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Something Impressive(KYOKOⅢ)

BANDAGE(’10)

今年初め公開、気になっていたこの作品を、先週からDVDで少しずつ、昨日見終えました。岩井監督が脚本・プロデュース、やはり岩井関連絡みで、最近「ハルフウェイ」('09)もそうでしたが、岩井監督とタッグを組んできた小林武史が監督の音楽もの、という所も興味でした。

原作は、元々同監督のWebシナリオコーナーに応募された、菅知香という人の小説「グッド・ドリームズ」で、すでにラジオドラマ化もされてた、と。
                                    (C)(株)角川書店
BANDAGE(’10)_a0116217_1425463.jpg小林武史は、自身の、というと私は浮かぶのは「MY LITTLE LOVER」の頃ですが、元々は、大貫妙子アレンジで、だったか、気付けば馴染んでいた名、という感で、最近では、’85年麗美のコンサート発掘ビデオでのキーボード姿、があったり。

映画音楽では、岩井作品以外で見た中では、「稲村ジェーン」('90)「深呼吸の必要」('04)「地下鉄に乗って」('06)等もそうだったのでしたが、

やはりインパクトだったのは、先日種田陽平展でも久方に見た「スワロウテイル」('96)でのナイーブ名曲、Charaの「Swallowtail Butterfly~ あいのうた~」作曲。

「スワロウ・・」は特に好みの岩井作品ではないのですが、この曲だけは何か、キュッと締めつけられるような感触ずっと残ってます。

              
        
今回が初監督作品かと思ったのですが、「スワロウ・・」の前年に、Mr.Childrenのドキュメンタリー監督作があったのでした。

この作品では、自作の曲を、劇中のバンド「LANDS」が演奏、赤西仁が歌い、物語の色合い、基調、になっていた感じ。終盤、杏がボーカルの女性バンドが演奏した「コンパス」という曲も、ほんのりさり気なくいい味。杏は、後で、渡辺謙の娘だった、と。挿入歌で一青窈の「サイコロ」という曲も。


ふとした事で、憧れの「LANDS」のボーカリストハル(赤西仁)に気に入られ、バンドの内側に入り込んだ、女子高生麻子(北乃きい)。出来すぎなシンデレラストーリー、のようですが、他メンバーとの摩擦、彼の身勝手さやナイーブさに振り回されたり、惹かれる気持と戸惑い、

ハル自身の、当初の、恋をもて遊ぶ腰軽さ、拒絶する麻子への気持の傾き、ミュージシャンとしての自信のなさ、葛藤、とか、単純にハッピーエンド、な一筋縄という訳ではなかった、青春の微妙な右往左往ぶり。やはりそこら辺、岩井テイストなリリカルな丁寧さ、という感慨も。

ラストのレコーディングシーン、麻子が防音ガラスごしのハルの唇の動きに合わせて、サビの所を泣きながら口ずさんだ「二十歳の戦争」が、一番耳に残ってます。


11/19追記:北乃きいは、この役も、変化球、というより物事に直球タイプなのが似合ってた感じですが、「ハルフウェイ」の時とは髪型も変わったせいか、あの時の天然さとはちょっと違う印象。

赤西仁は、KAT-TUNの名だけは知ってたのですが、さすがに美男系、今日女子中生から、何処までが本当?というスキャンダルは色々聞いたのですが、このハル役は、もてはしても内心自分に自信なく、虚勢を張る半端なスター、一青年、という雰囲気はラフに出ていたと。

でも、後半の節目、自分の苛立ちをぶつけて、互いの弱さを吐露し合った時、一瞬心が重なったキスシーンの後、なし崩しに進んでしまうのでなく、「帰れ」と距離を置いたのが、内面の問題なのか、相手の純粋さや互いの包容力度合を肌で感じ取ってか、混迷の中でのこの青年の目一杯の男気、というか、この作品の筋、品として、好感ポイントの一つ。

彼女が去った後、彼が部屋で搾り出すように「元気」を歌って、やはり「LANDS」ブレイクの今風アレンジより、この時のアンプラグド版の方が、この曲のナマの味わいあったかと。

               

このヒロインは、大学進学でなく「LANDS」の事務所に就職、ある意味バンドに入れ込んで、の歩み。でもハルやギターのユキヤ(高良健吾)との関係を器用には扱えず、傷ついて、現場から離れていったのは、適性的にも自然、とも思えたのですが、

友人のミハル(杏)のバンド演奏を聞いて、マネージャーとして再び歩き出して、という展開。彼女の芯にあった、その裏方仕事への情熱、が表に動き出して、という所で、それが恋愛絡み摩擦のない女性バンド、というのもステップとしては妥当だったかもしれませんが、

その時の、上記の「コンパス」という曲も、杏とAKKOの声質は違いますが、MY LITTLE LOVER風というか、ナチュラルな味で、緩やかな”再生”の後押しとしてハマっていた感じ。

             

この杏は、モデル兼女優で24才、制服姿は北乃きいよりはやや無理ある感で、渡辺謙ジュニア、と聞いても、今一父の面影、というのは、風貌、芸風的にも余りピンときませんでしたが、ボーカルは伸びあってなかなか好感でした。

また、他にも、キーボードアルミ役柴本幸は、「私は貝になりたい」('08)にも出てたのでしたが、柴俊夫と真野響子の娘、だったり、ドラムスのリュージ役の金子ノブアキが、金子マリの息子、というのも、検索中目にして、渋い所、というか金子マリとバックスバニー、懐かしい響きで、続々2世が出てるのだと。


その他、脇役陣で気になったのは、元からの「LANDS」マネージャーユカリ役伊藤歩。私は「歌謡曲だよ、人生は」('07)以来、今回、仕切りタイプ役でしたが、劇中少しだけドラムを叩いていて、そもそもボーカルで音楽活動歴もあったのだった、と。

今回の筋で、ややどうなんだろう、と思ったのは、このユカリは元ドラマー、という設定で、バンドの内容や方向性に対して一言持つ、というのは判るのですが、麻子は自身、音楽歴も志向も全くなく、それでも裏方として事務的な業務、メンバーの身辺の世話したり、というのは出来そうですが、

マネージャーとして、終盤にも、無職状態の彼女が、業界人に「ハッピーズ」アピール出来た、というのは、事務所にいた時のつてで?かとも思ったのですが、再会したユカリに「(ハッピーズ)が大分力をつけてきたので・・」と言ってたりしていて、いくら音楽好きでも、いわばファンの延長、素人の立場、で、音楽的な見極めが、出来るのだろうか、という事。

自分が手を染めてないからこその率直な感覚、というのか、実際そういうタイプのマネージャーもいるのかもしれないし、ヒロインの青春仕切り直し、という流れ的に、そう突っ込んでも、という所かとは思うのですが。

11/20追記:それと、財津さん、財津和夫がさリ気なく、事務所の社長役。面接に来た麻子に、昔バンドをしていて、売れなくて故郷に戻って古着屋をやっていたけれど、仲間が気にして呼んでくれて、今この仕事、というようなやや自嘲的な回顧してたのですが、

以前「つぐみ」('90)で、真田広之の兄役、で見て以来。そう俳優として馴染みないせいもあってか、そういう設定の科白を聞いても、その存在一目で、大メジャー「チューリップ」なのに、と反射的ギャップ感覚。10~20代位の世代だと、余り知らず一俳優、と思うのかもしれないですが。ラフな業界人風の物腰、でも、どうせならベテランミュージシャン役等で見たかった、と。

私は、10代の頃邦楽で主な所は、子供時代からの陽水~ユーミン系統で、麻子のようにバンドに熱を入れた、という思い出は余りなく、田舎だったし、ああいうライブハウス経験も、社会人になってからの、カシオペアや上田正樹等、位。でも「青春の影」には特にハマったし、他の曲も好きだったし、思えば、あえて挙げればチューリップ、とも。
                                                                                                                                  BANDAGE(’10)_a0116217_2237963.jpgBANDAGE(’10)_a0116217_22375826.jpgあと、麻子の母役は、見た時はピンときませんでしたが、後で斉藤由貴だった、と。何年か前「優駿 ORACION」('88)の上映会で以来、姿も随分久し振りで、やや天然大らかなお母さんぶり、年代からしたら不思議はないのですが、この人も若手女優の母役をするようになってた、と。本置き場に、エッセイと、帯の裏に村上龍コメント入りの詩集がありました。<(C)(株)角川書店、(株)小学館>

11/21追記:そういう所で、気になる顔ぶれもちらほらでしたが、ラブストーリーとして、’90年代舞台で、携帯やPCも登場せず、今時の、私にはどうにも気持の悪い、(人目に晒す)言葉の断片での駆け引きもなく、直にぶつかりあう所も好感。

自らの音楽を散りばめて音楽界を舞台にした小林武史のトライアル、ややコミック風、でも、「NANA」等より力が抜けてる、というかラフで生っぽい臨場感あって、その核の音楽自体の好き嫌いもあると思うのですが、私は改めて、好み系統、と感じたし、

日本のミュージシャン監督フィクション作としては、これまで見た桑田佳佑、小田和正、石井竜也、久石譲作品等の中でマイベスト。それはまた、場面転換の時の黒地に白字の時の経過表示、室内の光の感じ、思春期のナイーブなリアル心情を丁寧に辿る、等岩井テイストミックスもあってこそ、と思うのですが、満足のコラボ作品でした。

関連サイト:BANDAGE 公式サイト象のロケット「BANDAGE」
関連記事:花とアリス(’04)珈琲時光(’04)理由(’05)カーテンコール(’05)チェケラッチョ!!(’06)あの歌がきこえる「青春の影」虹の女神(’06)市川崑物語(’06)
SONGS 一青窈歌謡曲だよ、人生は(’07)のど自慢(’99)受け入れて/一青窈(「転校生・・」の下)、地下鉄(メトロ)に乗って(’06)SONGS チューリップ<1><2>チューリップBESTSONGS Chara岩崎宏美/Mr. Childrenつぐみ(’90)-追悼・市川準監督ー私は貝になりたい(’08)クリスマスの約束(’09)SONGS 財津和夫<1>/井上陽水<1>~<4>ニューヨーク、アイラブユー(’09)ハルフウェイ(’09)麗美ファーストフライト(’85)借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展ハナミズキ(’10)
(スレッドファイルリンク(ここでは「花とアリス」「珈琲時光」「理由」「カーテンコール」「チェケラッチョ!!」「虹の女神」「市川崑物語」「歌謡曲だよ、人生は」「私は貝になりたい」)は開かない場合あるようです)


      
Tracked from 日々のつぶやき at 2010-11-22 11:48
タイトル : 【BANDAGE バンデイジ】
監督:小林武史 出演:赤西仁、北乃きい、高良健吾、金子ノブアキ、柴田幸、杏、伊藤歩 「90年代バンドブームの中、クラスメイトのミハルにLANDSというロックグループのCDを借りた麻子はすっかりファンになってしまった。その後二人でライブに行き忍び込んだ楽屋で、... more
Tracked from 佐藤秀の徒然幻視録 at 2010-11-22 12:05
タイトル : BANDAGE バンデイジ
公式サイト。岩井俊二プロデュース、小林武史監督、赤西仁、北乃きい、高良健吾、柴本幸、金子ノブアキ、笠原秀幸、杏、伊藤歩、財津和夫、斉藤由貴。バンド名のLANDSを最初、WANDSと聞きちがえてしまった。 ま、実際、WANDSがベースになっているんだろう。... more
Tracked from 古今東西座 at 2010-11-22 20:38
タイトル : 「BANDAGE バンデイジ」
大学生だった頃、最もよく音楽を聴いていた。次々に現れる新しいアーティストも高く伸びたアンテナでキャッチしていたもの。しかし社会人になると次第にそのアンテナの高さは下がっていき、最近ではもう下がらないくらいに低くなってしまった。現在聴く音楽は昔の曲がほとんどで、自分の父親が新しい音楽を受け入れられずナツメロばかり聴いていたのと同じ道を歩んでいる。この『BANDAGE バンデイジ』は1990年代初頭に起こったバンドブームの頃の物語。僕のアンテナがどんどん下がっている時代で、当時の音楽シーンには正直なところ...... more
Tracked from とらちゃんのゴロゴロ日記.. at 2010-11-22 20:38
タイトル : BANDAGE バンデイジ
90年代のバンドブームを実際に現場で体験した製作者が、音楽シーンの裏側から描いているので大変にリアルな物語になっている。ライブハウスで経験を積み、ほとんどのバンドがメジャーデビューの夢を見る。その夢を一瞬実現したバンドのメンバーの成功と挫折の物語が、すばら... more
Tracked from 象のロケット at 2010-11-22 23:10
タイトル : BANDAGE バンデイジ
1990年代、東京。 女子高生のアサコは友人ミハルと行ったLANDS(ランズ)のライブで楽屋に忍び込む。 バンドのヴォーカル・ナツに気に入られ、LANDSに深くかかわっていくアサコ。 バンドがメジャーへと昇りつめていく中で巻き起こっていく内部の衝突と葛藤、売り出す側のシビアな目。 恋と友情の行方は? バンドの将来は…? 時代の熱気と繊細な感性を描く青春音楽ドラマ。... more
Tracked from しぇんて的風来坊ブログ at 2010-11-23 10:57
タイトル : BANDAGE バンデイジ
バンドを主軸にし音楽を扱った映画は近年でも多いが、このBANDAGE (多分 Band Age、バンドの時代の造語か、BANDAIDと似た語感で傷を貼ることのニュアンスも響く)は、音楽を突き詰めている感覚を鮮やかにする事によってによって、他の作品とは風合いを異にしたものとなっている。 「リンダリンダリンダ」は素人の女子高生達、「デトロイト・メタル・シティ」はやりたい音楽と違うという面の違いについてのコメディ、「少年メリケンサック」は中年パンク、「海角七号]は急造バンド、「ラジオ・スター」はかつての栄光...... more
by MIEKOMISSLIM | 2010-11-18 00:00 | 邦画 | Trackback(6) | Comments(0)