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遥かなる山の呼び声(’80)

今日、近くの高円寺図書館で「遥かなる山の呼び声」映画会、都合も合ったので見てきました。観客は中~高齢層中心で30人位、ここで私が経験した中で一番多かったかと。北海道の牧場舞台で、健さんが渋味を見せる山田洋次監督作のヒューマンドラマ。

山田作品は私は「武士の一分」以来、この作品は未見でしたが、故渥美清さんが人工授精師、というチョィ役で出てたり、ハナ肇、武田鉄矢、ムツゴロウ氏の畑正憲が獣医役、など若き日、在りし日の顔ぶれも味わい。


北海道東部の中標津という所で、牧場を女手1つで切り盛り、幼い息子武志(吉岡秀隆)と暮らす民子(倍賞千恵子)の元へ、ふらりとやってきて、住み込みで仕事を手伝いだした身元不明の男田島(高倉健)。

息子は、最初どうも似てる、と思ったら、しばらくしてキャスト名が出て、やはり子供時代の吉岡君。この時点で、彼の芸達者ぶりもあって、「北の国から」母子版、のような感じ漂ったりしましたが、

これは「北の・・」が始まる前年の公開で、オーディションで山田監督に見出されて、これが最初の山田作品出演だったのだった、と。

話の荒筋だと、苦労して暮らす母子の元に、懐の広い仙人のような健さんが現れて、という人情もの、をイメージしたのですが、確かに実直な人柄で母子の信頼を得て、心身の助けにもなるのですが、

終盤この本人自体、脛に傷があって警察に追われる身、と判ってきた所で、逆にこの男にとっての一時の憩いの場が、この母子だった、という予想とはやや逆転のドラマ展開。


またその辺りで、そう言えば、と、未見ですが「幸せの黄色いハンカチ」の事を思い出して、やはり北海道で高倉・倍賞コンビで山田作品だし、その、刑務所帰りの男を待つ女性、という大まかな荒筋が、この物語とリンクする気がして、

「幸せ・・」とこの作品の公開も、似たような頃、でも前後関係も不明でしたが、これってもしかして「黄色い・・」に続く、前振り的な作品?と思い始めてて、ラスト列車内で民子が田島に渡した黄色いハンカチ。それで、やはりそうなのかも、と思ったのですが、

後で確かめたら「黄色い・・」の方が3年前、そのもう少し詳細の荒筋からしても、どうもこの作品との繋がり、という訳ではなさそうで。

ならば、あの”黄色いハンカチ”は、話の流れからして、「黄色い・・」を知らない観客には、意味不明ですが、その知名度踏まえて、まさに民子の心情を表す恰好の小道具、として使われた演出、という所だったのだろうかと。


そういう事もちょっと引っ掛かって印象に残ったのですが、内容的には、島田の母子への誠実で男気ある接し方、からして、殺人を犯してしまい、その罪を問われるのが、どうにも苦痛で不本意、にしても、表社会から逃げ惑う身、というのがどうもしっくりこず。

母子と接する内に、本来の男気、を取り戻して変化、結局ラストは観念して、かもしれませんが、逃げるのを止めた、とも取れるのですが、そこら辺の心情は、自分の犯した罪、過去について、去ろうとする前、一度だけ民子に淡々と語るだけ。

唯一の肉親らしい兄(鈴木瑞穂)にも、余波の迷惑をかけて、の逃亡生活、実際は、時間稼ぎか、逃げおおせれば、という卑小な部分が多かったのか、やむにやまれぬ理不尽さを抱えて、妻の死の絡んだ非情極りない相手への行為で、罪を問われる位なら、野垂れ死にでも、という覚悟を持っての確信行為か、

原作はなさそうだし、そこら辺、どうも謎ですが、そういう風に、彼の心情吐露を最小限にして、余計な科白のなさ、が、健さん本人のイメージと相まって、そういう矛盾を薄めて、お伽噺のような話がヒューマンドラマになってた、という後味も。

健さんは、今回50才位の時でしたが、乗馬姿も颯爽、物腰もやはり概して渋かった。私は前作「単騎、千里を走る」('05)以来でしたが、その日本編担当だった降旗康男監督の、来年公開の「あなたへ」という作品に、6年ぶり映画出演、という記事を見かけて、健在なんだ、と。

どうもこの人のTwitterや公式ブログ、らしきものはなさそうで、何だか安心するのは私だけでしょうか。


それと、やはり倍賞千恵子演じる民子が、余り今時のシングルマザー、という横文字はややそぐわない感じの、芯のある気丈さ。

そうきつさ、というキャラクターではないですが、楽な生活をさせるのに、などと言い寄る虻田(ハナ肇)にも、毅然とした態度を見せ、思いやりも持ちつつ、筋の通った気骨ある女性、というのもこの物語の骨組みの1つ。

島田に当初警戒心を抱きながら、彼の働きぶり、息子への大らかな接し方、男気に、自然と信頼が湧いて、距離を縮める心情、突然出て行くと告げられた時の動揺、などが、妙な駆け引きやあざとさなく、自然に出てたのも好感。

この作品は、そもそも山田監督が、「シェーン」を題材に、そのテーマ曲「The call of the faraway hills」を和訳してタイトルにしてた、というのと、倍賞千恵子ヒロインの「民子三部作」の3作目だったのだった、と。

倍賞千恵子は、出演作名を見て、「植村直巳物語」での妻役、というのも気丈な印象だった、と思い出したり。


後やはり、先に挙げた、色んな顔ぶれの脇役陣が、島田の喧嘩の腕を知って降参、応援側に廻った虻田含め、民子を気遣ったり、場を和ませたり、大方皆良い人。護送員(下川辰平、笠井一彦)も、島田にさり気なく弁当を勧めたり、という人情をちらりと見せたり、というような所も 。

そういう所で、北海道の四季の美しさ、雄大さの中の、この頃の山田作品の風味+健さん・倍賞千恵子カップル軸の、恋愛は抑え目に隠し味にした、人情ドラマ味わい、でした。

関連サイトト:Amazon 「遥かなる山の呼び声」高円寺図書館 映画会象のロケット 遥かなる山の呼び声
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                     <’98年3月、北海道にて>  
 

by MIEKOMISSLIM | 2011-09-03 23:20 | 邦画 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 象のロケット at 2011-09-04 23:53
タイトル : 遥かなる山の呼び声
北海道中標津。 民子は、一人息子・武志を育てながら、亡夫が残した牧場を経営していた。 その冬、激しい雨が降る夜、一夜の宿を求めて一人の男が訪ねてくる…。 ヒューマンドラマ。... more
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「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。


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