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2009年 07月 23日 ( 1 )


KYOKO('95)

先日「The Harimaya bridge はりまや橋」に追記した通り、この機会に、と10年ぶり以上になるか、少しずつ「KYOKO」ビデオを見直してるのですが、やはり現ブログ名にも、スレッド時代から3代目、ということで「・・Ⅲ」を入れてる由縁の作品だし、再レビューしておこうと思います。

今、ビデオではKYOKO(高岡早紀)が、昔自分にダンスを教えてくれて、末期のエイズ状態のホセ(カルロス・オソリオ)を、家族に会わすためマイアミまで赤いバンで送り届けようとしてる道中の所。高岡早紀は前髪短いポニーテイル、やはり「バタアシ金魚」('90)の頃の、あどけない面差しが残ってたのでした。

「The Harimaya・・」に抜擢された一因、という、この時のアフリカ系アメリカ人との演技、というのは、序盤NYでの、リムジン運転手ラルフ(スコット・ホワイトハースト)との絡みの事かと思うのですが、彼のピザ宅配便バイクのサイドカーに乗る前、「Hop in(乗りなよ).」と言われて、笑顔で「I’m not pizza!」と応じるシーンとか、懐かしく、
                                        (C)幻冬舎
a0116217_17595996.jpg村上龍がメイキング本で、そういう序盤の高岡早紀の演技が、自分が元々二階堂ミホのために書いてた脚本のKYOKOのイメージと全く違っていて驚き、しかももっとスケールの大きいKYOKOになった、等と書いていたのを思い出したり。

また、バレエ歴はあっても、かなり現地でダンス練習を積んで臨んだ、とのことだったですが、日本女優の海外ロケでの本格的本場ダンス、というのは、他に余り覚えなく。序盤は、ホセの叔父パブロ(オスカー・コロン)の店で、ルンバ・コロンビアを踊るシーンがあって、暗い店内、赤い照明の中、本来男のダンス、という独特な体の動かし方、リズムの取り方等、改めて見応えでした。

7/25追記:道中バンに乗り込む少年が登場で、この少年も、KYOKOと絡みあったアフリカ系アメリカ人だった、と思い出しましたが、先日少しメイキング本を読み返していて、実は演じたのは少女(エンジェル・ステファンズ)だった、と見かけ、役名もエンジェルでしたが、女の子だったとは思ってませんでした。

ホセのため車に載せてる薬を、売りさばくため盗もうとした、という出会いでしたが、エイズ患者に冷淡な宿泊施設が多い中、誰でも泊まれる宿を知ってる、という切り札で同乗。スピード違反で止められた時、機転を利かしてピンチを救ったりもしつつ、

再度こっそり薬を盗もうとして、KYOKOに見つかり、毅然と、下車するよう言われ降服して返し、その後は車中、KYOKOが「ファック・ユー」=「死んじまえ」とか片言日本語を教える友好シーンもあったりしたのでした。

約20年程前アメリカ旅の途中、KYOKOのバンと同じ道だったかどうかは判りませんが、やはりNY~マイアミに下るルートをバスで下ったりしたのも、この作品への愛着の元だったですが、

私の直接のアフリカ系アメリカ人接触といえば、NYで初めて地下鉄に乗ろうとした時、閉まるドアに荷物が挟まれて、黒人の少年が、とっさにドアに手をかけ、開けようとしてくれた、という出来事があった、と。他にも少しはあったかもしれませんが、この事は覚えてます。

劇中エイズ患者への偏見・差別、というのは、そういう困難な宿探しの時等あったのでしたが、ある宿で、2人が宿泊を断わられるのを見かけた元弁護士が、それは州法違反だ、と宿主を悟し、礼を言うKYOKOに「礼はいい。日本も日本人も嫌いだ。たた法を守っただけだ。」等と語って去ったり。

国境を超えた一番の友好シーンはやはり、ノース・キャロライナでパーティーをしてた庭先で道を聞き、去り際少し踊ってみせたのが受けて、その家の芝生の広い庭で、KYOKOが人々にマンボを伝授、の所。NYでのルンバ・コロンビアとは趣違って、軽快なテンポにのって踊る様子が、改めてキュートなハイライトシーンでした。

この時高岡早紀はホットパンツ+袖をまくったシャツ姿だったのですが、NYシーンでは厚手ジャケット+ジーンズで、南下するにつれて、この夏向きスタイルになって、私の旅の時も、一応水着だけは持っていったのですが、フロリダの気候までは頭に入れず、持ち服は長袖ばかりで、マイアミに着いたら、いきなり夏だったので、まず店でTシャツを買って着替えた、と思い出したりしたのでした。

このダンスシーンロケ地は、日本だとまず許可が下りないような、当地の名所だけれど、その持ち主が映画好きだったので、ちょっとだけなら、と撮らしてくれた、等とパンフの村上VS安岡顕の談話であったのでした。

劇中の女主人が、日本人がこういう風に踊るなんて。自動車や電気器具を売ったり不動産を買うだけかと思ってた、等と言ってたのでしたが、若い日本人女性が、キューバ人から伝授されたダンスをアメリカ本土で中~高年アメリカ人達に楽しげに教える、という何処かファンタジー的でもあって、爽快な絵柄。

こういうダンスシーンも、ですが、道中のドライブシーンで、サントラでも聞き馴染んだキューバ音楽が折々流れ、やはり改めて、随所に村上龍のキューバ嗜好が、とも感じ入りました。

7/26追記:ホセはエイズの障害で記憶が曖昧、ずっとKYOKOをただ自分に親切にしてくれる女性、としか思えず、KYOKOも、ホセが自分を幼馴染みだったエレーナ、という名で呼ぶのを許していたのですが、終盤、車にあったダンスシューズを見て、ようやく幼いKYOKOにダンスを教えた記憶が蘇り、

買い物帰りに夜道で暴漢達に襲われるKYOKOを、体を張って助けて、彼女を思い出したことを告げ、再開後初めて2人でチャ・チャ・チャを踊りますが、皮肉にも、その最中に息絶え、2人の真の再開は短く終わってしまい、この時の、ホセが倒れ、KYOKOがただ佇んでいるシーンがあって、

a0116217_11124673.jpg次には、おそらくマイアミでの、内輪の葬儀の場になって、ホセの母がKYOKOに感謝し労う、という、2人の旅の終着点として、しっとりしたシーンでした。

メイキング本の、村上VS高岡談話で、その撮影の時、KYOKOがホセが倒れている傍らにいる、という所から、アクション、の声がかからず高岡早紀がただ佇んでいて、いきなりカット、になって彼女は驚いて立ち去り、村上龍が説明しに行った、というエピソードがあって、

村上龍は、彼女なら、演技として、ただ立っているにしても、何か違うものになったろうし、KYOKOが何もできずただ立っている、という絵が撮りたくて、あえてアクションをかけなかった、ということで、でもあれは見る度悪かったと思う、等と語っていて、

思えば、普段の寝たきり末期状態でのダンス自体、というのも、夢の中のようで現実味は薄いですが、もし職業監督だったら、同じような場面でも、高岡早紀にあえて演技させない、といういう発想はなかったかも、とも。

この作品の製作総指揮は、インディペンダント映画巨匠のロジャー・コーマンで、スコセッシ、ロン・ハワード、ジェームズ・キャメロン監督、ジャック・ニコルソン等を輩出した人で、日本側プロデューサーだった故江尻京子さんの紹介で村上龍に会い、

ストーリー、シナリオを気に入って「KYOKO」を引き受けた、という経緯で、出演者の交代等もあって、様々な絡みや偶然で、このユニーク作が出来ていた、とは思ったのでしたが、

メイキング本で、同氏はハリウッド・メジャーの象徴の空撮嫌い、とのことで、契約にも入っておらず、NYやフロリダで、村上龍の自腹空撮シーンもあったらしいですが、同氏は高岡早紀については、

とにかく美しい、という第一印象、同時にとても繊細なフィーリングを持っており、彼女だからこそ、KYOKOのキャラクターを深く理解し、役に取り組めたと思う、等とコメントしてたのでした。

7/27追記:やや忙しない中、少しずつで最後まで見直し終えたのですが、やはりラストのホセの故郷キューバ、KYOKOが、路上で踊る人々を眺めてたり、ステージではパワフルな生演奏のダンスホールのような所の片隅で、傍で体を揺らす小さな少年に誘われるように、徐々に躍動的に踊っていたのも、マンボをアメリカ人達に教えたのに次いで、インパクトあったダンスシーンでした。

思えば、この作品への好感の1つは、アメリカシーンでは、KYOKOのダンスを注目の中心にしても、本場キューバでは、彼女は、ステージ上で脚光を浴びたり、というのでなく、あくまで伝授されたダンス好きの日本人の旅人、という脇役に留めていた、という事もあったと思います。

それは村上龍という人の、キューバという国に対しての距離感、というのか、アメリカに対するのとは違った思慮、節操、のような感覚もしたのでした。

エンドロールでは、テーマ曲「エスペランサ」が流れ、やはりこの曲が一番耳に残ります。久方にサントラCDを取り出して小野リサに+でBGMにしようかと。

また、以前気に留めませんでしたが、登場順のキャスト名で、2番目が、MASAYUKI SHIDAとあって、冒頭日本で、KYOKOにカウボーイハットの土産を頼んでいた同僚のトラック運転手で、役名も特になかったチョイ役で、メイキング本でも触れられてなくて、
                                     (C)集英社
a0116217_2357512.jpg検索では志田雅之、という名以外、他の出演作等情報は出てきませんが、思えばこの作品で、高岡早紀以外の唯一の、日本人俳優だったのでした。少女期の踊ったりホセを見送るシーンの、顔は見えなかったKYOKOは、体型からしてやはり、というか、外人俳優でした。

「The Harimaya・・」を機に、久方に振り返った、私のブログ出発点でもあった「KYOKO」で、やはり一言で言えば、村上龍のキューバテイスト+高岡早紀の魅力のマッチ具合、につきるのかもしれませんが、

「The Harimaya・・」での時を経た彼女や、清水美沙の、英語を扱い外国人と対応しつつも、芯の強さ+心あるものを受け入れてゆく、という日本女性の姿勢の美徳、という描写は、舞台やコンセプトは全く違っても、何だか通じるものも感じたりはしたのでした。

7/28追記:村上龍著作は何冊か手元にあったり、図書館のを読んだりしてきて、近年遠ざかってはいましたが、最新読んだのは、昨年末ビデオで見た「ストレイト・ストーリー」('99)を元にした小説で、映画のシーンから人物の背景や心理を読み取るような、作家的な映画レビュー、という趣でした。

「あの金で何が買えたか」という文庫を、結構前に買ったまま未読、また映画化も聞いた「半島を出よ」も図書館のを中断のままだった、とか思い出しました。

著作を自ら監督映画化した中「だいじょうぶマイフレンド」以外、「限りなく透明に近いブルー」「ラッフルズホテル」「トパーズ」は見て、前にも触れた事があったのですが、どうも原作のインパクトもあって、余りどう、という印象残りませんでした。

「ラッフルズ・・」のエキゾチックな背景や藤谷美和子のフワフワしたムード、はそれなりに味わいだったのですが。「KYOKO」は映画の後で改めて小説化、だったので、作品の延長、というテイストだったのでした。

(C)集英社
a0116217_14404682.jpg本人以外の監督作で見たのは、庵野英明作品「ラブ&ポップ」('98)、李相日作品「69 sixty nine」('04)でしたが、

「69・・・」は原作も力の抜けた自伝的青春もの、村上龍著作は、自分の日常からは異次元世界でも、文章力で引き入れられる、という感覚で馴染んできた所がありましたが、この作品はそういう意味では、すんなり読みやすかった、と。

映画化も、妻夫木君が主人公の高校生ケンを演じ、まさか具体的には、というやや悪趣味エピソードまでしっかり映像化していたり、音楽や本への傾倒ぶり等、結構楽しめて、「KYOKO」以外では、好感持てた村上原作作品で、最新の李作品「フラガール」に通じる勢いのようなものもあったと思います。

「KYOKO」パンフレットでは、「ストレイト・・」の、デビット・リンチのような病理を日本とフランスの伝統が救う、というようなテーマで次の作品を考えている、等語ってましたが、どうもあれから14年、映画は作っておらず、封印したのかもしれません。

それは、「KYOKO」で満足いく監督作が出来たから、というのも理由、と聞いた事もありますが、何にしても個人的には、好きな映画群、というのとは別枠で印象に残った作品で、何かしらのバイタリティへの景気付け、という意識もあって、5年前になりますが、あえてこの昔の作品のスレッドを立てたのでした。

改めて、ですがこの作品が、男女の感情錯綜するラブストーリーではなく、KYOKOというキュートな躍動感あるヒロインが、少女時代にダンスを教えて孤独を救ってくれた、異国人ホセに対する、純愛、というよりも、もう少し大きくフラットで、卑小な駆け引きない人間愛、博愛のようなものを核に行動していた、というのもテイストに合っていて後味良かった、という所だったと思います。

関連サイト:amazon 「KYOKO」amazon 「KYOKO~サウンドトラック~淀川長治さんの「KYOKO」解説
関連記事:「KYOKO」「69 sixty nine」カンブリア宮殿アメリカの旅<7>半島を出よ(’05)寝ずの番(’06)ストレイト・ストーリー(’99)ストレイト・ストーリー(’00)The Harimaya Bridge はりまや橋(’09)「KYOKO」オリジナルサウンドトラック(’96)

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                    <’90年5月、NYにて>
<アート・デザイン部門に応募します>


by MIEKOMISSLIM | 2009-07-23 00:00 | 邦画 | Trackback | Comments(0)
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「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。


by MIEKOMISSLIM
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