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Something Impressive(KYOKOⅢ)

しあわせの雨傘(’10)

北海道展記事で触れてたように、日曜に日比谷のシャンテで見てきました。これはやはり、歴代マイベスト10に入る「シェルブールの雨傘」('64)が頭にあって、カトリーヌ・ドヌーヴが雨傘工場社長夫人、というオマージュ漂わす設定、歌も披露、というのもポイント、劇場で見ておければ、と気になってた作品。

フランソワ・オゾン作品は私は「スイミング・プール」('03)以来、以前「まぼろし」('01)が割と印象に残る作品だった、というのもあって、このコラボも、ちょっと興味あったのでしたが、

短い荒筋を見た段階だと、夫が病に倒れた不測の事態に、優雅な暮らしの専業主婦だったヒロインが工場を切り盛りしていく、という、ヒューマンドラマ風、にも思えたり。

余り詳しい内容チェックせず、見てみたら確かに、家庭で”飾り壺”扱いされていたヒロインスザンヌ(ドヌーヴ)が、新たな自分を見出して羽ばたいてく、という筋には違いなく、序盤のドヌーヴジャージ姿も、ミスマッチ感が少し微笑ましかったりしたのですが、

正直、明るみになっていく夫婦揃っての、過去~現代に渡る浮気の応酬、の背景、エピソードは、苦笑してしまうコミカルさもあっても、どうも生理的に、気持悪かった。それは近頃ネット上で垣間見た公然とした不倫沙汰、その駆け引きの気持悪さに、諸事情で、嫌な思いをした、私自身の経験も一因かと。


夫ロベール(ファブリス・ルキー二)の浮気相手の秘書ナデージュ(カソン・ヴィアール)が、臨時社長になったスザンヌの影響で、意識が変わり、不倫関係にけりをつけようとしたり、スザンヌの応援についたり、というのは、この流れなりの”ヒューマン”的部分かとも思ったりはしたのですが。

思えばフランス発、余りオゾン作品の多くを見てはいないですが、一捻り、二捻りあっておかしくない作風。「まぼろし」での、海岸で行方不明になった夫の姿を探し求める妻、のメランコリックな情感、が脳裏にあったのですが、それは余り見受けられず、

そうストレートなヒューマン、愛情ドラマ期待、というのはやや路線違いで、これがフランス流大人のドラマ、としても、何だか、という感じ。人生模様の味わい、等とはどうしても思えず。

途中で母にもこれはNG、まずかった、と。実写の洋画を一緒に見たのは「宇宙へ」「HACHI約束の犬」のハシゴ以来、今回、荒筋での印象で、OKそうかと誘ったのですが、やはり感想は今一で、浮気の仕合は嫌だった、やはり洋画はそこら辺ちょっと感覚が合わない、

昔見た「野菊の墓」とかは本当に、しみじみとした純愛で感動した、等と帰途言ってて、誘う作品選択間違い。良かった所は?と聞いたら、専業主婦の身から国会議員を目指すまでになって、という、女性が努力を実らせる感じは好感持てた、という所でした。          


劇中、ドヌーヴの歌は、序盤の台所での鼻歌だけ?と思ったら、ラスト、「・・美しい人生」と歌い挙げて、そういう女の人生を飾る締めの舞台、となったのですが、上手さ云々というより、貫禄でソツなく締めた、という印象。

彼女は私は「ペルセポリス」('07)での声優、姿は「輝ける女たち」('06)以来。「シェルブール・・」はでの歌は吹替えだったし、「ロバと女王」('70)もミュージカル調でしたが、やはり吹替えだったようで、

「輝ける・・」で、どうも彼女の歌シーンははっきり思い出せないのですが、当時の感想を見直したら、少なくとも彼女のらしき歌が流れた、という事はあったようで、歌声もその時以来。

その姿に、この作品の内容自体さておいて、「シェルブール・・」での若さ美しさは消えても、年輪重ねた女優カトリーヌ・ドヌーヴの健在ぶり、という感慨覚えたりはしました。

              


2/24追記:その他俳優陣で、近年見かけてたのは、私は「エディット・ピアフ 愛の讃歌」('07)以来、市長のパパン役ジェラール・ドパルデュー。ピアフをスカウトした店主役、だったのでしたが、ああいう恰幅だったろうか、と。それと夫妻の息子ローレン役のジェレミー・レニエは、「夏時間の庭」('08)で次男役だったのだった、と。

ロベールと秘書との不倫を、黙認してるような一家の雰囲気も、どうも気持悪かったのでしたが、

この物語は、スザンヌの昔の、パパンともう一人との不倫、というエピソードがなければ、スザンヌがそういう意味で、自身の誠実さは捨てない、また捨てられない女性だったら、

夫の放蕩に、辛く理不尽な思いをしながらも、家族に忠誠を尽くしてきた妻が、夫の病気を機に、真の意味で、自分の能力・存在が認められる表舞台に羽ばたく、という、幾分いい後味だったかと。

スザンヌには、周囲を懐柔しながらの経営能力はある設定、ドヌーヴとドパルデューのダンスシーンはあっても、さすがにリアルタイムでの絡みの不倫ラブシーン、等は設定自体なかったですが、工場混乱当初、後ろ盾としてパパンを頼った背景に、昔の出来事との絡みも、ちらつく感じが、やや興ざめしてしまったり。


不倫仕合を省いて、家族経営の企業で、幹部の夫婦間で、考え、方針、資質が違って、子供達の引き合い合戦、のような状態は、人間模様的な感で、

やはり、というかロベールは、スザンヌの経営者としての思わぬ資質、そのスタンスを理解しようとはせず、また多分感覚的に、理解出来ない男性像。

歩み寄りなく自我を張り、妻側にいた娘ジョエル(ジュディエット・ゴドレーシュ)に、夫を幹部に雇う、と、自分の家族の安泰を報酬にして、寝返らせたり、ふと弱気になってか計算でか、スザンヌの寝室に甘えに行ってみたり、

設定は’70年代で、女性のスタンスも今とは違っても、妻や秘書との件も、女は自分の管理下でサポート役、性欲を満たすだけで十分、自分と違う感覚、自分を凌ぐ能力等は目障り、というワンマンと卑小ぶりが、シニカルに浮き彫り。

この話で、一応一番好感持てたのは息子ローレン。美術志向で、カンディンスキー絵柄の傘等デザインしたり。自分の出生の秘密を知ったりしたら、やはり複雑な心情で、どう振舞うか?判りませんが、少なくとも一貫して筋を通して、母側についていたスタンスだったので。


そういう所で、「シェルブール・・」へのオマージュ、というよりは、その後のパロディ版、とでもいう風に思えたりもして、今一。もし同じ物語で、「シェルブール・・」の影もなく、雨傘でなく別の商品工場舞台なら、ドヌーヴ出演作、とはいっても、スルーしていた作品、と。

上記のように、ドヌーヴの歌はフルコーラス聞けて、健在ぶりに感慨、という分には、見に行った甲斐ありましたが、もう今や「シェルブール・・」のような牧歌的ピュア、というか、ああいうテイストの作品は、根絶気味、と一抹の寂しさも感じました。

関連サイト:「しあわせの雨傘」公式サイト象のロケット「しあわせの雨傘」
関連記事:ロバと女王(’70)うず潮(’76)輝ける女たち(’06)スイミング・プール(’03)エディット・ピアフ 愛の讃歌(’07)ペルセポリス(’07)夏時間の庭(’08)
(スレッドファイルリンク(ここでは「輝ける女たち」「エディットピアフ 愛の讃歌」「ペルセポリス」)は開かない場合あるようです。)


Tracked from 京の昼寝〜♪ at 2011-02-25 12:03
タイトル : 『しあわせの雨傘』
  □作品オフィシャルサイト 「しあわせの雨傘」□監督・脚本 フランソワ・オゾン□キャスト カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ、ジェレミー・レニエ■鑑賞日 1月10日(月)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> この映画はかみさんが観たいと言った作品だったのですが、 最近また、ぼちぼち映画に出だしたカトリーヌ・ドヌーヴだったので観ることに。 監督が『8人の女たち』の...... more
Tracked from LOVE Cinemas.. at 2011-02-25 17:01
タイトル : しあわせの雨傘
『8人の女たち』以来のタッグとなるフランソワ・オゾン監督と、大女優カトリーヌ・ドヌーブが送るコメディドラマだ。70年代のフランスの片田舎にある雨傘工場を舞台に、心臓病で倒れた夫に変わって妻が工場を切盛りし、女性としての自立、自分の居場所に気がついていく。共演にジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、ジェレミー・レニエらフランスの名優が揃った。... more
Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2011-02-25 19:25
タイトル : しあわせの雨傘
 『しあわせの雨傘』をTOHOシネマズシャンテで見てきました。 (1)今更67歳のカトリーヌ・ドヌーブでもないのですが、昨年末に見た『隠された日記』がまずまずの出来栄えであり、これもまあ見ておいても損はしないのではと映画館に出かけてみました(彼女の出演作として...... more
Tracked from 象のロケット at 2011-02-26 17:23
タイトル : しあわせの雨傘
1970年代、フランス。 優雅で退屈な毎日を送るブルジョワ主婦スザンヌの夫ロベールは、雨傘工場の経営者で絵に描いたような亭主関白主義者。 ある日、工場のストライキで組合に監禁されてしまった夫を救うため、スザンヌは昔の恋人で左翼系市長のババンに仲裁を頼む。 解放後、夫はショックで入院し、スザンヌが工場を運営することになったのだが…。 女の人生讃歌コメディ。... more
Tracked from KINTYRE窶儡DIARY at 2011-03-04 19:19
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by MIEKOMISSLIM | 2011-02-23 10:44 | 洋画 | Trackback(5) | Comments(0)