2012年 08月 14日
ユーミンのSUPER WOMAN 「鶴岡真弓と訪ねる女神」<1>
2週目の放映、再放送共うかつにもチェックし損ねてしまって、ややショック。まず「鈴子の恋」の時のような無料動画サイトやYou tubeなど探したけれど見当たらず、
そうしてるうちにNHKオンデマンドでネットで見る方法がある、と判って、その登録や、必要なプレイヤーのインストールとかちょっと手間取ったけれど、何とか無事視聴。
これは、月額945円で見逃した番組見放題、単品だと1番組につき視聴期間1日間で105円、カード決済などで、というシステム、
私の年期入りPCだと、どうも全画面にしたら上手くいかなかったり、画面がややモザイク状気味になったり、録画もないのも残念だけれど、まあこれで内容は見られたので一安心。
ロンドンまではよく来るけれど、アイルランドは初、というユーミン。
鶴岡真弓は、私は初耳の人だったけれど、日本でケルト文化研究の第一人者、だそうで、先日の初対面で結構年下だった森本千絵の場合とは違って、
ユーミンとは「30年ぶり・・」と言ってたか、昔からの知り合いのようで、年代もユーミンより2才上でほぼ同世代。落ち着いた話し方で、おっとりした物腰の感じの人。この人に出会ったことが、アイルランドへの興味のきっかけ、とも。
東海岸のダブリンを拠点に、クロンマクノイズ、キルデア、クレア地方など、最後は西の果てモハーの断崖へと、大学図書館、修道院や教会、宗教的な名所など巡りながら、古代のケルト文化の美術や音楽に触れたり、
聖パトリックと共に、ここでキリスト教を広めた伝説の聖女、聖ブリジットの縁の場所を巡ったり、元々の自然信仰とキリスト教の融合、アイルランドと日本の文化の意外な繋がり、とか、なかなか今回も興味そそられて面白かった。
私はイギリス、ましてアイルランドも未踏、今回風景的には、好きな作品の一つだった「ライアンの娘」の、モハー断崖ほどの険しさ、規模じゃなかったけれど、崖のあった海岸沿い、田園風景など仄かに思い出したり。
そして一番インパクトだったのは、1週目の最後、2人が聖バーソロミュー教会で聞いた、ANUNA(アヌーナ)という男女合唱グループの歌った曲。
2人に説明してた、リーダーらしいマイケル・マクグリンという人は作曲家で、この人が’87年に設立したグループで、中世のケルト音楽を現代に伝えるため活動してる、そうで、皆ろうそくを手にして、教会内で響く美しい声、で、厳かかつ神秘的。
特に、2曲の後の方、主に男性コーラス、終盤女性コーラスが入る「生の只中にありて」は、10世紀に創られた「死」をテーマにした曲らしく、女性が一人叩く太鼓のような楽器での拍子と共に、朗々となだらか、メランコリックな旋律、だけれど、
聞いてるうちに、何だか懐かしい、という感覚、しばらくして、こういう感じのユーミン曲があったような、と。
曲名はぱっとは出てこず、後でちょっとディスコグラフィーの曲名見て、アルバム「KATHMANDU」辺りの曲だった気がして、CDでまず第一候補「命の花」、そして何曲か最初の方を聞いてみたけれど、どうも違うようで、
その前の「THE DANSING SUN」の「砂の惑星」を聞いて、ああこれだ、と。
ユーミン自身は、生のケルト音楽の肉声を聞いたのは初めて、これまで色んな場所で、もっとプリミティブ、エスニックな音楽、ジプシー音楽なども聞いてきたけれど、
今だから言う訳じゃなく、それは、今日ここでこの音楽を聞くための準備だったと思う、などと、1曲目の女性コーラスでの「エルサレム」を聞いた後、しみじみその感動を語ってたのだけれど。
毎回番組冒頭でも、「春よ、来い」は、ペルーに行った時感じた直観を元にして書いた。ペルーの空気感は、古き良き日本が持っていた素朴で懐かしいもので、南米の民族音楽フォルクローレをサウンドに取り入れた、のような紹介があるけれど、
何だか、個人的な感覚だけれど今回この初耳のケルト曲~「砂の惑星」、と繋がったのは、特に創る時ユーミンが意識した訳でなくとも、蓄積してた様々な音楽の片鱗、という感じもして、ちょっと感慨、というか。
8/15追記:アイルランド音楽についてはその他、エンヤ、アイリッシュダンスを現代風にアレンジしたリバーダンス、
そして「タイタニック」の音楽に伝統的な笛「ティン・ホイッスル」が使われてた、などと紹介あって、セリーヌ・ディオンのテーマ曲の伴奏の澄んだ笛の音がそうだった、とか。
ユーミンがずっと興味持ってきた、というケルト文化は、2700年の歴史、とのことで、ケルト民族自体、そもそも余り世界史の中でも覚えなかったけれど、
冒頭の紹介だと、ヨーロッパで暮らしてて、紀元前1世紀にローマ人の勢力拡大で、徐々に衰退、でもローマ人の影響が少ないアイルランドなどで、その文化が色濃く残った、と。
教室の世界史の教科書で見てみたら、確かに紀元前1世紀、カエサルが、今のフランスの地に住んでたケルト人を平定、とか、
メジャーなゲルマン民族皆(37)移(5)動、の語呂合わせの375年より前に、すでに原住地のバルト海沿岸から、先住のケルト民族を圧迫しながら四方に広がってた、などでその名が登場。
ローマ人やゲルマン人にヨーロッパの中心からは追いやられたけれど、その文化はアイルランドに残った、というような歴史だったようで。
そして鶴岡真弓の話で、彼らは大地、太陽を神々とする自然信仰を持ってて、5世紀に、イギリス人聖パトリックがここで、キリスト教を広めたのだけれど、
それは、聖パトリックが土地の三つ葉のクローバーを用いて、人々がそれに生・死・再生というような3つのトリニティの意味合いを持ってたのを、
キリスト教の三位一体の、父・子・聖霊に置き換える、のようなことを穏やかに教え諭す、というようなやり方で、無理やり、でなく、そういう”なだらかな改宗”、というのがちょっと興味深かったり。
ユーミンがしゃがんで傍らの三つ葉のクローバーを手にして、植物だって不思議ですよね、何故神様がこの形にしたのかっていう・・などと呟き。
そして2人は、ダブリンの西のクロンマクノイズの修道院跡に。そこはケルトの黄金時代、7~12世紀に栄えた修道院だそうで、緑のなだらかな平原に、数多くの、アイルランド独特の石の十字架「ケルト十字」が。
これは太陽の形+従来のラテン十字が結び合って出来たケルトキリスト教独特の十字架、とのことで、十字架に丸い輪がかかって、太陽(自然)+キリスト信仰の融合の具体化、という感じでちょっと見覚えない形。
鶴岡真弓は、聖書の話が刻まれてる十字架の役割+側面には、ケルトのキリスト教以前の信仰の動物や文様が刻まれてて、かなりユニーク、と言ってたけれど、確かに生粋の十字架+他信仰シンボルミックスの墓碑、というのは初耳、初見かも。
「ケルト十字」で検索したら、実際のものよりタロット占いのケルト十字法、が多く出てきて、以前タロットカードを持ってた時、そう言えばそういう方法もやったことがあるけれど、何かそういうルーツでもあったようで。
ケルト十字を見た後でユーミンが、古来、日本でも太陽は信仰の対象だったし、アイリッシュケルトの文化に触れて、何処か懐かしい印象を受けた、と言ってたけれど、
2週目に、別の所でケルト十字を見た後で、鶴岡真弓も、日本の太陽崇拝は「日の丸」になって、ケルトのはケルト十字になって、信仰を目に見える形に視覚化する、という意味で、
この2つは、ユーラシアとアジアを繋いでいる、人類の太陽崇拝の2トップ、と言えるかも、などと語ってて、まあ日の丸は、ケルト十字のような含みとか融合、というよりまさにそのまま、という感じだけれど、ちょっと印象的。
8/16追記:そしてもう一つ、意外なアイルランドと日本の共通点、としてインパクトだったのが、トリスケル=三巴(みつどもえ)文様。
それは、2人が、鶴岡真弓がかつて留学してたダブリンのトリニティ・カレッジの、かなり広い細長い図書館を訪れて、見た「ケルズの書」にあった文様で、
「ケルズの書」は、1200年前、ケルトキリスト教の修道士達が、手で聖書に美しい装飾を施したものの最高傑作、だそうで、ユーミンがそれを見て、曼荼羅みたい、と言ってたけれど、
中央にキリストらしき人物、その周りに文様、のものもあって、そう言えば菩薩が中心にあった曼荼羅、のようでも。全体に抑えた色彩、そしてその中に渦巻き文様のトリスケル、があって、
ユーミンが言ってたように、日本太鼓の模様、で馴染みのまさに三巴と同じ、祭りで太鼓や神社の幕に見られる日本の伝統文様の一つ。
この文様が世界の何処で生まれたか、突き止めてる人はいないそうだけれど、この文様を一番よく見てるのは世界で、ケルトの修道士の次に、日本人かも、と。
やはり三つ葉のクローバーに通じるものがあるのか、ケルト人にとっては再生の祈りや観念に通じるものがある、らしいけれど、片や日本では、神社の社文、祭り太鼓の文様になってて、その似たイメージにユーミンも驚き。
鶴岡女史はその小さな太鼓を取り出し、20代でここに留学した時、40年後にここで、日本の太鼓の三巴を叩くとは思いもよらなかった、しかもユーミンさんと一緒に、と笑いながら言って、太鼓の一本締め。
この人の専門は、特に美術装飾、らしいけれど、こういう世界に散らばる、意外な類似・共通イメージの研究、なども、面白そうな、と思ったり。
1週目はそういう、ケルト+キリスト教融合、ケルトと日本文化の共通点、そしてケルト音楽にユーミン曲が重なったり、など、なかなか見所盛り沢山でした。
<2>に続く
関連サイト:ユーミンのSUPER WOMAN、ユーミンのSUPER WOMAN 「鶴岡真弓と訪ねる女神」<1>・<2>、NHKオンデマンド
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<ラウンドタワー前>