2014年 08月 07日
「オルセー美術館展」特番 オルセーの旅人 画家たちの声が聞こえる
今回の展示会で、音声ナビゲートをしていて、出品作品リストの表紙にも載ってた東出昌大が、実際のパリのオルセーを訪ね、話題作を巡りながら、マネや彼の元に集まった画家達が、これまでになかった絵画の表現を始めて、
そういう印象派の作品が、当時スキャンダル的に卑下されたり、その画法への風当りなど、まあ印象派誕生時のラフな紹介、おさらい、という構成。
私はその6日前国立新美術館に見に行ってて、「ヴィーナスの誕生」「笛を吹く少年」「ロシュホールの逃亡」など来日してたものや、ルノワール、モネ、ドガなどの馴染み作品も見受けられたり。
東出昌大って、どうも見た出演作は思い当たらず、最近杏の交際相手として、という程度だけれど、モデル出身で、18才の時パリに来たことがあったそうで、その風貌からして、パリの街並みを歩く姿も、日本人青年にしてはそう浮いてないような。
そう特別芸術への造詣深い?という感じもしなかったけれど、それぞれの作品の前で素朴な感想、美術学校を訪ねて同世代の学生達と、役者の立場で表現について話し合ったり、見る分には判り易かった感じ。
まず、世界を変えた1枚、としてマネの「草上の昼食」。この絵の当時のスキャンダル性、というのは知ってたけれど、
普通の身なりの紳士に混じって、野外で座ってくつろぐ堂々裸体の女性、という、彼らはそこで一体何をしてたのか?という想像を掻き立てる設定もだけれど、
150年前、そもそも聖書や神話の中の女性でない、市井の生身の女性の裸体そのものを描いた絵、という所からして未知の領域、という時代だったのだ、と改めて。
そして次に、私はちょッと馴染みはなかったけれど、美術史上最大のスキャンダル、だったらしい、やはりマネの「オリンピア」。これまた、堂々ベッドに横たわる娼婦の裸体、もまたしかり、で、
同じ頃の、こちらの方が余程なまめかしいポーズ、表情の女性裸体じゃないか?という、アレクサンドル・カバネルの「ヴィーナスの誕生」はサロンで評価されたのに対して、
この問題作に人々は動揺、パニックとなり、それを鎮めるのに軍隊まで出動した?とかでマネはアートを脅かす危険人物、にされたらしいけれど、
マネって、新たなタッチの描写方法をする印象派の、というだけでなく、題材的に、日常生活の中の女性の裸体、というタブーだった新ジャンルに切り込んだ開拓者でもあったのだった、と改めて。
8/9追記:そして、今回のおオルセー展の目玉、「笛を吹く少年」(→カード)も、”人物画の常識を覆す画期的な”ものだった、とのことで、
これは、これまで知るマネの女性人物画より、確かに輪郭もくっきり、色彩的にもメリハリが効いてる作品、とは思ったけれど、「世界一有名な少年」と呼ばれてたり、それ程までの衝撃作?という感じで、
どこが?と思ったけれど、背景を大胆に省略、人物をその形だけで浮かび上がらせる、というのがアバンギャルドった、そうで、当時は、そういう風な時代だったのだった、と改めて。
マネの周りに集まってきてた、多くの若い画家の卵達に、マネは、絵はもっと自由に描いていいんだ、と言って、「笛を吹く・・」はその自らの実践、だったそうだけれど、
この絵も、サロンからは受け取りを拒否されて、マネはこの絵でまた”伝統の破壊者”のレッテルを張られた、そうで。
そしてマネと若い落ちこぼれ画家達がのろしをあげて、’74年初めて開いた印象派展は、結構酷評された、というのは知ってたけれど、
再現映像で、会場に来た老画家が、私が結構長年大判ポスターを部屋に飾ってたルノワールの「踊り子」に対して、なんて残念なことだ、この画家はデッサンがしっかり出来ないとは!、この踊り子の足はプワプワじゃないか!とか、
ピサロの冬の畑の風景画に対して、自分のメガネをぬぐってから、
一体全体これは何だ?畑の上?霜?汚れたキャンバスの上に絵の具をベタベタ擦り付けただけじゃないか!とあきれ、
モネの「印象日の出」(←カード)に対して、一体これは何を描いたのか?とカタログを見て、印象、もちろんそうだろう、この中にはたっぷり印象が入っているんだろう・・・
描きかけの壁紙でさえ、これに比べればずっと完成されている、などと一蹴、などというくだりがあって、今やスタンダード人気の絵が、当時の価値観から、こういう風に具体的ににべもなくけなされてるのが、妙に可笑しかったり。
彼らへの「印象派」という呼び名は、批判からついた、のようなことは覚えあったけれど、この「第1回印象派展」という呼び名も、彼らが」自主的につけたのでなく、後でそう呼ばれるものだったようで、
とにかく当時、今や超有名画家のモネ、ルノワール、ピサロら含め、マネの周囲の若者の画家たちは、こんなものはただの印象、と世間から笑われた、というエピソードが少し詳しく映像で紹介されてたのが今回一番面白かった。
そういう流れで、今回ナビゲートの東出昌大が、「印象派」とうのは尊敬の意味を込めた言葉と思っていたけれど、若者たちを馬鹿にする呼び名だったとは驚いた、
名画とは巨匠が描いたもの描いたもの、と思い込んでいたけれど、違う、印象派は、自分と同世代の若者の”戦闘宣言”だったんだ、などと言ってたけれど、
若い頃パリコレという舞台でパリ経験あった、というのと、そういう印象派船出の頃の若い画家、に合わせての起用、という意味もあったのかも。
その他、オルセー美術館で人々の人気エリアが、豪華なシャンデリアなどの優雅な「祝典の間」、そこにあるゆるキャラ的な彫刻、ロザンの弟子フランソワ・ポンポン作、という「シロクマ」や、内側からガラス越しにパリの街並みが見える、大時計とか、
オルセー理事長のお勧めとして、印象派ギャラリーに置かれてる、日本人デザイナー吉岡徳仁氏が印象派の作品と相乗効果を持ちたいと思って創った、というガラスのベンチ「Water Block」など、少しだけれど、オルセー自体のスポット紹介もあったり、
これも、遅ればせながら今回のオルセー展鑑賞+アルファで、なかなか興味深い番組でした。
関連サイト:オルセー美術館展 印象派の誕生ー描くことの自由ー 公式サイト
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草の上の昼食(’59)
<出品作品リスト表紙>
オルセー美術館展 Orsay Museum Exhibition 「印象派の殿堂」として知られるパリ・オルセー美術館から、84点の絵画が来日ました。今回のテーマは「印象派の誕生」。1874年の第1回印象派展開催から140年 ― パリの美術界を震撼させた「新しい絵画」の誕生の衝撃を、オルセー美術館所有の名画によって回顧する美術展です。 マネに始まり、モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌら印象派、後期印象派を牽引した画家たちの作品だけでなく、同時代のコローやミレー、クールらのレアリスムから、...... more
私も「オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由」を見てきましたので、興味深く読ませていただきました。マネの絵画でも最も好きなもののひとつ「笛を吹く少年」が14年ぶりに観られたのは感激でした。ミレーの「晩鐘」もすごく好きな絵ですが、この作品も10年以上たって再開することができました。印象派の絵画も粒揃いの作品を見られてよかったです。
印象派絵画の代表作が一つの部屋ん並び、モネ、シスレー、ルノワール、セザンヌに画家の個性理解できたのも良かったと思います。印象派以外にも優れた作品が来日していて充実した美術展で満足しました。
私はこの美術展を観た機会に、マネの美術、写実主義(クールベ)と自然主義(ミレー)、二つのリアリズの違い、印象派の画家のそれぞれの個性、印象派とは別の道を歩んだ同同時代の画家について整理し、自分なりの見方も書いてみました。よろしかったらご一読いだき、ご感想、ご意見などコメントいただけると感謝致します。
今回のオルセー展ご覧になったのですね。私はやはり、大判のモネ版「草上の昼食」が一番印象的で、この同タイトル本家のマネ版などについても、この記事の番組で、当時世間に巻き起こした波紋、スキャンダル性、また、印象派自体への専門家達の、侮蔑的評価の具体的なコメントなど判って興味深かったです。
これまでのマネのイメージとややギャップあった「笛を吹く少年」、他の定番印象派画家作品もあり、今年印象派関連は、あと「チューリヒ美術館展」には行こうと思っているのですけれど、このオルセー展もなかなか充実でした。そちらの記事を拝読した後に、コメント欄に伺いたいと思います。