ワンダーの「特別な気持ちで」(「I Just Called To Say I Love You」)。

まあブレバタ曲ではないけれど、これがユーミン帝劇での「卒業写真」のような、出演者達皆含めて、アットホーム&ハートウォーミングな、公演の締め、という感じ。





とにかく久方に姿を見たブレバタの2人は、正直風貌は今や、一見そこらにいそうな高齢者ムード、佇まいもざっくばらんで、弟のニ弓氏など、どうも誰かに似てる、と思ってて、

近所の、たまに挨拶する母のアパートにいる大家さんの弟さんに間違えそうな、だけれど、いざギターを抱えて歌いだすと、2人共さすがに「ブレッド&バター」の美声。

平川地一丁目は、今回初耳、ルックスがイケメン風なのは兄でそのボーカル、2人のハーモニーも結構聞かせるものが。とは思ったけれど、今は活動してないようで。

その他どの出演者も、歌は達者、ダンスで見せたり、だったけれど、出演者名のなかでちょっと気になったのは「葛城ゆき」で、考えられるのは、カフェブレッド&バターのママ役の女性、だけれど、

この人って、あの「ボヘミアン」などの「葛城ユキ」と同一人物?!なのか、別人なのか?その風貌、少し聞いた歌声ではどうも判別つかず。


あとバックミュージシャン達は、ブレバタのように劇に直に参加、ということはなかったれど、ギター鈴木茂、ドラムス林立夫など、さり気なく豪華メンバー。ラストの「特別な・・」では、特別ゲストなのか?正やんの姿も。

こういうバックでの、ブレバタライブに、+「あの頃のまま」劇がついたステージ、と思っても、それなりに見応えだったと思うけれど、

劇自体も、やや現実と過去、ブレッド&バターカフェと3人が夢見たカフェ「セシリア」が混在のカオス状態?ではあったけれど、時空を超えたピュアな友情・愛情エキスで、終わってみれば、それなりに良かった、という感じ。

ユーミン帝劇でも、こういう、1曲をモチーフにして、劇中展開に応じて他曲も、というのも有りかも、で、いざどの1曲?というと、難しいかもしれないけれど。

でも、こちらは解散してしまってるけれど、バンバン復活で、この「いちご白書をもう一度」版、とか、中~高齢層には特にノスタルジー的アピールはあるんじゃないかと思ったり。


そういう所で、思ったよりもブレバタ健在ぶりでの音楽、演劇ファクター、そのミックス具合、やや切ないけれど「あの頃のまま」の持つ懐、というのも改めて、という作品でした。

関連サイト:Amazon DRAMA&LIVE あの頃のまま」
関連記事:サヨナラCOLOR(’04)音楽のチカラ「青春の言葉 風街の歌 作詞家 松本隆の40年」 松任谷由実 デビュー40周年 はてない夢の旅MASTER TAPE~荒井由実「ひこうき雲」の秘密を探る~<1><2>追悼・大瀧詠一~朝 / はっぴいえんど(’70)名盤ドキュメント はっぴいえんど「風街ろまん」('71)~“日本語ロックの金字塔”はどう生まれたのか?~

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by MIEKOMISSLIM | 2015-06-07 00:59 | 音楽・演劇 | Trackback | Comments(0)


夜のとばりの物語 ー醒めない夢ー(’12) 

気になっていて未見だった作品DVD鑑賞5作目は、先日見たフレンチアニメ「夜のとばりの物語」の続編、「夜のとばりの物語 ー醒めない夢ー」を見ました。


a0116217_23365524.jpgそもそも「夜のとばりの物語」が、10話の短編シリーズ「ドラゴン&プリンセス」からの5話の新作1話を加えたものだったようで、

その好評もあって、残りの5話も、同様のオムニバスとして公表となったのが、この続編のようで。<(C)(株)ゥォルト・ディズニー・ジャパン→>

やはり前作同様、独特の影絵+鮮やかな色彩で、世界各地舞台にそれぞれの物語がファンタジックに展開。


今回一番インパクト話、といえば、最後の「イワン王子・・」。

イワン王子が瀕死の父を救うため出かけていく、王達の宮殿の、グリーンやブルーなどそれぞれの色彩トーンの宮殿内部や、七変化の姫の宮殿の赤トーンの煌びやかな外観やカラフルな幾つかの扉、など映像的にもメリハリ、

お話も、王子が美しいけれど怖れられていた日知変化の姫に、勇敢に対面、率直な恋心を抱いて姫と心を通じ合い、彼女の変身能力の力の助けを得て、

貪欲な王達が見返りに要求した宝の品々や、肝心の父を救うためのスモモを得てハッピーエンド、という、まあ父を救いたい一心で始まったアドベンチャー&ロマンス、という収まり方の後味良さ。


6/5追記:その他、2話目「靴職人と夢の橋」の、貧しい靴職人青年が夢で見た橋の像を訪ねるプラハ、

3話目「見習い水夫と猫」の、海賊にこき使われ冷遇される少年と猫が降り立つインドの街並み、思いがけず彼らの家!となる、タージマハルがモデルの宮殿、

確かペルシャ舞台の想定だったと思うけれど、「魔法使いの弟子」で、魔法使いに出会って弟子になった青年が招き入れられる、地下の魔法使いの住処の、赤が効いた鮮やかなエスニック模様、など、

それぞれの舞台の、映像も前作に劣らず鮮やかで美しく、前作「夜のとばりの物語」もだけれど、最新テクの導入で、「プリンス&プリンセス」の時より、色彩自体細かい文様が入ったり多彩になった気するけれど、

それが引き立つのも、影絵のシルエットでの、人物や動物などの細かな造形の魅力、素晴らしさあってのこと、と、その渋い技、というのも改めて。

お話的にも、「イワン王子・・」以外の4話は、主人公が、普段は周囲から見下げられたり虐げられたり、貧しかったり、職なしだったり、という身から、

それぞれの持つ能力が開花したり、認められたり、幸運が訪れたり、「見習い水夫・・」は固い絆の青年と猫の、その他はロマンスも絡んでのハッピーエンドで、勧善懲悪的なお伽噺としても妥当、という感じ。


そういう所で、今回DVDでだけれど、ミッシェル・オスロ2作の影絵シリーズ、まあ子供の頃の絵本での様々な童話、に当たるような、そのユニークな独特の映像美+さまざまなエスニック舞台での物語に満足でした。

関連サイト:夜のとばりの物語 公式サイトAmazon 「夜のとばりの物語 醒めない夢」
関連記事:プリンス&プリンセス(’99)(’04)キリクと魔女2(’05)アズールとアスマール(’06)夜のとばりの物語(’10)


  
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by MIEKOMISSLIM | 2015-06-02 23:34 | 洋画 | Trackback | Comments(0)


サヨナライツカ(’10)

気になっていて未見だった作品DVD鑑賞4作目で、「サヨナライツカ」を見ました。


先日見た先日見た「新しい靴を買わなくちゃ」ヒロイン役だった中山美穂の、その2年前公開だった主演作で、

当時はまだ波風もなかったか?中山美穂の元夫辻仁成の小説原作、辻作品原作映画というと江国香織との共著「冷静と情熱のあいだ」は、割と好感だったし、

「新しい靴・・」での、年輪重ねた上での中山ヒロインぶりに、こちらもどんなものだったのか?と、改めてちょっと興味も湧いて、という所。


a0116217_4372532.jpg婚約者光子(石田ゆり子)がいながら、赴任先のバンコクで出会った謎の美女沓子(とうこ:中山)との関係に溺れる豊(西島秀俊)、そこから25年後に渡る物語。<(C)アスミック・エース→>

こちらもラブストーリーではあるけれど、「新しい・・」とは裏腹に、ハードなベッドシーン含むラブシーン満載、思えば”人妻”中山美穂12年ぶり主演作、だったのだけれど、

「新しい・・」では年下格向井理相手の”受け”だったのが、こちらでは西島秀俊に明らかに率直な”攻め”スタンス、

踏み込んだ色香散りばめられた、ここまでハードシーンのある中山出演作は初見で、ある種衝撃作、というか。


一番インパクト、というとやはり序盤、沓子が先日酒場で出会ったばかりの豊の部屋に、豊が野球の試合で打ったホームランのボールを持ってやって来て、誘惑、のシーンでの、

中山大人の女的な腰の据わり方、というか、脱ぎながら正面から相手を見据える表情。

それに対して無抵抗に吸い寄せられる豊、結局このシーンが、この物語のトーンを決めた、という感じ。

その後劇中での2人の蜜月期間、無邪気にふざけ合うシーンの中山美穂も、やはり「新しい・・」とはやや違ったタイプの素の大人のチャーミングさ、というか。


それにしても、原作は未読だけれど、このヒロイン沓子は「新しい・・」のパリ在住のアオイに輪をかけて、の謎のバックグラウンド。

一流の「オリエンタルホテル」の、有名作家達が滞在した、という歴史があるのか?オーサーズスイートの一つ「サマセット・モーム・スイート」に在住、

豊に、見かけた年季入りの高級車を、買ってあげましょうか?とあっさり言ったり、アオイ同様、親族の影もなく、天涯孤独?なのか、

何らかの仕事をしてるとか、誰かの囲われ者であるとか、リッチマンと離婚経験、などという描写も劇中なかったけれど、一体何ゆえに、ああいうリッチ生活水準??と。

そして終盤では、そういうハイソなバックグラウンドも尽きて、昔の馴染みで雇ってもらえたのか?そのホテルでVIP案内要員、という展開も今一?。

ちょっと「ラッフルズホテル」の藤谷美和子、とか思い出して、まあ映画ヒロインとしてはそういうミステリアスさも魅力だけれど、現実感的には不可思議。


でもそういう謎はあっても、ちょっと引っ掛かったのは、日本から何か不穏さを察してバンコクにやってきた光子の、沓子への要求。

感情的に罵ったりはしないけれど、淡々と豊との関係で自分の優位さを語り、最後に「一つだけお願いがあります、来週の日曜日午後1時までにいなくなって下さい」というとどめ。

まあ婚約者として、黙っていられないのは当然だけれど、いくら謎のリッチ身分の沓子ではあるけれど、婚約者の浮気相手に、面と向かって「彼と別れて下さい」ならまだしも、生活拠点からいなくなれ、とまで言うのは?無理ありそうで、

豊の身内的に、ある種の慰謝料、手切れ金などとして、その措置のための必要な費用はこちらで出すから、などとというなら、一応筋的にはまだしも、だけれど。


その要求を受け入れた、というか、豊の光子への忠誠、航空会社の上司桜田(加藤雅也)からの戒めもあって、自分と別れようとする意向も汲んで、だろうけれど、1人NYへ旅立とうとする沓子。

豊は、沓子の奔放な魅力にあっさり落ちて、どうもいつしか彼女に本気で愛着を持ち始めてしまったようだけれど、その思いを断ち切るように、空港でぶっきらぼうな別れ。

そこにやって来た光子に、やっと「愛している」と言うのだけれど、それはやはり半ば義務的な言葉だった、ということが、25年後に形として露呈してしまう、といういびつさが、まあある種真実で、ある意味残酷な恋物語。


残酷、といえば、このタイトルでもある「サヨナライツカ」、劇中の切なさを象徴するような内容の詩を書いたのは、冒頭シーンからあったのだけど、沓子でなく光子だった、という所。

この詩は、何だかこの物語自体のメイン筋とはやや離れた所で、ちょっと印象的。

>サヨナライツカ

いつも人はサヨナラを用意して生きなければならない
孤独はもっとも裏切ることのない友人の一人だと思うほうがよい
愛に怯える前に、傘を買っておく必要がある
どんなに愛されても幸福を信じてはならない
どんなに愛しても決して愛しすぎてはならない
愛なんか季節のようなもの
ただ巡って人生を彩りあきさせないだけのもの
愛なんて口にした瞬間、消えてしまう氷のカケラ

サヨナライツカ

永遠の幸福なんてないように
永遠の不幸もない
いつかサヨナラがやってきて、いつかコンニチワがやってくる
人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトにわかれる

私はきっと愛したことを思い出す<

流れ的には豊を勝ち取って家庭を築いた光子が、婚約時代にその行く末を予見するような詩を書いていた、

単身沓子の所に乗り込んで手を打った、芯の強さ、というか意外な図太さを見せた彼女が、そういう感性を持っていた、というのが、

25年の歳月の中で豊の真の気持ちを汲みとり、豊を大雑把に家庭に留めておくことも諦め、ああいう送り出し方をした、というのも妙な切なさ。


そういう展開、というのも、やはりこの物語は男目線、というのか、豊という人物の優柔不断な不器用さ、というのは漂うものがあるけれど、

ふと出会った美女が、婚約者がいると知っていながら自分に赤裸々にモーションをかけてきて、三角関係の修羅場になる前に浮気相手は自らNYに発って、しかも後年、逢瀬を重ねたホテルで再開、自分を忘れずずっと待ってた、とか、

妻となった婚約者は、会社の社長になった自分の人生の惑いに、何ら口出しをせず、当初から別れを覚悟していたかの風情の、完成した「サヨナライツカ」を手渡してくれる、とか。

いわば自分の都合のいいように、満足いくように女達が動いてくれる、という願望、ロマンの物語、と取れなくもない感じ。

唯一豊の想定外は沓子の急激な体調変化、その身の施し方、その悲しみに、やや自暴自棄的にバンコクの水辺で車を飛ばすシーンもあったけれど、そこで現地語で「大丈夫!」と叫んだり、

社長の座は捨てて、沓子のためだけにバンコクへきたのでは?と思ったけれど、その後オフィスでそれらしき席に座って沓子の面影と語り合ってたり、あれ、また元の鞘?とふと思ったり。

まあ余り突っ込んでも、という、テーマ的にはピュアな”一生に一度の運命の愛”なのだけれど。


あと、豊と光子夫妻の、1人は勉強の出来もよく問題なさそうな剛(西島隆弘)だけれど、もう一人が、どうも問題ありありのような、家を出て鄙びたアパートで女の子と同棲してるロッカー(の卵)の健(日高光啓)。

彼が、訪ねてきた豊に、彼の生き方そのものを侮蔑するような言葉を投げつけ、自分には夢がある、と、言い放ち、光子達が見つめるステージでも反骨的な歌を歌って、というのも、

豊の人生の惑いに拍車をかけて、沓子とのことを含め、リセット方向に作用したのかもしれないけれど、どうも余り共感出来る露骨さじゃなかった。


映像的には、舞台がエキゾチック風物のバンコクで、「私の頭の中の消しゴム」の韓国のイ・ジュハン監督作、日本人監督タッチよりも枠がなく、ナマっぽい風味があった気が。


そういう所で、まあここまで大胆シーンもあったのか、という、前述のように「新しい・・」とは趣違う大人中山美穂映画、遅ればせながら2作ペアとして、違う形のラブストーリーを味わった、という後味でした。

関連サイト:サヨナライツカ 公式サイトAmazon 「サヨナライツカ」象のロケット 「サヨナライツカ」
関連記事:中山美穂新しい靴を買わなくちゃ(’12)マナに抱かれて(’03)トニー滝谷(’04)カナリア(’04)さよならみどりちゃん(’04)メゾン・ド・ヒミコ(’05)好きだ、(’05)神童(’06)春、バーニーズで(’06)風立ちぬ(’13)<1><2>夜のとばりの物語(’10)四日間の奇蹟(’05)ALWAYS 三丁目の夕日(’05)タイヨウのうた(’06)ALWAYS 続・三丁目の夕日(’07)クライマーズ・ハイ(’08)私は貝になりたい(’08)蟲師(’07)歌謡曲だよ、人生は(’07)まほろ駅前多田便利軒(’11)ゲド戦記(’06)


   
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by MIEKOMISSLIM | 2015-06-01 04:12 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)


夜のとばりの物語(’10)

気になっていた作品のDVD鑑賞、3作目でフランスのアニメ「夜のとばりの物語」を見ました。

これは「プリンス&プリンセス」「アズールとアスマール」など結構好感だったミッシェル・オスロ監督作で、「プリンス・・」のような、影絵の6話のオムニバス作品、

世界の様々なエスニックな場所を舞台にした「狼男」「ティ・ジャンと瓜ふたつ姫」「運命の都と選ばれし者」「タムタム少年」「嘘をつけなかった若者」「鹿になった娘と建築家の息子」。


a0116217_2445982.jpgまず最初やはり字幕版で見たのだけれど、夜電気を消した部屋で見たせいか、どうも鮮やかな色彩部分が目に眩しくて、字幕が見にくく、折に手で画面を一部隠して見たり。

劇場で同じ影絵の「プリンス・・」を見た時にはそんな感覚の覚えはなく、画面サイズによるのかもしれないけれど。<
<(C)ウォルト・ディズニー・ジャパン→>

で、再度日本語吹き替え版で見た時には、机のスタンドライトを点けてやや明るくしたのと、字幕なしだったので、確かに見易くなって、改めて、やはり黒のシルエットとコントラストの様々な色彩の鮮やかさにしみじみ感慨。


現代の都会の一角で、影絵制作会社?の男性2人と女性1人が、各短編のアイデアを出しながら企画→即実演、という構成だけれど、

一番インパクトは、5話目のチベット舞台の「嘘をつかなかった少年」。先日の大地震被害で今大変なチベット舞台だけれど、赤が効いた、エキゾチックで細かな文様の曼荼羅の装飾などが、映像的に一際鮮やか。

ただこの「嘘を・・」は、お話的には一番気に入らず。決して嘘をつかない、という評判の若者を巡って、王と隣国の王が領土の賭けをして、隣国の王が自分の美しい娘を若者の元へ送り込み、

娘は病気のふりをして、唯一の助かる方法は若者が王から預かり、話も出来る大切な仲間である馬の心臓を食べることだ、と迫り、娘に一目ぼれしていた若者は、その葛藤に苦しんで、

それを知った馬が自ら薬草を食べて死に、断腸の思いで若者が心臓を差し出した時には娘は去り、後で陰謀に気付くのだけれど、王達の前で、騙された自分の愚かさのせいで馬が死んだ、と、やはり嘘はつかず、

自分の卑しさと彼の高潔さを認めるその娘を、やはり愛している、と許して結ばれる、という内容で、まあそもそも、唯一の治癒方法が馬の心臓?というのを、何を根拠に?と、疑いもせず真に受けるというのも変すぎで、

一旦は卑劣な娘、と侮りつつも、親しい馬を殺させるという状況に平気で仕向けた娘をあっさり許してハッピーエンド?というのも、まあお伽噺、ではあるけれど今一解せず。

特典映像のインタビューで、オスロ監督はこの話について、

>善人の私には考え付かない物語で、いかにも憎むべき王女、私が思いつかない話だからこそ興味をひかれる、とのことで、

元にしたチベットの話ほど耐え難い結末ではない、悪ではなく善が死に、厳しい話だけれど、一つの勝利も語られ、それは嘘をつかない若者の勝利であり、

もう一つ大切なのは許すことで、その術を知ってるから呪いを解くことができ、その技術は車の運転のように役立つ<

などと語ってて、どうもこのルーツのチベットの話はもっとシビアで、それを多少なりともソフトに脚色したようではあるのだけれど。

苦しむ若者のため自ら死を選ぶ”善”の馬メロンギは、フランス語版ではオスロ監督自身が吹き込んだバージョンをそのまま使用したそうで、日本語吹き替え役が西島秀俊。


お話的に好きだったのは最初の「狼男」で、騎士の青年が、自分の花嫁候補の姉妹の内、誤解で獄中の自分を救ってくれたと思った姉の方を選んで婚約するけれど、

姉は実は彼を愛してはおらず、月夜の晩に狼に変身する、と秘密を打ち明け目の前で狼にの変身した彼を毛嫌い、

彼が姉を選び傷心の妹は、その狼に熊から襲われたところを助けられ、その青年とは知らずに、獄中の彼を救ったのは自分だと打ち明け、青年は真実を知って、

姉が井戸に捨てた、人間に戻るための首輪も妹が拾ってきて、無事人間に戻った彼は、姉と決別、姉の方も、狼になる男なんて、と嫌悪するけれど、

妹はそれでも彼を愛する、と宣言して、こちらの方は、まあ勧善懲悪のまともなハッピーエンド。この話も、劇中、狼になってた青年が妹を背に乗せて歩く月夜の森、湖など映像もなかなか綺麗。


その他、面白かったのは「タムタム少年」。アフリカの村で、太鼓大好き少年タムタムが、その太鼓好きを周囲の大人達から疎んじられていたけれど、

魔法の太鼓を持つ達人らしき老人から手ほどきを受け、彼が太鼓を叩けば周囲の人々が踊り出す、という域になって、

瀕死の王を蘇らしたり、村に攻めてきた相手軍を躍らして追っ払ったり、英雄になる、という、彼の太鼓で人々が踊り出す様など、コミカルで小気味いいコンパクトさ。


その他「ティ・ジャンと・・」では冒頭のカリブの島の色彩豊かな自然の明るさ、「運命の都・・」では、実際神への生贄の風習が盛んだったらしいアステカがモデルらしいけれど、

巨竜のような守り神を殺して娘を救い、いわば洗脳されている民衆に、労働と祭りの必要を説いた青年の怖れ知らずの勇気、

最後の「鹿になった・・」では、凶暴な魔術師の婚約者から、恋人を救い出したものの、詞かにされていまった彼女を元に戻すため、青年が相談役の男と訪れる、柔らかいブルー色調の森、光が飛び交うあでやかな”愛撫の妖精”の宮殿、

また実は鹿でなく、カラスにされていて、気付いてもらえず彼らに付いていってた娘が、娘を救うための旅を決意した青年に撫でられてめでたく元の姿に戻ったり、というハッピーエンドで締め、なのも後味良く。


そういう所で、久方の独特のオセロ影絵アニメ、とにかくシンプルな黒のシルエット造形+際立つ色彩の美しさの映像美堪能、

特典映像でオスロ監督が語ってた中で、(この作品を)見た後で、見る前より寛大で気楽になれればいい、というのもちょっと印象的で、何だかその言葉によって味わいが増したような、という気もするこの作品でした。

関連サイト:夜のとばりの物語 公式サイトAmazon 「夜のとばりの物語」
関連記事:プリンス&プリンセス(’99)(’04)キリクと魔女2(’05)アズールとアスマール(’06)

マナに抱かれて(’03)トニー滝谷(’04)カナリア(’04)さよならみどりちゃん(’04)メゾン・ド・ヒミコ(’05)好きだ、(’05)神童(’06)春、バーニーズで(’06)風立ちぬ(’13)<1>


  
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by MIEKOMISSLIM | 2015-05-27 02:45 | 洋画 | Trackback | Comments(0)


新しい靴を買わなくちゃ(’12)

久方のDVD鑑賞2作目、先日の「アナ雪」に続き、やはり未見だった「新しい靴を買わなくちゃ」を見ました。


これは「ハルフウェイ」と同じ監督北川悦吏子&プロデュース岩井俊二のタッグ作、ということと、「Love Letter」以来の岩井監督&ヒロイン中山美穂コラボ作、舞台がパリのラブストーリー、とのことで、気にはなっていた作品。

また、この音楽担当はが坂本龍一だった、というのは今にして知った次第。


a0116217_20315732.jpgパリで一人暮らしのヒロイン勅使河原アオイ(中山)と、偶然出会った日本から来たカメラマン八神千(向井理)が過ごした3日間の出来事、という物語。<(C)キングレコード→>

映画での中山美穂の姿も私は久方、冒頭登場した時には正直、巷で折に言われるような”劣化”というのは失礼だけど、やっぱり歳はとったかも、という印象ではあったけれど、

さすがに10年程になるのか、私生活で結婚後のパリ在住歴で、流暢なフランス語、一回り近い年下になる向井理演じる青年をナビゲートして迷子状態から救う、現地の年上女性らしいリード面も見せつつ、

泥酔状態になってしまって、送られ、家に招き入れる成り行きになった彼に、愛着を持ちようになって、辛い過去も打ち明けたり、自然に接近しつつも、

相手はすぐに日本に帰る身、引き留められはしない、という切なさのある役柄を、今のこの人なりにキュートにこなしてたのでは、という感じ。

近年離婚報道もあったけれど、やはり「Love Letter」の頃からは、私生活でも色々経て、パリ在住歴も含めて、今のこの人での大人版岩井色作品、と思えばちょっと感慨も。

      
5/25追記:まあ不自然さといえば、出会ったばかりの旅人青年に、異国のラフ感覚+同じ日本人愛着、というのもあるかもしれないけれど「勅使河原だと呼びにくいから、アオイで」などというのとか、思えばちょっとあざとい?感じもしたり。

元々日本で美大を出て、単身パリに来て画廊で働いていて、フランス人画家と結婚・離婚、仕事はあるけれど、1人暮らし、という境遇にしては、

パリの割と中心地らしき所で、結構な広さの家に住んでて、というのもやや?で、別れた時に子供が出来ていてその子を産んでシングルマザーに、という経過で、

その画家からそれなりの仕送りなりがあったのか?そこら辺は触れられてなかったけれど、仕事にしても、大手の会社でバリバリキャリアウーマン、というより、

ローカルっぽいフリーぺーパーの編集をボチボチ、という感じで、パリの実際の住宅相場って詳細不明だけれど、どうもあの住居の生活水準が謎?だったり。


そこら辺、突っ込み所はご愛嬌、だけれど、相手の青年、千については、向井理演じるソフト路線、そもそも人当りいいキャラ?にしても、アオイへの接近の仕方が妙にナチュラルすぎ、

パリに来た理由も、妹スズメ(桐谷美玲)の恋愛沙汰でお伴として連れられて、だし、一見優柔不断、でもありながら、一応現実味があったのは、不平不満だらけの日本でのカメラマンの仕事、だけれど、

やはりその仕事を軸足にはしていて、アオイに魅かれる部分はありながらも、刹那的な恋に溺れるわけでなく、日本へ戻る、という意識は通していた、という点。

だからアオイとの距離もそれなりにキープ、彼女の家での2晩目も、ムード的には一線を越えて結ばれても、という流れはありながら、少なくても映像では、彼女を癒すハグどまり。

多分、映像外でそれ以上に進んだ?という印象も、その後の流れからは受けなかったのだけれど。それは、息子を亡くしたというトラウマの告白、辛い過去を持つ彼女のピュアさを感じて、という部分と、

彼女側が強く押せば、そういう関係もあったかもしれないけれど、彼女も、劇中故郷であるらしい東京への望郷の気持ちをちらつかせたりしていながらも、やはりパリの住人、

彼は所詮束の間の旅人、深入りは色んな意味で無理、という意識があったからこそ、揺れる気持ちはありながら、切ないけれど淡い交流で留まった、

所々好意の告白っぽいジョブのようなやり取りもありつつ、大人の中山美穂が演じながらも、結局ある種品のいい純愛物語だった、という点もこの物語への好感点。

坂本龍一音楽は、特にそういう終盤の微妙な揺らめき、切なさ感に寄り添っていたような感じ。


また、同時進行的だったもう一つのサブのラブストーリー、スズメとアーティスト志望のカンゴ(綾野剛)カップル、

こちらは、もしかして「ハルフウェイ」の北乃きいと岡田将生のように、設定だけは決まってて、やり取りは2人任せのアドリブ科白?と思うような節も折にあったのだけれど、後で、この2人のシーンについてはほとんどアドリブだった、と見かけてやっぱり、と納得。

ケジメをつけにパリに乗り込んできて、ストレートに思いをぶつけるスズメ、その思いを受けきれないカンゴ、というナマっぽさもあって、辛いけれどスズメの決断がきっぱりした結末で、これはこれでやはり好感。

桐谷美玲って近年、ニュース番組とかで見かけて、美人だけれど硬派っぽい印象だったけれど、こういう、女の子っぽい役もしてたのだった、と。

メインカップルについては、中山美穂インタビューで、彼女はアドリブは禁じられていた、そうでだけれど、

一つのヤマ場だった2晩目のハグシーンや、終盤、千がタクシーに乗り込む直前の別れのシーン、などは、やはりもしかして、少なくとも向井理はアドリブだったのでは?と思ったり。

またこのメインカップルは、後日談でタイトルの”靴”絡みエピソードで、パリでのアオイとの出会いで一皮むけた千、そして悲しい過去から一歩進むアオイ、というニュアンスもあって、この2人の今後?という含みも少し漂ったり、という仄かな明るい後味。


それと、この作品エキスとして、やはり私は未踏のパリ。観光地ばかりが舞台だった訳ではないけれど、凱旋門、シャンゼリゼ通り、ジャンヌ・ダルクの像、セーヌ川、その河畔のノートルダム寺院、エッフェル塔など、

やはり同じパリ舞台ではあっても洋画とは違う、迷子同様の千がアオイに携帯で案内されて歩く街並み、2人で乗ったセーヌの遊覧船など、日本人目線での、ちょっとした観光気分味わい、という趣も。

家並みが低いから何処からでも見えるエッフェル塔が、心の拠り所、というようなアオイの言葉もあって、

なるほど、ビルだらけの東京では、東京タワーやスカイツリーなんて、そういう訳にはいかないはず、と、改めて低い街並みのパリのエレガントさ、を思ったり。


あと目に残ったのは、撮影自体は岩井監督自身ではないのだろうけれど、折々の”逆光”シーン。ああ久方の岩井(関連)作品、という気がして懐かしかったり。


そういう所で、「ハルフウェイ」の北川&岩井色を思えば、こういう合う種のラフさ、というのも路線かもしれないけど、

近年の中山起用作品、としては、息子を亡くした悲しみを切々と語るアオイ、というのは、一瞬、最近離婚して一人息子の親権は元夫、という中山美穂、ということも重なったりして、やはりこの人も色々経てきての、こういう役柄、とも思ったり。

でもまあ全般として、思ったより何というか、可愛らしく頬笑ましい、パリ舞台ラブストーリーでした。

関連サイト:Amazon 「新しい靴を買わなくちゃ」象のロケット 「新しい靴を買わなくちゃ」
関連記事:ハルフウェイ(’09)市川崑物語(’06)虹の女神/Rainbow Song(’06)ニューヨーク、アイラブユー(’09)中山美穂ハナミズキ(’10)BECK(’10)NANA(’05)

プレミアム10 YMOからHASへ坂本龍一×役所広司~世界が求める日本のカタチ~シルク(’07)SONGS 坂本龍一子猫物語(’86)



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by MIEKOMISSLIM | 2015-05-24 00:45 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)


アナと雪の女王(’13)

先日から久方にDVDレンタルの機会、遅ればせながら、どういうものだろう、とずっと気にはなっていた「アナと雪の女王」を見ました。


再生し始めて、本編で最初出てきた音声は日本語版、やはり英語版+字幕の方で見たくて色々操作してみても、どうも切り替えがうまく行かず、

まあ色々話題になってた神田沙也加+松たか子の吹き替えと歌を聞いておいても、と思い直して、字幕は操作出来たので英語の方にして、鑑賞。

見終わった語、メニューボタンでDVDのメニュー欄で音声が切り替えられると判って、再度英語版+日本語字幕で鑑賞、そしてもう一度日本語+英語字幕で、結局3度。


そういえば姉妹の話、とは聞いてたのだけれど、両親に先立たれてしまう、アナがアレンデールという一国の王女、エルサが女王になる姉妹、とは知らず、

序盤の姉妹の運命を左右したアクシデント~ラスト大団円まで、姉妹間の感情の揺れ動き、またラブストーリー、雪に閉ざされた国の成り行き、などなかなかずっと目を離せない展開。

そしてやはりスパイスは、さすがに久方に見たディズニーのミュージカルアニメ、折々に登場人物が自分の心情を歌い上げるシーンの数々で、

一番インパクト、といえばやはり例のレリゴー、「Let It Go」♪ありのままで~で、これって自由への賛歌っぽい印象だったけれど、終盤ヤマ場で、ではなくて、

ああいう風に一人冬山に身を潜めたエルサ(イディナ・メンデル/松たか子)が自分を解き放つ、いわば孤独な開き直り、的な状況での熱唱だった、というのはやや意外。

最初に聞いたのが日本語版の松たか子の方のだったけれど、思えばこの人の曲で、これまでこういう熱唱タイプ曲ってどうも覚えなく、声優と共に新境地だったのかも。

    

    


次にインパクトは、エルサの戴冠式の日に、城が解放され社交の場に出られる喜びを歌うあな(クリスティン・ベル/神田沙也加)の「生まれてはじめて」で、

これも初めに聞いたのは神田沙也加版だけれど、城~街路、港へと歌い踊るアナの伸びやかな躍動感にフィット、色々困難に出会う前、アナの幸福感、というのが一番溢れていた明るいシーン、

    

    

神田沙也加の声優振り自体、というのも何だかあけすけなアナのキャラに似合ってた、という感じ。


それと、エルサが作ったひょうきんな雪だるまオラフ(ジョジュ・ギャッド/ピエール瀧)が、夏への憧れを歌うシーン、映像も雪だるま+夏の海、というミスマッチをコミカルに表現しててユニーク。

    

    


また、アナが幾度か、心を閉ざしてしまったエルサの部屋のドアの前で歌う「雪だるま作ろう」も、何だか後になって耳に残る一つ。

    

   

この曲でちょっと引っ掛かったのは、最初幼いアナが歌う一番の最後が、日本語版の歌詞では「雪だるま作ろう 大きな雪だるま」だけれど、英語字幕では「It doesn't have to be a snowman」(それは雪だるまでなくてもいい)とあって?で、

英語版音声でも確かにそう歌ってるようで、日本語字幕で「別のものでも」と出るのだけれど、つまり雪だるま作りを誘ってはいるけれど、とにかく昔のように仲良く雪遊びをしたい、一緒に時を過ごしたいのだ、というアナの率直な気持ちで、

日本語版の歌詞で曲に合うようにこのニュアンスを入れるのが難しかったのかも、という微妙な所だったり。


5/21追記:そもそも「雪の女王」にインスパイアされた、というこの物語だけれど、エルサが自分の持つ魔力が妹を傷つけたことから、両親もその力を封印して人目から隠すように対応、

本人もその力に罪悪感を抱いて、アナとも距離を置くようになってしまい、戴冠式の日にその力を露呈してしまったことで、宮殿を追われるように出て山中に自分の”城”を築いて「雪の女王」になるのだけれど、

「雪の女王」物語の邪悪イメージの裏側の孤独感、自分の力への”怖れ”がエルサをかたくなにさせ、無意識にも街を凍らせ、訪ねてきたアナを再度傷つけてしまう、という、

”悪役”というには、たまたま特殊な力を持って生まれた少女が追いつめられた末そういう運命を辿る、といったナイーブな「雪の女王」設定。


また、その魔力をとかしたのは、我が身顧みず、ハンス(サンティノ・フォンタナ/津田英佑)の剣からエルサを救おうとしたアナの勇気ある無償の愛情で、その結果アナ自身も救われた、というのは、

やはり元祖「雪の女王」で、ヒロインの少女の勇気、愛情が女王の宮殿に囚われた少年を救う、という筋をベースにしてるのかもしれないけれど、

中盤、エルサの魔力に命の危機が迫るアナを救うのは、彼女と恋に落ちたかに見えたハンス、そしてクリストフ(ジョナサン・原慎一郎)か、という恋愛絡み、の流れだったのが、

瀕死の自分を救いに来たクリストフの姿を目にしながらも、あえてそれを振り払うようにエルサを救う方を選んだアナの選択、いくら確執があったにしろ、無償の姉妹愛だった、というのが特徴というか印象的。

またそれによって”愛”の感触を得たエルサも心を開き、魔力を王国のために使う、「雪の女王」から幸福な「巷の女王」に、という大団円で後味も和やか。


登場人物もバラエティがあって、ジブリものではないけれど、自分の持つ力から殻に籠っていた状況から、まず「雪の女王」へと、自らその力を解き放つエルサの展開、

そういう彼女の孤独を救うアナの、孤独感や、盛り上がったり裏切られたり、誠意を感じたりの恋心にも揺れながらの躍動感、勇気、など対照的なキャラのWヒロイン姉妹を軸に、

アナの恋の相手役として、最初ソフトな物腰で会うなり盛り上がったハンス王子と、最初は武骨な態度の貧しい氷商人クリストフ、というやはり対照的な2人、

クリストフの相棒のトナカイのスヴェン、ひょうきんな雪だるまオラフ、モンスター的キャラのエルサが作った氷の番人マシュマロウ(ポール・ブリッグス)、

雪山の不思議な店の店主オーケン(クリス・ウイリアムズ/北川勝博)、野心をちらつかせる貿易相手国のウェーゼルトン公爵(アラン・テュディック/多田野曜平)、

普段は石の姿の不思議な生き物のトロール達、クリストフの仲間で、その一人はエルサがアナにかけた魔力の処方を知るようで、序盤王と王女が訪ねていったり、中盤でもアドバイスしたり、という、

人物・ファンタジーキャラミックスで、善意的なキャラ、悪役、傍観的なキャラなど、バランスもなかなか。

監督はクリス・バックとジェニファー・リー、クリス・バックは見た中ではサーフィンものアニメ「サーフズ・アップ」の監督、

ジェニファー・リーは初耳だったけれど、序盤で国王(モーリス・ラマルシェ/根本泰彦)と共に消えたけれど、姉妹の母の女王の声優(日本語は最所美咲)もしていたようで。


「風立ちぬ」がアカデミー賞でノミネートされながらも、オスカーはこの作品に行った、というのが正直残念には思っていて、

作風的に比べてどちらがどう、というものではないかもしれないけれど、実際今回こちらをやっと見てみて思ったのは、

やはり根本のテーマ的にはこちらの方がはっきりしている、ということと、全編通してのメリハリ感としても、こちらになっても仕方なかったかも、とまあ納得、というか。

DVDでではあったけれど、思ったよりもトータル的に見応え感、という久方のディズニーファンタジーでした。

関連サイト:Amazon 「アナと雪の女王」象のロケット 「アナと雪の女王」
関連記事:サーフズ・アップ(’07)雪の女王<新訳版>/鉛の兵隊(’57)魔法にかけられて(’07)

フィルム空の鏡(’97)THE 有頂天ホテル(’06)HERO(’07)クリスマスの約束(’06)クリスマスの約束(’07)クリスマスの約束(’08)クリスマスの約束(’09)クリスマスの約束(’10)クリスマスの約束(’11)クリスマスの約束(’12)クリスマスの約束(’13)クリスマスの約束(’14)ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~(’09)名曲のかたわらに サハシあり~ギタリスト佐橋佳幸・30周年記念公演~ ALWAYS 三丁目の夕日(’05)日本沈没(’06)ゆれる(’06)虹の女神(’06)ユメ十夜(’07)(「市川崑物語」スレッドの10)、ALWAYS 続・三丁目の夕日(’07)僕達急行 A列車で行こう(’12)ー追悼・森田芳光監督ー

  

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by MIEKOMISSLIM | 2015-05-20 00:50 | 洋画 | Trackback(1) | Comments(0)


トスカーナの贋作(’10)

先日「ナイト・オン・ザ・プラネット」を図書館の映画会で見て、同じくタクシー舞台のキアロスタミ作品「10話」を連想したのもあって、新たなキアロスタミ作品が未見だった、と思い出してDVDで見終えました。

同監督作は、私は昨年秋やはり図書館で「友だちのうちはどこ?」を、久し振りに見直したたのが最新。この「トスカーナ・・」は、イタリアで撮影の伊・仏共同作品、俳優陣も、ジュリエット・ビノシュをヒロインに抜擢、

イラン以外での、またグローバルに著名俳優起用のキアロスタミ作品、というのは初めて。
                                 (C)(株)パイオニアLDC
a0116217_1502252.jpg冒頭、英国人作家ジェームズ(ウィリアム・シメル)による著作のテーマ、”贋作”についての講演、から始まって、彼とイタリアで画廊を経営するフランス人女性(ビノシュ)との間の、さり気ない会話の中の芸術論、とか、知的モードから、いつの間にか展開する擬似夫婦~ロマンスモード。

同監督作の恋愛もの、と言えば、マイベストキアロスタミ作品に挙げてた「オリーブの林をぬけて」があったけれど、あれは一方的に青年が思慕を抱いて少女を追う、という展開で、純愛、ではあるけれど、ちょっとメルヘン的な印象もあって、

今回のように、こういう大人同士が向き合って、というラブストーリーも、思えば初めて。


後味は、まあ微妙。その日初めて会った男女が、カフェで夫婦に間違われたのをきっかけに、本来互いの配偶者とするべき議論、率直な愚痴、互いの感覚の違いの主張、理解を示そうとしたり、許したりというやり取りを真剣に展開、

これまで素人を多く起用したり、自ら地震現場に赴く様子を作品にしたり、虚構の中に”現実”を取り入れてた作風、からしたら、今回は、虚構の中に”登場人物達の現実の心情”を取り入れた、という所なのか、

本来向かい合うべきそれぞれの長年の配偶者、でなく、会ったばかり相手にそういう心情を吐露、喧嘩したり、仄かな切なさはあるけれど、虚偽、「贋作」の愛、関わり、というか。


名も出なかったヒロインには息子(アドリアン・モア)がいて、夫は登場しなかったけれど、彼女の話からしたら、結婚15年、多分未亡人やシングルマザーでなく、劇中での科白のように、多忙で留守がちな夫の妻、のようで、

ジェームズの方も、家族構成は全く不明だけれど、彼女の愚痴への対応、夫としての言い分、などからして、自身多忙で留守がちな夫、またはかつてそういう夫だった、ようで。

互いの配偶者とは話題にしにくいかもしれない、芸術的な部分含めて、率直に話が出来たり、というような部分も、2人を仮夫婦モードにさせた一面かもしれないけれど、やはりそういう”かりそめの親密さ”への傾斜度は、女性の方が強く、男性は一時の交流、で終えようとする感触。

ラストは、その後ジェームズがどうするのか?曖昧。でも何だかやはり、その後どうなるにしても、所詮不倫話、と言ってしまうには、2人の背景とか状況も漠然としてて、中年期の大人が抱える孤独の哀愁もあったけれど、そう真摯な心に染みるラブストーリー、とも感じられず。


ジェームズが、贋作擁護論で、本物の絵、と言っても所詮はモデルの美女の複製じゃないか、真の本物は彼女だ、のようなことを言ってたのが、ちょっと頭に残ってるけれど、

本物の絵と贋作の差、というのは、どれだけその画家が自分なりに、モデルの姿や風景をキャンバスに描こうとしたのか、何を描き取ろうとしたのか、という情熱、対象と真摯に向き合った時間の積み重ね、ではないかと思ったりするし、

いくら見た目精巧な贋作でも、そういう作品自体が持つ重み、という点については本物にかなわないのでは、と。

でもジェームズはそういう贋作擁護者、だからこそ、私生活でも、苦楽の時間を共に重ねたはずの、妻以外の女性とその場で仮夫婦モードにもなってしまえる、という単純な図式だけではないかもしれない、インテリで、愛情の示し方に不器用な部分もあるかもしれないけれど、余り彼に好感は持てず。

このジェームズ役のウィリアム・シメルは、これが映画初出演のオペラ歌手、だそうだけれど、第一印象は、ビノシュが「綴り字のシーズン」で共演してた、リチャード・ギアのような髪形、

それはさておき、+目鼻立ちが、先日終わった昼ドラ「鈴子の恋」で不倫沙汰、浮気を繰り返してた柳枝役、神保悟志に似てる、と思ったのも一因かも。


そもそも、確かにカフェで女主人に夫婦と間違われて、というシーンはあったけれど、その後店を出た彼らが仮夫婦モードに突入したのが、どうも唐突?に思えたのだけれど、

特典映像のメイキングの中で、ビノシュがストーリーのターニングポイント、としてそのカフェで、彼女が携帯電話を終えて戻ってきた彼に、間違われた旨を告げ、彼の仮夫婦モードへの曖昧な反応に、激しく動揺を見せた、というシーンを挙げて、

後で見て、その部分がカットされてたのにも驚いた、と述べてて、そういうシーンを補ってみたら、彼女が垣間見せた内面の欲求に、少しテンポが遅れて彼が応じた、という流れに納得。

そういう要の判り易い部分をあえて省いたのも、キアロスタミ方式かとも思ったけれど、まず擬似夫婦モードを求めたのは彼女、ジェームズがそれに応じていった、という形、だったと。


やはり特典映像の一昨年の東京フィルメックスでの同監督と観客との質疑応答で、男性からの質問が相次ぎ、同監督がおっとりと女性からの質問を希望、司会者が当てた着物の女性が、来場してた映画スクリプター野上照代さんで、

質問、というより、この作品への賛美や、同監督が女性をこういう風に複雑に描く人とは思ってなかった、のようなコメント。

それに対する同監督の、笑いを誘ってた反応答コメントは通訳の人の声が聞き取れず?だったけれど、思えば同監督作品で、そういう内面含めた大人の女性描写、を見たのも初。

メイキングで、そもそもこの作品は、キアロスタミ監督がビノシュを自宅に招いた時にした、自分の体験に基づいた話で、話し終えてから、映画に似合う話、と思ってビノシュを念頭に脚本に取り掛かった、そうで、

俳優に合わせて科白も変えていく独特な撮影の仕方の中で、彼女のキャリア、資質を見込んで、そういう女性描写を委ねた、という部分も結構あったのでは、と。

正直この女性の心情には寄り添い難かったけれど、ビノシュは、自分の中の”素”の部分含めいつになく伸び伸び演じてるようでもあり、キアロスタミ作品でのビノシュって、こんな感じなんだ、と、そういう意味では見応え感。

変化の多い進行に、彼女は、相手がウィリアムだからこそ出来た、とも語っていて、そういう面では、演技経験の全くなかった彼だからこその、キアロスタミ方式での適性、というのもあったのかも。

2人の会話は英語とフランス語混じり、どうも感情が高まる所はフランス語になる傾向な気もしたけれど、2人は、それに+イタリア語科白もこなしてて、思えば西欧の言語飛び交う初のキアロスタミ作品、でもあったり。


あと、2人がトスカーナの郊外へ車で出掛ける道のシーンはそう長くなく、カーブがあっても緩やか、そう曲がりくねってもおらず、やはりこれは「ジグザグ4部作」目、とも言えないかもしれないけれど、糸杉がポツポツと両側に立ち並び、イラン郊外も彷彿するような美しい田園風景。

メイン舞台のルチニャーノもこじんまりした街で、石畳の道、庭、シックなカフェ、やはり地元の人を使ったらしい街でのシーンとか、そういう背景のキアロスタミ作品色、というのはイランを離れても漂ってた感じ。


4/18追記:東京フィルメックス映像で、同監督は、イタリアでの現地人スタッフとの仕事、地元の協力、撮影の好感触、日本人観客について、繊細さ、他国でのように携帯をいじりながらの鑑賞は見受けられなかった礼儀の良さ、など褒めてたり、

日本での製作意向について尋ねられて、友人のアミール・ナデリ監督が日本での作品の撮影を終え、その話を聞いて、自分も出来そうな気がした、ような旨を回答。

イラン人監督による日本舞台作品、というのは初耳で、これは昨年末公開になってた西島秀俊や常盤貴子らが出演の「CUT」というナデリ作品のことだったようで、キアロスタミ監督も、すでに昨年、日本での新作を撮り終えてた、というニュースを先程発見してちょっと驚き。

「Like Someone In Love(ライク・サムワン・イン・ラブ)」という作品で、60代のインテリi老紳士と女子大生の年の差40才のラブストーリー、老紳士は一般公募で選ばれて、ヒロインは初耳女優だけれど高橋臨、その他加瀬亮、奥野匡、でんでんなど出演、

この夏公開予定、とのことで、またしても男性側はインテリタイプのようで、私はやはり明らかな不倫ものでないことを願いたいけれど、これはちょっと注目。


そういう所で、後味は微妙でしたけれど、キアロスタミ作品として、初のイラン以外他国でイタリア舞台、英・フランス・イタリア語飛び交う、また初の大人のラブストーリー、

ストーリーに余白を残す部分、こじんまりした街の背景とか、これまでの風味漂っている部分あって、特にメジャー女優ビノシュとのコラボの妙、という見応え感は残った感じでした。

関連サイト:Amazon 「トスカーナの贋作」エキサイトニュース 巨匠アッバス・キアロスタミ監督が日本で撮影した新作、ネットで一般に製作費募り撮影現場に招待象のロケット 「トスカーナの贋作」
関連記事:「KYOKO」&イランはじめエスニック映画<2>(16:友だちのうちはどこ?(’87)、17:そして人生はつづく(’92)、18:オリーブの林をぬけて(’94)、20:ホームワーク(’89))、同スレッド<3>(38:トラベラー(’74)、39:桜桃の味(’99)、42:風が吹くまま(’99)、43:ABCアフリカ(’01)、44:10話(’02)、45:クローズ・アップ(’90))、明日へのチケット(’05)友だちのうちはどこ?(’87)前ブログのイラン映画感想記事一覧綴り字のシーズン(’05)レッド・バルーン(’07)夏時間の庭(’08)
<スレッドファイルリンク(ここでは「KYOKO&イランはじめエスニック映画」<2>、同スレッド<3>、「レッドバルーン」)は開かない場合あるようです。>


   
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by MIEKOMISSLIM | 2012-04-17 23:59 | 洋画 | Trackback(5) | Comments(0)


歓喜の歌(’08)

公開時、気になりつつ未見のままだった作品、先日「SONGS」に出ていた由紀さおりも出演していた、ということもあってDVDで見ました。大晦日の文化会館で、ダブルブッキングになってしまった2つのママさんコーラスグループを巡る、音楽人情物語。

先日、オペラコンサートで聞いた曲をきっかけに、母が昔入ってた地元の合唱団の演奏会テープを聞いた、というのもあって、そういう頃の事、店の仕事や家事に忙しくても、合唱を張り合いにしてたり、というのを想像してちょっと重なったりもして、という所もあったり、

実力派由紀さおり含むコーラス陣の、色んな曲が散りばめられて、元は立川志の輔の落語から、というストーリー展開も、大まかに都合良く、という所はありましたけれど、割とテンポ良く人情テイスト+合唱で楽しめた感じ。

これは松岡錠司監督作品だったのでしたが、松岡作品は「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」以来でしたけれど、思えば冒頭金魚のアップ、これは後で小道具として絡んできたり、

そして終盤、コーラス員大田(藤田弓子)の店の客として登場の筒井道隆は、「バタアシ金魚」で高岡早紀の相手役、松岡監督は「バタアシ・・」の監督だった、と改めて。
            
           


注目の由紀さおりは、奥様グループ「みたまレディースコーラス」リーダー松尾役、未亡人でスーパー経営者でもあって、たおやかな貫禄あって、

この人初め6名で、まもなく亡くなってしまう少女の病室で歌った「竹田の子守唄」が、劇中ステージ曲外の中で結構印象的だったですが、歌唱面でも持ち味発揮、先日の「家族ゲーム」での怪演母ぶりよりは、やはりこちらの方がしっくりきた後味。

姉の安田祥子も、このコーラスグループ団員で、出てたのだった、というのは後で知った次第。


3/6追記:主演小林薫は、どちらかと言えば渋系のイメージだったけれど、今回市役所から文化会館に左遷されてきた主任飯塚役、序盤、いかにも卑小そうな公務員の物腰で、情けないコミカルぶりが意外とフィット。

この飯塚の不注意でのダブルブッキング、事なかれ主義では収まりそうにもない、両グループの憤り、勢い、もあったけれど、

夫が倒れ、女手一つで2つの店を切り盛りする大田が見せた、出前ミスを償う”ギョーザ”の誠意、+手伝うその娘(朝倉あき)のけなげさ、に触発されて、変化を見せ始め、事の収拾に体当たり奔走、

見放されつつあった妻(浅田美代子)、娘(於保佐代子)の信頼も何とか戻ってきて、という市井の一角の流れで、外国人ホステスに夢中になって飲み屋の勘定山積み問題、というのも、何だか笑えない情けなさの極み、だったけれど、終わってみれば割とほのぼの好感。


ハイソな由紀さおりグループに対して、ワーキングマザー軍団らしい「みたま町コーラスガールズ」リーダー五十嵐役の安田成美は、私はリメイク「時かけ・・」の母役以来だったけれど、今回の方がナチュラルな嫌味なさの味が出てたかと。

思えばこの人も前に「風の谷のナウシカ」テーマ曲を歌ってたりして、今回ステージでは指揮者側、指揮しながら歌ってはいつつ、歌声は特にクローズアップされてなかったけれど、なかなか由紀さおりに押されない個性、存在感。

渡辺美佐子演じる老女の訪問介護の仕事も明るくしてたり、落語家を目指す夢見がちな夫(光石研)、息子へのほんわりした主婦ぶりも。

普段物腰はソフトだけれど、市長夫人(片桐はいり)もメンバーにいる相手グループの威厳に、飯塚も押されかかったピンチの時、あの、今年だけ一緒に歌いません?と切り出して見せる、さり気ない大胆さ、芯の強さ、とか、

飯塚の悩み相談に乗って、にっこり市役所の金魚強奪案、を提案したり、という結果オーライ、漫画的な”飛んだ”一面も見せたけれど、飯塚のために、やはりいい味だった警備員役、笹野高史の注意を引きつける時の2人のやり取りは、絶妙にコミカルな、ちょっとした見ものだったり。


その他脇役陣で印象的だったのは、「・・ガールズ」の一員でどうやらエースらしい、相崎役の平澤由美。松尾のスーパーの店員でもあって、まぐろ売り出しの時の威勢も良かったけれど、

「みたまレディース・・」が「・・ガールズ」の歌を審査、の時、この人の伸びあるサビでのソロ部分が引っ張って、「みたまレディース・・」面々を驚かせ、合同開催への道が開けた節目、でもあって、劇中の一番インパクトは、この合唱シーン。

この時の曲が、聞き覚えはあったものの、題名不明。母の所に届け物のついでに、このメロディを口ずさんで知ってるか聞いてみたら、これは日本語で歌ったこともあるそうで、馴染みはあったけれど、題名はとっさには出ず、

歌の本を取り出してきて、目次の曲名と出だしの歌詞を見ているうちに、これだ、と発見、アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」だったと判明。

           

この平澤由美は、私は初見、他の映画出演歴は見かけないけれど、ミュージカル舞台によく出たりライブ活動もしてるようで。


まあフィクション、ではあるけれど、当初は一歩も引かなかった両グループが、他方を押しのけて自分達だけが公演しても、角が立ちそう、とか何か後味悪いわねえ、というような感情、

そこから飯塚の粘り強い仲立ちもあって、同じ合唱、という土俵で、互いの背景は違っても「レディース・・が「・・ガールズ」の実力も認めて、我欲だけの世知辛さから歩み寄りへ、という過程も後味良かった。


今日母が食事に来た時に、ちょっと話を説明して、その「ロンドン・・」シーンや、他のハイライト合唱シーンを再生して見せたら、ラストステージでの、題名不明だった日本の威勢のいい曲は、美空ひばりの「お祭りマンボ」だと知ってて、これも母のお陰で曲名判明。

「翼をください」「竹田の子守唄」などの赤い鳥曲も、合唱で歌ったことはないそうけれど曲は一応知ってて、ラストの「歓喜の歌」は、覚えたかったけれど、自分が辞めた後で合唱団がやり始めた曲だった、とか。

時折劇中の歌に合わせて小声で歌ってたり、コーラスは、実際やってたら、色々と(問題も)あるけどなあ、といいながらもやはり懐かしげ。


終盤、本番会場から、服のリフォーム仕事のミスのトラブルを優先して店に戻った大田、というのも、”ギョーザ”エピソードと重なるプロ意識、誠意、と思ったけれど、

飯塚と加藤の、彼女の連れ戻し方、というのも、とにかく行かないとだめなんです!という漫画的強引さ。その代わり、店での飯塚の、筒井道隆演じる客の服のリフォーム対応も、援助に現れた妻と和解、というオチがついたけれど、ぬけぬけした詭弁だらけで、苦笑。

そういうエピソードと同時進行しながら、この人情ストーリーのハイライトステージ、聞き馴染みメロディで始まった合同ラスト曲、スタンダードの「歓喜の歌」で、気持ちよく締まった、という感じ。


          

でも、さらに感慨だったのは、エンドロールで不意打ちのように流れたテーマ曲、男性ボーカルでの「あの鐘を鳴らすのはあなた」。誰なのかと思ったら、先週「SONGS」に登場してたクレイジー・ケン・バンドだったのでしたが、

何だかこの物語テイストにマッチしてて、これがママさんコーラス曲を押しのけて、私のこの作品での一番インパクト曲に。


そういう所で、合唱パフォーマンス、由紀さおりや平澤由美などの歌声に、公私共に情けない一公務員の悲喜こもごもの奮闘ぶり、2コーラスグループの歩み寄り、という人情テイスト入り混じって、なかなか味わいの作品でした。

関連サイト:Amazon 「歓喜の歌」象のロケット 「歓喜の歌」
関連記事:東京タワー オカンとボクと、時々オトン(’07)連弾(’07)SONGS 由紀さおり家族ゲーム(’83)-追悼・森田芳光監督ーゲド戦記(’06)紙屋悦子の青春(’06)春との旅(’10)時をかける少女(’10)監督ばんざい!(’07)天国の本屋ー恋火(’04)理由(’04)転校生 さよならあなた(’07)22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語(’07)その日のまえに(’08)愛の流刑地(’07)佐賀のがばいばあちゃん(’06)寝ずの番(’06)地下鉄(メトロ)に乗って(’06)武士の一分(’06)犬と私の10の約束(’08)ハッピーフライト(’08)つぐみ(’90)ー追悼・市川準監督ーRAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ(’11)ありがとう(’06)それでもボクはやってない(’07)めがね(’07)Little DJ小さな恋の物語(’07)Yuming Films(’07)星になった少年(’05)ドルフィンブルーフジ、もう一度宙へ(’07)のど自慢(’99)恋に唄えば(’02)サヨナラCOLOR(’05)かもめ食堂(’05)オペラガラコンサート~セラータ・ムジカーレ Tokyo Play Opera御坊混声合唱団第5回・第7回定期演奏会(’81)(’84)
阿久悠氏SONGS 山本潤子
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by MIEKOMISSLIM | 2012-03-05 21:21 | 邦画 | Trackback(4) | Comments(0)


家族ゲーム(’83)-追悼・森田芳光監督ー

先日、近くの図書館で「家族ゲーム」上映会があって、サイトでのその短い紹介文で、昨年末森田芳光監督が亡くなってた、と初めて知りました。当時、知名度からしても割と報道されてたはずですけれど、どうも耳に入っておらず。

これまで森田作品で見ていたのは、「メイン・テーマ」「キッチン」「愛と平成の色男」「(ハル)」「失楽園」「阿修羅のごとく」「海猫」「間宮兄弟」。ベスト3を選ぶなら、やはり1「キッチン」、2「(ハル)」、3「メイン・テーマ」という所ですが、

「家族・・」は未見で、その上映会にも都合合わず行けなかったので、遅ればせながら追悼鑑賞、とも思ってこれをDVDで見ました。


原作は本間洋平の小説、成績の悪い中3生のいる一家に家庭教師がやってきて、繰り広げられる人間ドラマで、森田作品の代表作の1つらしい、ということ、先日「SONGS」に出ていた由紀さおりが出演、などの興味もあったのですが、

どうも、序盤の故松田優作演じる家庭教師吉本の、おちこぼれかけ少年茂之(宮川一朗太)への、いくら問題児、とはいえ、微妙なスキンシップ接近~ビンタ圧制、でちょっと引いて、

松田優作の癖ある役をこなす味、かもしれないけれど、クールでビジネスライクな家庭教師業、の大学7年生役、恋人(阿木燿子)との怪しげな倒錯ぶり私生活、もありつつ、いじめにあってる茂之に、屋上で戦い方を教えたり、のような所だけは唯一人間味、

でも特にラスト、茂之の父(伊丹十三)に、自分の大学をあっさり貶されたのを期に、突如静かにキレて、食卓大混乱、一家への鉄拳?劇、には、コミカルさ通り越して、そのキレ方がどうも不気味で気持悪く、後味も悪く、正直、私はこれを森田追悼鑑賞作、にしたのを後悔。

原作ではこの吉本がどう描かれているのか?、家族のあり方、特に受験生がいる家庭の右往左往、それに絡む家庭教師業、などをシニカルに斬った、意図かもしれないけれど、

そこには、冷笑して鉄拳、ですませるものでもない葛藤、心の機微、真摯な過程もあるはずで、どうもこれをそもそも”人間ドラマ”とは思えず。


まあ、別に松田優作だけでなく、両親の沼田夫妻役伊丹十三、由紀さおりなど特に、皆怪演、という感じ。

故伊丹監督は私が見てた中では「もう頬杖はつかない」「スローなブギにしてくれ」にも出ていて、どういう役だったか、にわかに思い出せないけれど、今回、立場は2人の息子のいるやや多忙、大まかなサラリーマン、でも半熟卵の食べ方、が特に怪印象。

由紀さおりの女優として出演作を見たのは初、この頃女優や司会業もしてたようで、さすがに若い、と思って、やはり何気なく鼻毛の処理をする場面とか、やはり怪印象、だったけれど、

この人は実生活では母ではないはずだけれど、物腰優しげで、何があってもおっとり受け、かつちょっととぼけた味が、なかなかの母ぶり。

それと、茂之の学園生活、幼染みの土屋(土井浩一郎)との因縁の関係もあって、痛々しい場面もあるイジメにあってたり、

年子らしい兄慎一(辻田順一)は、いい成績で上位高に入りながら、勉強に身が入らず、女子生徒に興味が移ったり、絵は上手く好きそうだけれど、

両親はそういうものには気付かず、 サボり出した、という状況だけが気になったり、というような所は割とリアルな気もして、特に兄は怪演めいた所も特になく、まあ等身大だった印象。

そういう所で、由紀さおりの怪演混じった母ぶり、はちょっと見もの、一家が横一列に並ぶ食卓の妙、何故かいつも船でやって来る吉本、その目線での沼田家のマンションの無機的な佇まいや、

少年達の背景のコンビナートの工場地帯のシュールさ、とか目に残る映像はありましたけれど、何分内容の後味悪すぎで、残念ながら「失楽園」を下回る、マイワースト森田作品に。


で、好印象だった森田作品マイベスト3を回顧しておくと、

1、キッチン(’89):「キッチン」は、原作も好きだったよしもとばなな作品の映像化だったけれど、期待を裏切らず。函館舞台にして、原作のあっさりした透明感のような空気、が漂ってて良かった。      

                 (C)(株)角川書店
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2、「(ハル)」(’96):まだインターネットが今のような広がりなかった頃の、ネットを通した純愛で、思えば、言葉の断片が散乱、モラルも節操もあったものでは、という破廉恥さもある現状とは違う、

真っ当な思いが、言葉の繋がりだけでこそ、おずおずと大切に近付きあう、というスピリット、のようなものがあった(気がする)作品。

やはり代表的森田作品、というと、「キッチン」「(ハル)」が挙がって欲しい、という所。

           

3、「メイン・テーマ」(’84):とにかく薬師丸ひろ子のテーマ曲が印象的、ストーリーは記憶おぼろげだけれど、この曲イメージと重なる切なさ、だった印象。財津さんなども出てたのだった、と。

追悼鑑賞としては、どうせならこの作品を見直し、か、上田正樹「悲しい色やね」テーマ曲の未見の「悲しい色やねん」にしたら良かった、とも。

           

そういう所で、「家族・・」は私は駄目でしたけれど、他作品も思い返して、様々な作風作品を撮ってきた人だったのだった、とも改めて。ご冥福をお祈りします。

関連サイト:asahicom 映画監督の森田芳光さん死去Amazon 「家族ゲーム」象のロケット 「家族ゲーム」
関連記事:キッチン(’89)kitchen キッチン(’97)間宮兄弟(’06)あの歌がきこえる「悲しい色やね」SONGS 薬師丸ひろ子/レイモン・ルフェーブルSONGS 薬師丸ひろ子SONGS 南佳孝人間の証明(’77)阿川泰子スローなブギにしてくれ(’81)歌謡曲だよ、人生は(’07)東京兄妹(’95)-追悼・市川準監督ーSONGS 由紀さおり
<「歌謡曲だよ、人生は」はスレッドファイルで、開かない場合あるようです。>


   
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by MIEKOMISSLIM | 2012-02-15 23:55 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)

    

’09年1月末AOL映画掲示板、ブログが終了、気分新たにマイペースで、音楽・芸術鑑賞、ユーミン関連、読書、英検1級対策、グルメ、仕事等含めて書いてます。英検は’11年11月に無事合格達成出来ました!
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