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ヘルプ~心がつなぐストーリー~(’11)

一昨日、先日の「マリリン 7日間の恋」の時と同じ有楽町のよみうりホールで「ヘルプ~心がつなぐストーリー」試写会、案内状が直前到着、という慌しさでしたけれど、これも都合合ったので見てきました。客席はやはり満杯気味。

このタイトルの「ヘルプ」は、白人家庭で働く黒人メイド達、の意味だったのでしたけれど、'60年代、アメリカ南部の町を舞台に、ジャーナリスト志望の白人女性スキーター(エマ・ストーン)と、

理不尽な扱いを受けてきた黒人女性達が勇気を奮い起こして、彼女達の生の声を伝える本を出版、町に変革を起こすヒューマンドラマ。

ヘルプ~心がつなぐストーリー~(’11)_a0116217_2113255.jpgテーマ自体はシリアスだけれど、折々コメディタッチなテイストもあってそう重くなく、上映時間は2時間26分、でも結構引き入れられて、長さを感じず、これもなかなかの見応え。

実話に基づく話で、原作はキャスリン・ストケットの同名小説、この人は舞台になったミシシッピ州ジャクソン出身、劇中でのスキーターに当たるようで、監督をしたテイト・テイラーも同郷の友人、だそうで、

一時出版も危ぶまれた本がミリオンセラーになって、映画もクチコミで広がってヒット、色々受賞したり、ノミネートされてた作品だった、と会場で配られたチラシで知った次第。


やはり同時代の公民権運動、黒人女性絡み、というと反射的に、ウーピー・ゴールドバーグの「ロング・ウォーク・ホーム」が浮かんで、あの作品では、ウーピー演じる女性が、ある時、平然とまかり通ってきた理不尽な”常識”にふとキレて、バスで堂々と白人席に居座ったのが発端だったけれど、

この作品では、黒人メイドミニー(オクタヴィア・スペンサー)が、外の天気が荒れ模様の時、やはりふとキレて、自分用に野外に作られたトイレでなく、その家のトイレで用を足した、という行為が誘発剤に。

そもそも当時、バスの席とかだけでなく、野外の黒人用別トイレ、というのがまかり通ってた、というのも今回知ったけれど、

ミニーの家の女主人ヒリー(プライス・ダラス・ハワード)は、普段はアフリカへの募金集めの慈善活動にも携わる婦人会リーダー、でも一方で、トイレを使ったミニーに激怒して即解雇、大真面目に、地域の邸宅に黒人使用人用トイレ設置を広めようとしてたり、

アフリカの貧しい黒人の援助活動をしつつ、日常レベルでは、生理的に黒人を見下げ人格を傷つける、自分の矛盾に気付かない、または顧みない、裕福なこの白人女性が、単純に悪役、というより、

何だかその頃のアメリカ社会、というだけでなくいまだに身近でもありそうな”偏狭な傲慢さ”の化身、のような感じで、いつも華やかなドレスに身を包んでいるけれど、どうも最後まで、この人が画面に現れると、妙な不快感。


でも、なかなかそのミニーも負けておらず、自分の得意技の料理、チョコレートパイで、強烈な逆襲。この辺りも実話なのか、その”物”自体は見えずとも、思えば「69 sixty-nine」以来の衝撃、この作品のなかなかのスパイスの1つ。

このオクタヴィア・スペンサーは、この作品出演者では、アカデミーノミネートだけでなく唯一、助演女優賞受賞だったようですけれど、そのパイ事件といい、

新たな白人女主人、ヒリー群団とはやや異質のセクシーなシーリア(ジェシカ・チェステイン)とのラフで慈悲深い交流、この夫妻とミニーとのような、信頼感と温かみある雇用関係も、実際あったのだろう、とも思わせる、結構インパクト残る深い人間味+威風堂々さ。

          
3/19追記:もう1人のメインの黒人メイド、エイビリーン役を演じたヴィオラ・デイヴィスの方が、アカデミーでも主演女優賞ノミネート、だったのでしたけれど、こちらも様々な感情を抑えた存在感。

以前息子を事故で、それも白人の雇い主の事故時の心ない対処もあって亡くし、心を閉ざしている面、黒人待遇への波紋を恐れている面もあったけれど、

仲間のミニーのされた仕打ちに、スキーターの黒人メイドインタビューに協力、の一歩を踏み出したのも、やはり彼女なりに、心の中の長年の辛抱がふとキレて、勇気に繋がった、という感じで、

終盤、自分をエリザベスの家から追い出す工作をしたヒリーへの、脅せば誰でも言うことを聞くと思ってるんですか、疲れませんか!?という啖呵も静かな貫禄。


劇中、印象的だった様相の1つは、ミニーとシーリア夫妻の関係もあるけれど、このエイビリーンと、女主人エリザベス(アーナ・オライリー)の幼い娘メイ(エマ・ヘンリー)や、

スキーターと少女時代家にいたコンスタンティン(シシリー・タイソン)との間の、黒人メイドの白人の子供に対する無償の愛情、子供から彼女らへの無邪気、無意識の信頼。

エイビリーンが、社交にいそしみ母としての役割を怠るエリザベスの代わりにメイの世話をし、おしめの取替えからトイレのしつけ、また、自分の大切さ、とか情緒的なことを教える様子、コンスタンティンが思春期のスキーターの微妙な内面の悩みを察して励ます様子、など。

それが彼女らの仕事の一環、といえばそれまでだけど、彼女らの人間味から溢れるそういう愛情を、子供も相手の肌の色への偏見なしに受け入れ、そういう人種や立場を超えた触れ合いが、実際こういう家庭に有得たのだろう、というほのぼの感。

ミニーがやや冷笑的に、子供のうちは白人も可愛いけれど、大人になったら親と同じ、と言うように、大人になって周囲の空気によって、黒人への感覚が変わってしまう、ということもまた珍しくなかったのだろう、と偲ばれるけれど、

スキーターは、そういう幼少期に受けたコンスタンティンからの愛情の記憶をしっかり刻んで、忘れなかった白人の一人だろうと。


このスキーターのように大学のため家を出、卒業後町に戻ってきて地元新聞社に就職、というケースは、劇中の町の同年代女性達の中では珍しいようで、他の女性達は結婚して、特に仕事する訳でもなく社交にいそしみ慈善活動に参加したり、裕福な生活を送り、

当然のように黒人メイドを雇っていて、多かれ少なかれ彼女らへの偏見を持っていて、ヒリーのように、それを露に推進しさえする、というパターン。

彼女らは、やはり当然のようにスキーターにも、そういう姿勢、また安定した結婚生活のためのボーイフレンドゲット、を勧めるけれど、どうもそういう価値観には同調出来ず、ヒリーを敵に回してしまい、1人浮いてしまう状態。

家族は、父は登場せず、話にも出た覚えなく、片親だったのか、母(アリソン・ジャネイ)も彼女のキャリアよりは、結婚相手出現を望んでるようで、

出会った青年スチュワート(クリス・ローウェル)は彼女の姿勢に理解を見せたかと思われたけれど、結局波紋を恐れて付いて行けず彼女の元を去り、地域社会でのそういう孤独、苦悩というのは、そう突っ込んで描かれていた訳ではないけれど、結構辛い所、というのも何だか印象的。


ヘルプ~心がつなぐストーリー~(’11)_a0116217_20412391.jpg並みの神経の若い女性だったら、あえて黒人メイド達と共にいばらの道を、というより、その白人仲間の空気に馴染んだ方が、女性としても生きやすいし、変節しても、という所だけれど、

ジャーナリスト志望者として彼女達の生の声を伝えたい、というのが、半端な情熱、覚悟じゃなかったので、町での黒人暗殺事件、時代自体の公民運動の波もあって、

多くの黒人メイド達の協力を集めて、白人地域社会でのそういう孤独の代償に、一冊の本という形になった、というのはやはり感動的。

当時色んな場所で、そういう日常レベルの心の軋みと戦いながらも、勇気を奮って地道に行動を起こした人々がいたからこそ、アメリカでの黒人観も変わっていった、という断片の1つを見るようでも。

そこら辺、エマ・ストーンも、意志の強さとしなやかさ、チャーミングさを兼ね備えたスキーター役にフィットしてた感じ。


その他脇役陣で印象的だったのは、ヒリーの母ミセス・ウォルターズ役のシシー・スペイクスで、私はビデオで見た「ストレイト・ストーリー」での、主人公の娘役以来。

ミセス・ウォルターズは、白人社会にいながら、例のミニーの件の際も、ヒリーに反して彼女に家のトイレ使用を促したり、ヒリーに老人施設に追いやられた、という流れもあってか、娘に同調はせず、黒人メイドにエールを送るスタンス。

そしてこのシシー・スペイクス出演作の中に「ロング・ウォーク・ホーム」もあって、彼女は主人公役ウーピーの雇われてた家の女主人役、やはりウーピーを援助するスタンスだったのだった、と改めて。今回の起用はたまたまなのか?だけれど、ちょっと縁も感じたり。


そういう所で、当時の若い1白人女性としてのスキーターの勇敢な姿勢+辛苦をなめながらも骨太に生きるエイビリーンやミニーら黒人メイド達のパワーが連結して、やはりお国柄、時代、環境も違うけれど、タイトル通り人の素の心、またそのつながりが見えた、ような"肌触り感”あった作品、

見る前のシリアスなイメージよりは、大らかなユーモラスさも散りばめられてて、心に風穴を開けてくれたような満足のヒューマンドラマ、という後味でした。

関連サイト:ヘルプ~心がつなぐストーリー 公式サイトAmazon 「ロング・ウォーク・ホーム」
象のロケット 「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
関連記事:ワールド・トレード・センター(’06)スタンドアップ(’06)ストレイト・ストーリー(’99)英検対策等(’07/8/26)ポセイドン(’06)



by MIEKOMISSLIM | 2012-03-18 22:25 | 洋画 | Trackback(20) | Comments(0)
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