2010年 07月 11日
E.YAZAWA ROCK('09)
監督した増田久雄は、石原軍団にいた映画プロデューサーで、以前にも矢沢ドキュメンタリー「RUN&RUN」のプロデュースを手掛けた人だったのだった、と。
今の本人を追った映像+回顧映像交えて、ダイナミックなステージ模様、また、曲によって、PVのような趣のライブ+映像や、ライブ+練習での歌をミックスした構成、本人の語り、リハーサルの様子等。
冒頭やラスト、中盤で、本人がランニングしたりくつろいでた南の島らしき場所は、後で見た作品サイトでは、南太平洋のミクロネシアでしたが、そういう場所の美しい海や空の自然、渡米した時の映像、等もスパイスで、多彩な味わいでした。
今回新たに思ったのは、ステージでの身のこなしでの、意外な身体の柔軟さ。また改めて、日本人男性シンガーで、この年のなっても、胸をはだけた衣装、またサスペンダー姿が一番似合う、というか違和感ない人では、と。
それと、リハーサル等での、本人自らの演出へのこだわりぶりやリーダーシップ、外人ミュージシャンとのセッションでも、「自分がもう少し上手く英語がしゃべれたら、日本のロック界は変わってた。でも、そう出来たら出来たで、失ったものもあったと思う」等と、冗談交じりに言ってましたが、そう語彙あって流暢という訳でもなくとも、豊かな表情やアクション交えながら自分の意思を伝えて、場を盛り上げるパワー、才、のような所。
歌った曲で印象的だったのは、パワフルな「Oh Yeah」、ステージ上で煙草を手にしての洒脱な「バーボン人生」、横浜国際競技場で途中感極まって歌が止まった「アイ・ラブ・ユー、OK」、本人が、グレイハウンドバスに乗ってる昔の映像バックでの「トラベリング・バス」、そして、スタジオでギター一本で歌ってたり、クルージング映像と共に、の「コバルトの空」、エンドロールでの「時間よ止まれ」等。
また、本人の語りで頭に残ったのは、「自分は欲しいと思ったものは手に入れてきたけど、(誰かを)後ろから殴って、ガサっと、という事はまずなくて、いつも真正面から取ってきた」、
「小学生の頃、生活保護を受けてる生徒は、給食をこっそり裏口からもらわなくちゃいけなくて、冗談じゃない、上に行かなきゃダメだ、と思った」というような、ストレートなハングリー精神のルーツ。「成りあがり」('78)は、内容記憶薄れてて、文庫はありそうと思って本置き場を見てみましたが見当たらず。
また「アイ・ラブ・ユー、OK」の時に、下にテロップだけ流れた、広島から単身上京した時の「岡山から東に行ったこともないのに、冗談だろ、一体何をする気だ」のような車中のあてどない心境、には、何だかキュッとするような感触がしたり。
3年前の「SONGS」で、浅野忠信との対談等でも、季節感を大事にしたい、ような事を語ってましたが、やはり、「矢沢と言えば、真夏と冬だけ、のようなイメージかもしれないけれど、この頃春や秋もいいと思う。ただ走ってきて、夏だけで、ポツンと1人、というのは空しいし、残りの人生は、どれだけ春や秋を持てるか、だと思う」、とか、やや老境、という心情も垣間見えたり。
7/12追記:若い頃の、今回も映像にあった、「俺は天才」と豪語して憚らなかったようなツッパリぶり、に対して、近年の「SONGS」でも、人生先輩格として、若者と語り合ったり、甘過ぎはしないアドバイスをしてる、温みも漂う様子に、やや印象変わってました。
「自分は一般の人には持てないものを得てきたかもしれないけど、一般の人が持ってるものを沢山失ってきたとも言えるし、誰も彼も、そういう風に満足、と思えれば、いいんじゃないか」のような、余裕、ともある種本音、とも取れるようなコメント。
「毎日新聞に、戦争や殺された、ような事が載ってない日はないし、皆、世界はどうしちゃったんだろう、と思ってると思うし、そういう事を歌で告発する人はすればいい。でも自分はそういう事は歌わなくて、やっぱり歌うのは「LOVE」だ」、とか、矢沢のステージを見て、また1年頑張れる、と思ってくれればいい、とか、何もなかった頃からやってきた自分を知ってるから、という、ブレのなさ。
自分は16才の頃、ビートルズにスパーン!と来れたのが良かった、やはり14~16才の頃、何かにスパーンとこれるかどうかで、人生決まってしまう、等とも語ってましたが、最近特に、豊かになった分現実的には、若い層の人生の方向付けも、なかなかつけにくいし、まあスパーンとくる感性自体、育ち難い気はするし、幾ら年をとっても、方向に惑いつつ行くのが大方の中、
やはり、「キャロル」からソロへとロックスター道を走ってきた、一握りの人生。でも華やかに見えても、実際色々とあったかと思うのですが、馴染みの年下のミュージシャンの、「ドアを自分で蹴破って進んできたのって彼位で、すごく感化される」のようなコメントもあって、やはり日本のスーパースター達の中でも、自身叩き上げできた、それでも作って歌う曲に、そういう激しさだけでなく、ロマン、洒脱さ、包容力、繊細さも持つ、稀有な存在、という感が。
最新シングルの「コバルトの空」は、昨年聞いた時、まるで往年の曲のダイナミックさキープで、少し驚いたりもしたのでしたが、今回も最後の方で流れ、また耳に残ったし、エンドロールの締めの南の島バックでの「時間よ止まれ」も、この人の30年のキャリアの渋みバラード、という余韻。
この人だって、ある意味「矢沢永吉」を演じてきた、かもしれないですが、かといってその息遣いは、その場その場の”お芝居”でない生っぽさでした。
関連サイト:「E.YAZAWA ROCK」公式サイト、http://www.paoon.com/film/eeksgowxii.html
関連記事:SONGS 矢沢永吉<1>、<2>、SONGS 矢沢永吉、SONGS 矢沢永吉<1><2>、SONGS 中森明菜<1>、過去問、SONGS 安全地帯<1>/高橋真梨子
<’90年5月、キーウエストにて>
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