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ハナミズキ(’10)

2週間前にアップ後、感想途中で、合間も空いたので、アップし直しておきたいと思います。

10/5付:一昨日、「東西有名寿司・・」記事で触れたように、新宿ピカデリーで見てきました。そろそろ上映も減ってきて、終わらない内に、と思ったのですが、この劇場でもこの日は朝9:20~だけ、でも観客はそこそこはいました。

一青窈が裸足で歌った「もらい泣き」は、近年では、スルリと内面に入り込んできたインパクト曲の1つ。それと同等の、ではなかったですが、「ハナミズキ」も、抽象的な詞、何度か聞くほどに沁みてくる、不思議に底力な魅力、という感じだったので、やはりこれがモチーフになった作品、と共に、劇場での「ハナミズキ」を聞いておきたい、というのと、

曲誕生のきっかけとなった9.11テロ、という絡みで、NYも舞台、また土井裕泰監督作は「いま、会いにゆきます」('04)「涙そうそう」('06)と、結構好感だったり、スクリーンでの一青窈といえば、ヒロインに抜擢のホウ・シャオシェン作品「珈琲時光」('04)以来だったり、という事も後押し、という所だったのですが、

後味的には、割と好感、曲もラストで流れ、主演2人が辿ってきた物語を締めていたのは満足、という所でした。

a0116217_20562955.jpg10/6追記:9.11テロのレクイエム的な曲のルーツに忠実に、なら、漁師青年康平(生田斗真)でなく、単身NYに渡って9.11惨劇を目の当たりにした衝撃に、何かしなければ、と駆り立てられ、子供の笑顔の写真を撮る事に専心する北見(向井理)にスポットを当てて、

内容はラブストーリーにしても、それに自分も感化されて、共に歩む、または見守るヒロイン紗枝(新垣結枝)と彼との、という路線でも、という気もしたのですが、テロを匂わすフレーズは省かれ、ハナミズキの清冽さをモチーフにしたこの曲の普遍性、を思えば、

家業を継ぐ漁師として暮らし、家の問題に足を取られ、遠距離恋愛のジレンマに苛立つ、好きには”飛べない”青年と、夢や意気と心細さや思い出に揺れる”飛びきれない”ヒロインとの恋模様、にした、というのが、スケールは小さいかもしれませんが、何だか人間味的な温みが残った、という感触でした。

NYパートでも、グラウンドゼロも9.11当時の映像も扱わず、惨劇は、北見の科白で触れられていただけで、物語の遠景にしていた、というのも、曲のスタンスに添った配慮かとも。


新垣結衣は私は「恋空」以来だったのですが、やはり今回も思ったのは松嶋奈々子的なクセのない魅力。青春ものとして、「恋空」の不幸のオンパレードさ、を思えば、この作品の方がずっと若い層への健全感も。

序盤の釧路の受験生の恋模様は、最近見た中ではやはり北海道舞台、カップルの片方が早稲田を目指す「ハルフウェイ」('09)の、男女逆バージョン、とも。紗枝は英語を生かす志向で、早稲田→NYでの仕事、まで行き、劇中、電車で塾通いはしていても、やはり「ハルフ・・」同様、そう現実的な難関校受験勉強の苦労、は見られなかったですが、

後でパンフを見ると、新垣結衣は英語が得意、という訳でなく、練習を積んだらしいですが、オフィスでの外人とのやり取りや、北見の個展で3分間のスピーチをこなしてたり、やはり「half」を「ハルフ」と読んでタイトルにしてみせた天然な北乃きい嬢よりは、彼を後に残してでも、自らがとりあえず早稲田、東京へ、という意志の素地は垣間見せた、かと。

釧路パートで印象的だったのは、目の前でテキストに熱中する彼女に、業を煮やして立ち去った康平の後を追って、列車を降りた紗枝、少し驚いた彼がバカだなあ、と寄り添って夜の雪の中を歩く2人、というシーン。

康平は、自分は受験志向でなく、相手の立場は判っていても、寂しさの入り混じった苛立ち、紗枝も、自分の事だけに手一杯、我儘かもしれませんが、それでもそばにいて欲しいのに、という、未熟な思いの交錯、のような所が、丁寧に描かれていた、と思いました。


10/8追記:東京パートでは、紗枝が大学で北見が撮った写真に目を留めて、彼に出会い、紹介された塾のバイトで忙しく休みにも帰省せず、というのが、生真面目さや北見の影等もあってか、康平をおざなりに、というつもりはなくとも、去るもの日々に疎し的な流れ。

母子家庭で単身上京の大学生活、サークル等で楽しむというより、バイトが必要、という様相は現実的、でも劇中、研修期間等は割愛したのかもしれませんが、早稲田生、とはいえ未経験の大学1年生に、いきなり学校形態のクラス授業を任せる塾?という所が、些事ですがちょっと引っ掛かったりも。

このパートで一番頭に残ったのは、康平が上京してきた時の、不器用に示す積もり積もった苛立ちや思慕。一瞬隙間が埋まっても、その後純一の父(松重豊)の死もあって、それぞれの生活、事情、志向に、離れていく2人、というどうしようもなさ。

「元々紗枝の地図に、俺はいなかったもんな」というような科白が、そういう後先考えない(からこその)若い恋、ですが、その脆い断片が浮き彫りに、という所でした。


NYパートでは、生き生きと働く紗枝、その雑誌社はさり気なく北見の馴染みだったり、彼との距離は接近、康平も地元でリツ子(漣佛美沙子)と結ばれ、それぞれの道を、という流れでしたが、

キーになった、カナダの紗枝が生まれた、という街、その近くの灯台、というのが、多少出来すぎな展開もゆったり受け入れるような、のどかでファンタジックな佇まい。

a0116217_20544778.jpg”奇跡”の背景を、アメリカの都会等でなく、こういう地にした、というロケーションも、ミソの1つ、とも。パンフでは、世界遺産にもなっているルーネンバーグ旧市街+ペギーズ・コープという灯台だったと。

ヨーロッパ風の様々な色合いの家々の街並みもシック、灯台は、やはりカナダ東部「アンを探して」('09)でプリンス・エドワード島にあったような、角柱型で、地図帳で見るとこの辺りは、島から南へ200km位の所でしたが、

この灯台と、思春期の北海道の白い灯台(霧多布岬)がリンクするような演出も、時空を超えて、という趣を漂わしてる感でした。(↑「アンを探して」観光チラシより)

10/10追記:キーと言えば、やはり紗枝の家の庭のハナミズキの花もですが、物語の節目でさり気なく、見守るように登場、それを植え、幼い時に他界した父(ARATA)の化身、「千の風になって」のようなニュアンスもして、

劇中この花が、原曲に込められていた、9.11で奪われた多くの命へのレクイエム、的な意味合いの役割、とも思えたり。


10/21追記:パンフの新垣談で、作品を見て、紗枝の自分に一生懸命すぎて不器用な所が、自分に似てるようで恥ずかしい、旨あって、このヒロインは、形的にはそう葛藤なく康平~北見へシフト路線だった、とも取れますが、色々あってもNYでキャリア追求、という訳ではなく、いわば中途半端タイプ。

生田斗真は私は初見で、第一印象は、以前のケミストリー堂珍似、という気もした甘いマスク風、でしたが、彼の演じた康平も、そういう意味では、王子様的とは対極の不器用な市井の青年。

そういう半端な2人の行きつ戻りつ目一杯の日々、そういう中で、埋もれていた思いの核が、ふと奇跡のように誠実に伝わる、そういう事があってもいいよね、というのは好感で、自然に落とし所にはまれた感じ。

その他俳優陣で良くも悪くも印象的だったのは、特に浮いていた、という訳ではないのですが、紗枝の母役薬師丸ひろ子。この人の母役、というのは何度か見ましたが、自身行方知れずの恋に走ったという経歴、はいいのですが、今回特に、人生酸いも甘いも、というさばけた”肝っ玉母さん”的で、

少女期、2Hの鉛筆の原田知世VS墨汁の薬師丸、的な線太さが、今中堅になって、こういう形で露に、と思ったらやや微妙な後味。個人的には私は、この人は何処かオーソドックス感あっての個性、というイメージなので、「めがね」('07)の時の役等と同様、この良子役は別にこの人でなくても、という気も。

でも、良子と真人(木村祐一)初め、北海道の周囲の人々、リツ子と洋(小柳友)、紗枝の友人みなみ(徳永えり)と保(金井勇太)等の成り行きも、温かく後味いいものが。

一緒に見た母とは、以前土井作品「いま、会いに・・」も見に行って、その時も確か好感そうで、本人はどうもその記憶は薄れてるようでしたが、今回は、日本らしい美しいラブストーリーで見応えあった、等と言ってました。

a0116217_22422385.jpgハナミズキの花言葉は「返礼」、と今回知ったのですが、そういう筋が、物語にも通っていて、情報の氾濫で人の感覚も麻痺しがちで、他人の存在、心も、数字や記号でしか扱われかねない時勢の中、価値あるいい言葉、コンセプト、とも思えた作品でした。


関連サイト:「ハナミズキ」公式サイト象のロケット「ハナミズキ」
関連記事:珈琲時光(’04)ALWAYS三丁目の夕日(’05)フラガール(’05)アメリカの旅<5>SONGS 一青窈涙そうそう(’06)バブルへGO!!タイムマシンはドラム式(’07)武部聡志めがね(’07)転校生 さよならあなた(’07)受け入れて/一青窈(「転校生・・」の下)、春うた 2008うた魂♪(’08)徳永英明~あなたに贈る僕の歌~ALWAYS 続・三丁目の夕日(’07)恋空(’07)SONGS 薬師丸ひろ子/レイモン・ルフェーブルありがとう(’06)あおげば尊し(’05)~追悼・市川準監督~ホームレス中学生(’08)バッテリー(’07)LIFE 井上陽水~40年を語る~<1>アンを探して(’09)クリスマスの約束(’09)ハルフウェイ(’09)春との旅(’10)音楽のチカラ「青春の言葉 風街の歌 作詞家 松本隆の40年」
(スレッドファイルリンク(ここでは「珈琲時光」「ALWAYS三丁目の夕日」「フラガール」「うた魂♪」「ホームレス中学生」)は開かない場合あるようです)



by MIEKOMISSLIM | 2010-10-20 00:00 | 邦画 | Trackback(9) | Comments(0)
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「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。


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