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私の暮らしかた / 大貫妙子(’13)

先日、昨年秋に出た大貫妙子新刊エッセイ、「私の暮らしかた」を読み終えました。

これも、先日の「ユーミンの罪」に続き、年頭位に図書館に予約していたのが、先々週末ようやく連絡。こちらも私の後に35人待ちで、なかなかの人気ぶり。今手元に大貫著作「神様の目覚まし時計」「散文散歩」があって、それ以来。


やはりあっさり読み易い文体で、葉山の自宅での、自然志向らしい暮らしぶり、野良猫達、両親、近所とのローカルエピソードや、田植え、皮むき間伐ツアー参加、旅番組での離島訪問など、相変わらずアクティブな活動ぶり、

折々環境問題への考察や率直な気持ち、など綴られてて、音楽の章も少しあったけれど、一番印象的だったのは、近年相次いで他界したご両親とのエピソード。


「空蝉の夏」の章で、お父さんの大貫健一郎氏について書いてあって、かつて特攻隊員で、実際出撃、その後も、あわや、という所で何とか一命をとりとめていて、実際の特攻攻撃の杜撰さ、無茶苦茶な実態が色々と大貫さんの文を通して語られてて、

改めて、戦時中の混沌の中で否応なく散らされた多くの命、このお父さんが「運命の分かれ道」で生きながらえたからこそ、その後大貫妙子というミュージシャンも生まれた、というようなちょっとした感慨も。

章の最期に、大貫氏へのインタビューを元にしたNHK番組があって、のちに、大貫氏と渡辺考共著「特攻隊振武寮ー証言:帰還兵は地獄を見た」という本が、’09年講談社から出ている、と付記が。


ご両親は晩年、葉山の家で大貫さんと同居してたようで、「ともに食べる喜び」の章で、元々本人も、

>食事は私にとって、音楽を作ることと同じくらい楽しくなくてはならないし、手の抜くことのできない行為なのだ。<

というように、元々本人も食にはこだわりあるようだけれど、高齢の両親のため、内容を考えてマメに食事の準備する様子。


でも、お父さんが寝たきりになり、家での介護も大変、そんな中お母さんが急に倒れ、脳幹出血で意識が戻らず、大貫さんは、決まってるコンサートをキャンセルできず、

終わるまで三日間だけ頑張って。と懇願、その後弟さんとの電話で、血圧が下がって、今日が山かもしれない、ときいて、お母さんの写真を胸に、再び懇願、

お母さんは私が音楽を続けることを誰よりも応援してくれていた、きっと聞き届けてくれると妙な確信があった、そしてコンサートが終わった翌日未明亡くなった、というような経過、

その後の淋しさが「お母さん、さようなら」の章で綴られてて、次の「ノラと私のひとりの家」冒頭で、その一月後にお父さんも亡くなった、とのことで、今もなぜふたりがここにいないのかよくわからない。・・というようなくだり。

何だか、今まだ近くに住む私の母は元気ではあるけれど、今回こういう老いた両親との死をもっての別れについて率直に書いている辺りを読んで、

同じ独身である我が身にも一部重なって、やはりとにかく今に至った状況で、母との時間は、悔いないように大事にしておかないと、などと少ししみじみした次第。


大貫さん本人は、それはまあ淋しいだろうけれど、音楽という世界もあるし、その関連で札幌の方にも住居があるようだし、兄や弟、友人知人層もいて、

葉山の家にしても、一人住まいにはなったけれど、折々登場するノラ猫達とのほんわか交流、気心知れてそうな近所の人々との交流もあって、

本人もマイペースにポジティブな姿勢で、そう侘しい孤独な境遇、という感じはこの本を読む限りはしないのだけれど。<(C)(株)新潮社↓>

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「散文散歩」の最後の方にも、両親や弟さんについての章があったのだったけれど、今回思ったよりも、身辺の老いた両親、その介護問題についても率直に語っていて、

やはり音楽での、ヨーロピアン路線での洒脱なエレガントさ、アコースティックライブでの研ぎ澄まされた歌声の崇高な佇まいイメージ、からは、やや飛躍ある真摯な地道さ、という感じ。


そこら辺、大貫さんと同じ様な世代ではあっても、世田谷の家で暮らし、夫婦で音楽界を様々なカードを切りながら走り続ける煌びやかさ、のユーミンは、そういう意味では、日常レベルでは我が身に置き換えようがない、やはり異次元世界の存在、という感じも改めて。

でも大貫さんにしても、やはりまあ音楽業界の一人者たる、というか、草むしりやボランチィア的な自然の中での作業を厭わない庶民っぽいラフさもあるけれど、

食にしても、自分の米のための秋田の田、とか、名古屋のメーカーの注文後1年待ち!の鋳物ホーロー鍋、とか、

どうも夏でもエアコンを一切使わない、料理に砂糖も使わない、とか、一般人からはちょっとマネのしにくいこだわり、ストイックさ、もちらほら、だけれど、やはり食というのは生活の中で大事な要素、とも改めて思えたり。


今回、折に旅ルポはあったけれど、海外編は「ナマケモノを見に行く」のコスタリカのみ、まあ昨今のエボラ熱騒ぎで、「神さまの目覚まし時計」の頃のようなアフリカ旅行、なども難しいだろうし、

’06年の文である「十八年目のただいま」の章で、9.11テロの衝撃で、以降ばったりと国外へ出なくなってしまった、とのこと。

では何が楽しいか、というと、やはり音楽につきてしまう。とのことで、今回音楽のことに触れてるのは章では「歌う私、歌わない私」、坂本龍一とのコラボアルバム、そのツアーについての「ツアーの日々」、

3.11震災での犠牲者の鎮魂の趣旨もあった高野山でのコンサートの「高野山で歌う」、など。


葉山の家を持つ前、東京で、ソロになって徐々に収入が増え始めて段々広い部屋に引っ越していったけれど、初めての一人暮らしの頃は畳4畳半+3畳の台所の木造アパート、

SUGAR BABEの頃は、どこへ行ってもヤジを飛ばされ、応援してくれたファンもいたけれど、その頃のいい思い出がない、とのことで、今となってはの超名盤「SONGS」の頃の、本人の実情改めて、だったり、

最後の「荷物をおろして」の章で、

>ソロ活動に写って40年経って、山下達郎さんと会うたびに、「こんなに長く続けるとは思わなかったね」と話す。彼のようにバリバリの現役がそんなことを口にするほど、商業音楽の地盤はつねに不確かなものだ。<

・・アルバムを録音してきたスタジオも次々閉鎖になって、レコード~CD~配信ダウンロードになって、という状況で、というような状況は認識、でも、

>流行というのは、忘れた頃にまた同じようなものがまたやってくる、結局、創る者は自分の色を鮮明にして、愚直にやり続けることで、流行とは別のところに自分を築き上げていく、

音楽にかぎらずそういう人を私は支持しているし、そうやって長く続けていく人はどんどん自由になっていく。<

などというくだりは、何だかこの人らしい、という感じ。


最後の方で、声帯の衰えを自覚したらすっきり止めようと思う。それはそれとして実は、ごく最近、歌うことが楽しいと思えるようになった、

ゴールが近くなってきたことが心境の変化の理由なのかもしれない、だんだん荷物を下ろしていくようで気持ちが軽くなる、などとあって、引き際への意識、も感じられるような。

先日トリビュートアルバムはチェックしたけれど、思えばこの人のコンサートはご無沙汰、近年のニューアルバムもノータッチ、

折にテープやCDで’90年代までのを流す位だけれど、浮世離れした清涼ボイスで、多少煮詰まった時にも心に風穴を開けてくれる、私にとっては貴重なミュージシャンの一人。

いつぞや渋谷でだったかのコンサートで、公演後恒例のステージへの行列に加わって、花を渡して「お体大切に頑張って下さい」と声はかけたのだったけれど、

やはりその有り方は違っても、ユーミン同様、末永く活動していて欲しい1人、という感覚改めて、というこの1冊でした。

関連サイト:Amazon 「私の暮らしかた/大貫妙子」大貫妙子 公式サイト
関連記事:SONGS 大貫妙子大貫妙子めがね(’07)SONGS 福山雅治/矢野顕子A LONG VACATION From Ladies(’09)風博士/西岡たかし(’76)・Skylightにポプラの枯葉/伊藤銀次(’83)SONGS / SUGAR BABE(’75)期末テスト対策終了大貫妙子トリビュート・アルバム Tribute to Taeko Onuki(’13)<1><2>

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                <(C)(株)新潮社>


by MIEKOMISSLIM | 2014-11-03 01:30 | 本・音楽 | Trackback | Comments(0)
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「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。


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