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空をとぶ小人たち(’69)

先週、「借りぐらしのアリエッティ」の原作「床下の小人たち」の続編3冊目「空をとぶ・・」を読み終えました。原書は「The Borrowers Aloft」('61)で、訳は引き続き林容吉さん。別種の単行本だからか、発行年が「床下・・」と同じで、間の2冊より早い年。

これの前の「川をくだる小人たち」記事最後で触れてたように、3分の1程までは、模型のミニチュア村「リトルフォーダム」に辿りついた一家の割とのどかな暮らしぶり。

メルヘンな趣も楽しめ、元駅員のポットと共にこの村を作ったミス・メンチスという女性が、アリエッティと接触、色々蔭から一家の暮らしを援助して、という流れだったのですが、

この村の対岸にある、別の模型村の夫婦が、この村をライバル視していて、彼らの策略で、小人一家ごとさらわれ、屋根裏部屋に閉じ込められ、絶望したり、心細いながらも、知恵を絞っての脱出劇へ、という後半でした。


a0116217_1655037.jpgこの本では、一家3人やスピラーのキャラクターは相変わらず、でも、特に直接「借りぐらし・・」劇中に関係するエピソード、というのは見られなかったのですが、

彼らをさらったプラター夫妻は、彼らに愛着を持ったり敬意を払いはしないのは、「床下・・」の料理人ドライヴァと同じですが、彼女のように小人達を恐れる、という訳でもなく、村の見世物にして私腹を肥やそうとするスタンス。

「野に出た・・」「川を・・」に出てきたジプシー男マイルド・アイもそうでしたが、一応当初小人達、という存在に怯えたりしていたのが、今回の夫婦は、そういう恐れはまったく見せず、図太くなった態度、というか、

閉じ込めた部屋で、食物を与えたりはするのですが、その仕方も、皿にミルクを入れて、猫を扱うように、だったり、珍しい”ペット”的な見方で、それは劇中、ハルがホミリーを捕えて、ビンに入れ、窒息はしないようラップに穴を開けてたり、というような行動に重なる気が。

(C)(株)岩波書店
a0116217_1551168.jpg「床下・・」だけ読んで「借りぐらし・・」を見た時には、ドライヴァを現代人風に、自然への畏怖も薄れて態度も横柄にアレンジしたのがハル、のような感もしてそのように感想に書いてたのですが、

宮崎・米林両監督、少なくとも脚本を書いた宮崎監督は、40年前にも企画、という経緯からしても、この続編全てを読んでいたと思われるし、

ここへ来てこの夫妻、特に妻のシドニーが、ドライヴァと共にハルのモデルかも、と思えたりもしました。



9/4追記:序盤は、一家が模型村のブドウ畑の家に落ち着き、久方に牧歌的な平和さ、「川を・・」でも触れてたように、アリエッティはスピラーと模型列車に乗り込んで楽しんだり、やはり物怖じのなさで、ミス・メンチスに話しかけ、ここでも人間との交流を持ったのは彼女。

ミス・メンチスは自然に相方のポットに小人達の話をしますが、ポットは、彼女が少し変わった人間の話をしてる、としか捉えず適当に聞き流し、「借り暮らし」を「カリグラ氏」と聞いて、という訳の妙もあったのですが、彼女が密かに彼らの姿を見せ、実際目の当たりにしたようでも、どうも夢うつつのような存在と思っているようで、

年配、という面もあるかもしれませんが、こういう模型村を創る、性質的にはピュアで地道な善人、ではあっても、いくら目では確かめても、自分の範疇・常識外の物は、意識的にインプットしない(出来ない)、という、この一連のシリーズでは、ある意味新タイプの登場人物。ただ、ミス・メンチスの小人達への気持は尊重して、自分に出来る手助けはする、というスタンス。

「床下・・」での元の家の庭師クランプファールも、ドライヴァから話を聞いて、その騒ぎの中でも半信半疑でしたが、「川を・・」のラストで、通りかかった橋から、家にあったのと同様の編み針の載った舟、スピラーの姿を目撃、という後日談が入ってたのでした。

                                       (C)(株)岩波書店
a0116217_025536.jpg ハイライトはやはり、部屋にある物をフル活用しての脱出劇。床下→地上→屋根裏部屋、と段々上に昇ってきた一家、それは借りぐらし族にとっては、ろくな事にはならない、とこぼすホミリー。でも下の階からの脱出の望みも薄く、一か八か、気球を作って窓から、になるのですが 、

アリエッティの「床下・・」での小図鑑で養った読み書き能力のおかげで、古雑誌に気球の記事を発見、ポッドに説明、ポッドの手仕事力で、風船・彼らが捉えられた網と小間物を組み合わせてそれを具体化+エミリーの直感力で、力を合わせ、プラダー夫妻の目を盗みながら、試行錯誤しつつ、涙ぐましい工夫を積み重ねて、

旅立ちは意外とあっさり成功、重し代わりの村の入場券を折々棄てて高度調整したりしながら、何とかリトルフォーダムの、スピラーが留守を守っていた家に帰還。「借りぐらし・・」では翔とスピラー、「床下・・」では少年、「野に出た・・」ではスピラーやトム少年、「川を・・」ではスピラーの助けで窮地を脱した一家が、今回は自力で、というちょっとしたアドベンチャーでした。


せっかく戻った家、でも、アリエッティが、家に電気や水道が引かれ、家具も増えている便宜は、自分とミス・メンチスとの交流のせい、と告白した事で、事態は変わり、

どんなにミス・メンチスが温かい人柄で、アリエッティとの友好が純粋なものであろうとも、やはりポッドにとっては、人間に見られる=そこを去る、というのは曲げられない鉄則で、その家を去って、スピラーが見つけた、近眼の老人だけが住む粉引き小屋へ移動、ということに。

(C)(株)岩波書店
a0116217_054810.jpgアリエッティは悲しみますが、「床下・・」からの物語を通して、やはり少なくともポッドやホミリーの代では、小人界と人間界の、超えられない一線、という染み付いた感覚、放浪の民の運命、的な成り行きに、一抹の寂しさ残る結末。

ただ、将来アリエッティとスピラーとの結婚、2人の代でのより自由な暮らしぶり、が仄めかされてしたりして、それは交じり合えない小人と人間、2民族の融合の可能性、のようでもあって、明るい希望も残して、という所。

9/5追記:この2人、というのは、「床下・・」「借りぐらし・・」では、同年代小人族の同志愛的な友情、という感じ、「借りぐらし・・」ではラストの方、別れの場面でアリエッティと翔との絆に気付き、翔に向けた矢を下ろし、そっとしておく、というスタンスで、

続編になって、スピラーの自立性、行動力等に、やはり自由な精神のアリエッティが惹かれていって、という過程。「借りぐらし・・」で流れていくやかんで、やや元気ないアリエッティに、黙って果実を差し出していたり、というようなシーンが思い出され、自然、と言えばそうかもしれないですが、そういう流れだったのでした。


この本は、これまでと違って、終わり方が一連の物語の打ち止め、のような印象でしたが、最後の続編「小人たちの新しい家」('90)(原書「The Borrowers Avenged」('82)) が20年後、メアリー・ノートン79才にして、突然出版され、世間を驚かした、と。
                                        
                                      (C)(株)岩波書店
a0116217_085196.jpgそれは少しだけ読みかけてますが、冒頭、ミス・メンチスが巡査の駐在所で、行方不明になった小人達の届出をしている場面。この本の今後の展開はまだチェックしてませんが、

「空を・・」の最後の方で、アリエッティがポッドに、二度と人間と話はしない、と涙ながらに誓った直後、ミス・メンチスにとっては、自分達が急に消えたままで、何も判らず、きっと死ぬまで思い悩む、旨を訴えかけ、それはスピラーが、何らかの形で経緯をミス・メンチスに話す、という意向を見せて、一件落着、だったのですが、

そういうアリエッティの”心残り”を、20年を経て、彼女を生んだメアリー・ノートンが、救い上げようとしたのかもしれない、と思ったりしました。

関連サイト:「借りぐらしのアリエッティ」公式サイトamazon「床下の小人たち」amazon「野に出た小人たち」amazon「川をくだる小人たち」amazon「空をとぶ小人たち」
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              (C)(株)岩波書店

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by MIEKOMISSLIM | 2010-09-03 00:00 | 本・邦画 | Trackback | Comments(0)
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