やや厚め上野千鶴子本読了。
少し前ユーミンがラジオで「面白い」と言ってて、読んだ人々も「腑に落ちまくり!」らしい、とのことで、
ちょっと興味そそられて図書館で借りて、例によって寝る前2章ずつペース位で。
この人の本は「ミッドナイト・コール」以来、本置き場のどこかにあるはず、ちょっと内容は?覚えてないけど、シャープな後味だったのは確か。
ミソジニーって?ちょっと浮かばなかったけれど、
misogyny「(男性の)女性嫌悪」、こういう語があったのだった、と。<↓表紙(C)(株)紀伊国屋書店>
斜め読みな所も折々だけれど、印象的な所も何か所か。
まず、「ユーミンの罪」の酒井順子が示唆した、という
>女にはふたつの価値、自分で獲得した価値と、他人(つまり男)によって与えられる価値があり、女業界では、前者より後者のほうが高いらしい<
という所。
折に理不尽な苦さ混りに極力見て見ぬふり、っていう感覚だけど、
こうきっぱり具体的な言葉での表現を見て、やっぱりねぇ、というか。
あと、最初の方の、
吉行淳之介の著書を読めば「女がわかる」のではなく、
わかるのは「女が何か、何者であるべきか、あってほしいか、についての男の性幻想」であり、
それは東洋(オリエント)について書かれた西洋人の書物をいくら読んでも、判るのは、西洋人の頭のなかにあるオリエント妄想だけ、という、
「東洋とは何か、についての西洋の知」と定義された「オリエンタリズム」の事情に似ている、という指摘。
後半では、2章を割いていた'97年の東電OL事件について。
確か外人が容疑者、とか、この事件の覚えはあったけれど、
絞殺された女性が、慶応卒で昼間は東電の総合職社員、夜は渋谷で立ちんぼ、つまり売春、という二重生活を送っていて、
その女性が1千万近い年収の仕事を持ちながら1回2千円~5千円、で身を売っていた、などの詳細は初耳。
当時この事件題材の出版物が色々出て、「他人事とは思えない」「東電OLは私だ」のような女性からの声も多かった、そうだけれど、
私には正直、今回その女性の家庭環境とかの背景部分を読んでも、
実際そういう生活を送るに至った心理メカは判らないし、何らかの共感らしきものも湧かないし、
それをする位なら、他の思い切った人生の舵取り方向転換もあっただろう、というのがせいぜいだけど、
脳裏にややインパクト残ったのは、その2千円、5千円、というのは、
「その女性の方が男の値段をつけていた」のでは、という、佐野眞一「東電OL症候群」のある読者女性や上野氏の見方。
それで一部分、腑に落ちる、というのか、なるほど、、という心境になったり。
後半では、その他、皇太子の雅子さんへの求愛の言葉「一生全力でお守りします」について。
>「守る」とは囲いに閉じ込めて一生支配する、という意味で、
男が女を「守る」という時、「守る」べき外敵はしばしばしばしば自分より力のある他の男性をさし、
「所得」の言い換えにすぎない「守る」というコトバが愛の代名詞になることを「権力のエロス化」と呼ぶ。
青年皇太子が、愛の切実な表現としてこのコトバを使ったことに偽りはないだろうが、
男にとっての愛が、所有や支配の形式しかとりえないことを、この概念は序実に示すのだ。<
というくだり。
まあ男が女を「守る」って、例えば、ステレオタイプかもしれないけど、
別に他人であっても、街で暴力沙汰に巻き込まれている非力な女性をとっさに腕力で助ける男性、とか、
それが恋人や妻であれば尚更、で、無償の行為も世間にはあるだろうし、
そういう具体例じゃなくても、この時の皇太子さんの言葉は、主に、
自分のプロポーズによって、皇室という別世界に入るという大決断をした雅子さんの負担をなるべく気遣う、という趣旨、と大まかには思ってて、
まあ突き詰めれば確かに「権力のエロス化」なのかもしれないけど、
当の雅子さんも、色々経緯があっての段階で、そのコトバを好意的には取ったのだろうし、
前半に「皇室のミソジニー」という章もあるし、皇室っていうフィルターを通しての言葉と取ったから、かもしれないけれど、ちょっと神経質すぎ?な気も。
そこら辺皇太子夫妻のみならず、当の二人の間で「守りたい」「守られたい」のバランスが取れてさえいれば、
割れなべに綴じ蓋的、であっても別にいいんじゃないか?とも思ったり。
ただそこら辺の「所有」感覚が、一方的に一線を越えてしまうとると、
相手を「守る」のとは真逆、(性)犯罪、凶悪犯罪に走りかねない、的な可能性もあるっていうことで。
まあちょっと?な所もあったけれど、全体的には、
太古の歴史から脈々と続いて来た”男と女”事情を分かり易く解説してくれてるテキストで、
まともに考えたら確かに、日常化されてるふとした事の中に”歪み”があって、
そこら辺気をつけて、現状、自分で獲得してきたモノしか持たない我が身、
その”歪み”に翻弄されないようにしたいけど、余り雑念入れずマイペースでやっていくしかないって所で、
やんわりじんわり腑に落ちた、っていう1冊でした。
関連サイト:amazzon 「女ぎらいー日本のミソジニー / 上野千鶴子」