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Something Impressive(KYOKOⅢ)


「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。
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ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳(’12)

一昨日の記事で触れたように、「キネマ旬報ベスト・テン」イベントで、まずスタートは、文化映画ベスト・テンの1位「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」上映で、「いい加減な・・・」ブログのいい加減人(Yamato)さんとご一緒して見ました。

冒頭、街中にいる福島氏の映像で始まって、モノクロ作品かと思ったら、作品関係者か?以前見ていて、カラー作品だと知ってる人か?程なく観客席から、「何で色がついてないんだ?!」のような怒声、そして上映が中断。

機材の不具合で、お待ち下さい、のアナウンスで、本来カラーなんだ、と判ったのだけれど、スクリーン左上にオンライン上項目のようなもので色々操作してる様子が映って、場内に笑いも。

10分位続いたのだったか、もしかして、今回の上映は3本ともモノクロで?もしくは中止?とも思ってたら、一瞬カラー映像が映って、拍手が起こったり。程なく無事カラーで再スタート、だったけれど、ちょっと珍しい体験。


この福島菊次郎氏、というのは全く初耳だったけれど、御年90才、という高齢にもかかわらず現役、最近では3.11後の福島にも出向いて撮影、

この長寿キャリアならではの、長いスパンで、広島の原爆~福島災害の爪跡、に至るまで、日本のタブー、恥部的現場に向けてシャッターをきり、訴え続けてきたのだった、

まあ単に”反骨精神”という形容だけでは済まないような、こういうカメラマンがいたのだった、ということ自体ちょっと驚き。ナレーションは大杉漣担当だったのだった、と。


2/14追記:一番インパクト残ったのは序盤、被爆者、やせ細った身体の中村杉松さんが、原爆症の苦しみを麻痺させるため、自ら内股に切り付けた無数の傷跡の痛々しい、というより無残過ぎる写真、

それを撮っている内に、福島氏自身も精神状態不安定になって、3ヶ月位精神病院に入院した、のような淡々と語ってはいるけれど、凄まじい逸話。


ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳(’12)_a0116217_12304264.jpg中村さんは、被爆者でありながら、妻も原爆で亡くし、6人の子供と自分の設計のために漁に出なければならない身、

後年、やっと病院で検査、治療が受けられる、と思ったら、背中がすっぽり入るような白いギブスのみを与えられ、追い返された、のようなシーンも。((C)現代人文社、福島氏の著書→)

福島氏は、粗末な家に住む中村一家で、中村さんの合意もあって10年に渡ってその苦難の暮らしぶりを写真に写し続け、とりわけ印象深く主要なモデルの一人、であったようだけれど、

中村さんが亡くなっておくやみに行った時、息子に「帰れ!」と怒声を浴びせられ、自分のしてきたことは子供達を酷く傷つけてきたのか、とショックを受ける、という、自分のカメラマンとしての”業”への痛み、という場面も。


原爆関連でもう1つインパクトだったのは、戦後、アメリカによる広島でのABCC(原爆障害調査委員会)、という機関。

これも今回知ったのだけれど、原爆による傷害の実態を詳細に調査記録、つまり核開発資料集め、のための機関で、治療行為はなく、10万人以上の被爆者から採血、さらに被爆、に当たるようなレントゲン写真を撮っていた、という実態。

中村さんの妻もそうだったようで、被爆者が亡くなると、遺族から遺体を数千円で買い取って、解剖実験を行っていて、その数は5千体以上、だったと。

作品中では、アウシュビッツと同じではないか?のようなナレーションもあって、色んな映画などで、戦後羽振りいいアメリカ兵に群がる日本人、という構図は見かけても、

いくら敗戦国、とはいえ、歴史的な壊滅的被害を受けた当地広島で、そういう勝利国の非人道的な組織、というのが堂々まかり通ってた、というのもにわかに信じ難い話。


何だか、こう書いていて、ふと思い出したのは「アトミック・カフェ」での、アメリカ側の、当時の原爆投下感覚。ブログの感想を見直してみたら、広島や長崎に原爆を投下したアメリカ兵達の直後の、観光気分、無邪気な様子や、

当時のトルーマン大統領の「史上最高の科学的ギャンブルに挑み成功」等の、あたかも核実験に成功、のような誇らしげな声明、などとあって、

被爆者達の現実意的な苦しみ、というものに全く無縁の非人道的ABCC、というものと繋がるような。


2/15追記:また福島氏は、こういう戦後のアメリカの日本での暴挙、と共に、日本史上のタブーである、昭和天皇の戦争責任、というものをはっきり口にしてて、そういう趣旨の写真展も行っていたようで。

昭和天皇の、当時の、戦争責任について問われた時の返答、

「そういう言葉のアヤについては、(『私が深く悲しみとするあの戦争』という発言が戦争責任を認めたことになるのかについては)私はそういう文学方面はあまり研究していないので、よくわかりませんから、そういう問題についてはお答えできかねます」

というのも引用されてて、その時の質問内容からの( )内の部分は示されてなかったけれど、こういう発言、またそれで容認、というか、それでことが済んでいった不満もあらわに。


昭和天皇のショットは、原爆慰霊碑に立ち寄った時のものだったと思うけれど、その慰霊碑のある平和公園自体が、元々は被爆で家を失った人々のバラックの”原爆スラム”地域で、

'70年代になって撤去が始まって、緑地帯にしてしまうことで、広島の”恥部”が覆い隠されてしまった、というくだり。その地を追われた人々への実際の対応はどうだったのか?

平和公園は未踏なのだけれど、そう思って映像を見ると、福島氏が歩いてた、そういう小奇麗な公園の景観自体に、何だか戦後の日本の”嘘”っぽい軽薄さ、という感じも。


そういう風に、カメラを通しての、日本という国の矛盾、嘘への糾弾、というスタンスから、国からの支給など受けられない、と、子供の世話にもなってないけれど、

年金も受け取らず、たまに入る原稿料でつつましく暮らしてる、という、何というか、反骨、というより徹底した筋の通し具合、の人物、という印象。


あと福島氏について、印象的だったのは、3人の子供を男手1つで育てたシングルファーザーでもあった、ということ。

この人は山口県出身で、中村さんを追った「ピカドン ある原爆被災者の記録」という写真集が39才の時賞を取って上京、プロになって、

戦後、という時代柄もあったかもしれないけれど、遅咲きのカメラマン、だったようで、その年に離婚、上京の際3人の子供も連れてきた、とのことで、

離婚の詳しい経緯の説明はなかったけれど、中村一家撮影への心身の傾倒ぶり、からしても、真っ当な神経の妻、であれば、ついていけないのももっとも、とは思うのだけれど。

その破綻後、妻でなくこの人が子供を引き取った経緯も不明だけれど、成長後の長女の人が、作品中、写真展会場でだったか登場してて、

福島氏について、「よく(子供を)見てくれていたと思う、家で、写真展のため写真の木枠作りをしたり、楽しかった、(父は)格好いいと思う」などと感謝、敬意の意を示してて、

自分の子供をモデルにするような平穏な作風でなく、撮影対象からして、激動のカメラマン人生の中、ロマンス的な話としては、後年、離れ島に移住した際追ってきて一時期同居した女性、後にその人とも別れ、のようなエピソードもあったけれど、

離婚と同時に子供は妻に押し付け、自分はアートの道を好き勝手に邁進、という訳でなく、そういう、親としての本分もそれなりに果たしてた、というのが伺えた、という人間味。


作品、またそれにまつわるエピソードとしては、やはり最初の被爆実態関連のが衝撃的だったけれど、他にインパクトだったのは、福島氏は防衛庁への取材で自衛隊と軍需産業内部に入って、内密の軍備の隠し撮りまで行って、

その後、暴漢に襲われて重傷を負ったり、自宅を放火されたり、という、何だか、故伊丹監督など彷彿、のようなエピソード。

福島氏が、そういう現実的な身の危険、を代償にして命がけで告発したのは、暴力団組織、とか裏の世界でなく、れっきとした”国”の機関、というのも何だか生半可でない覚悟、意志というか。



ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳(’12)_a0116217_12321839.jpgその他、瀬戸内海の離島の戦争孤児の姿、祝島の原発反対運動、成田空港建設反対の三里塚闘争の農民、学生運動、ウーマンリブの活動家、公害の被害者、など、

現場で被写体の人々と同じ空間に身を置き、その心情を分け合ってこその、臨場感ある写真の数々、という印象。(←(C)現代人文社、福島氏の著書)

この人の追う被写体は、輝かしい成功者達、でなく、ひたすら、国(の都合)によって虐げられたり、人権を無視されたり、という脆い弱者達、というのも徹底したスタンス。

冒頭のシーンでは、ビルの急な階段を上がる時、知人におんぶされてたりしたけれど、何だかカメラを手にしてシャッターをきる時は、90才、というのを忘れるような結構機敏、柔軟な動き。

最新の、3.11後の福島取材、なども、住居の山口から東北まで、全く単身なのか、同行スタッフもいるのか?だけれど、健康不安などあったら、気力、体力的にも到底無理だろう、と。


こういう高齢芸術家の密接ルポ、といえば「ミリキタニの猫」を思い出したけれど、あれは確か監督がホームレスの画家ミリキタニ氏を同居させて、という展開あったドキュメンタリー、

今回のこの福島氏と、手掛けた長谷川三郎監督とは、そこまでの接近ではなかったと思うけれど、福島氏が愛犬と暮らす、PCや本類、シングルベッド、そうスペースあるとも思えなかった住居、

近所のスーパーでの買出し、簡素な食事ぶりまで、なかなかこの”生きる伝説”っぽいこの人物の息遣い、素顔に迫ってる、という肌触り感。

そして、写真について訥々と語る時、この一見市井の老人、からそこはかとなく漂う、ある種の頑固な一徹さは、伝わってきたのだけれど、

折にどうも、本人の言っている内容が?聞き取れない時があって、発言部分は一部字幕付きだったけれど、いっそ全部付いてればよかったのに、と、ちょっと残念。


そういう所で、この「キネマ旬報」イベント1本目、他の2本同様、渋系作品、とは予想、覚悟はしてましたけれど、半世紀以上に渡って”日本の裏”を突いてきた、こういうちょっと驚きの高齢カメラマンの存在、

またその作品群から、社会や歴史教科書には載ってない、直視しにくいような実態、日本とアメリカの力関係ルーツ問題、など改めて知ったり、思ったより色々、頭に破片が残ったドキュメンタリーでした。

関連サイト:キネマ旬報ベスト・テン「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」公式サイトgoo映画 「ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳」
関連記事:2012年 第86回 キネマ旬報ベスト・テン 第1位映画鑑賞会と表彰式アトミック・カフェ(’82)アトミック・カフェ追記村の写真館(’04)恋愛写真(’03)TAKESHIS'(’05)ライフ・オン・ザ・ロングボード(’05)バルトの楽園(’06)監督ばんざい!(’07)GSワンダーランド(’08)ひみつのアッコちゃん(’12)

   

by MIEKOMISSLIM | 2013-02-13 23:45 | 邦画 | Trackback | Comments(0)
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