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山桜(’08)

先日「オーケストラの少女」記事で触れたように、3日、「セシオン杉並まつり2012」の映画イベントで、「オーケストラ・・」に続いてこの作品を見てきました。

藤沢周平小説原作で篠原哲雄監督作品。江戸時代後期、今の山形の海坂藩舞台、貧しい農民に重圧をかけ私腹を肥やそうとする重臣、その理不尽なジレンマに1人謀反を起こす武士、彼と密かに思い合う女性の暮らしを描いた時代劇。


のどかな山形の風景、モチーフとなる1本の山桜の楚々とした美しさ、そして、ヒロイン野江役の田中麗奈。彼女は色んなタイプの現代女性を、結構器用に演じてきた印象だけれど、

今回こういう時代もので、一度はすれ違った運命の手塚(東山紀之)への思いを秘めたヒロインを、意外にしっとり、でも芯を持つ強さも漂わせながら演じてて、また新たな一面を見た、感じ。

そして普段の穏和な物腰、でも1人淡々とその剣の腕で、正義を貫こうとした東山紀之演じる手塚の、言葉は少ないだけに、一途な思い。

藤沢作品はどれも未読だけれど、その原作作品「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」を見てきてて、やや詳細記憶薄れてるものもあるけれど、

今回のこの「山桜」が、何というか、主演2人の動向、内面の描写に余り余分な所もなく、かつ全編にさり気ない人情味や情緒も漂ってて、一番良かった。


6/7追記:篠原作品は私は「地下鉄(メトロ)に乗って」以来、初の時代劇、とのことだけれど、余りそう仰々しく力が入ってない感じで。

田中麗奈は、そう言えばこの作品公開の頃、「徹子の部屋」に着物姿で出てたのだったけれど、この人の時代劇、というのも初、和服での耐える姿、忍ぶ思い、というのもこなしてみせた、というか。

これまでの藤沢原作作品でもあったけれど、この時代柄、嫁ぎ先磯村家で夫(千葉哲也)、舅(高橋長英)、姑(長島暎子)と、全く心が通わず、前夫に先立たれた経歴を、蔑まれる野江。

ふと再会、自分に好意を寄せていた手塚が、手折ってくれた山桜、「幸せでござろうな」とさり気なくかけてくれた言葉、を心に秘めて過ごす彼女。

実家の父母(篠田三郎 、 檀ふみ)、弟( 北条隆博)、妹( 南沢奈央)、また磯村家の下人源吉(樋浦勉)などの気遣いはあるけれど、孤独な暮らし。

そんな彼女が唯一行動に出たのは終盤、手塚が藩の重臣諏訪(村井国夫)を斬って、牢獄暮らしになった後、一人で暮らす彼の母(冨司純子)の元へ、山桜を持っての訪問。

その母の温かい応対に、言葉なくこぼれる涙、というのが、このヒロインの思いが一気に溢れるようで、ハイライトな情緒シーン、一番印象的だった。


そこら辺からラストにかけての、一青窈のテーマ曲「栞」は、何だか、野江の言葉のかわりに涙が心境を物語るシーン、獄中の物言わぬ手塚の思い、などが、この曲が代弁、の感じで、そういう演出も有りかもしれないけれど、

歌詞の「僕と君」という人称も現代風だし、やや違和感。このシーンではYou tubeにあったパターン(↓)のようにせめてインストだけ、もしくは、劇中は流さずエンドロールのみで、でも良かったかと。

        

そう言えば「蝉しぐれ」のテーマ曲も一青曲「かざぐるま」だったり、この人の曲って、時代劇にもフィット感、今回の「栞」も、曲自体は、結構フレーズが頭に残って、悪くはないと思うのだけれど。


その他印象に残ったのは、手塚が田んぼで、百姓一家の幼い娘におむすびを分けるシーン。結局その娘、その家の老婆も衰弱死、粗末な2つの墓に百姓の男が手を合わせる姿を、静かに見つめる様子。

その後誰にも告げずただ1人で、藩の発展、という名目で飢饉状態にもかかわらず新田開発の無理な政策を押す諏訪を、城内、という公の場所で,自らの剣脳で断罪する姿。

思えば久方の時代もの、やはり正直、殺傷沙汰はあえて見たい、とも思えないけれど、その手塚の姿勢には、ある種筋の通った清しさ、を感じたり。

東山紀之、ヒガシは見かけたのも随分久方だけれど、今回剣さばき、立ち回りも見せて、貧しい者達への真直ぐな眼差し、静かに義憤を募らせ正義感を貫く武士、として、

また静かなラブストーリーの、野江の相手役手塚として、余り科白も多くなかったのも良かったのかもしれないけれど、この人なりの味を漂わせてた感じ。


あと脇役陣で脳裏に残ったのは、野江のいつもたおやかな母役壇ふみ、そう出演シーンはなかったけれど、肝心の大詰めシーンで野江の心情を包み込んで、さすがの存在感、という感の手塚の母、冨司純子。

ラストは、手塚の運命や2人の今後に、緩やかにハッピーエンドの予感漂わす終わり方、お決まり、といえばそうだけれど、

劇中、諏訪の暴政を都へ訴える使者は暗殺されたり、当時の閉じられた地域の不穏さも漂ってたけれど、

何だか何が真っ当で何が妙なのか、価値観混乱の今の時勢、こういう藤沢作品風勧善懲悪、の後味も良かった。こちらも「オーケストラ・・」同様、終演時に客席から拍手。


そういう所で、そう大作感、という訳ではないけれど、当時の時代の藩という地域社会の上部の理不尽さ、横暴を斬る目線、庶民の暮らし、今とはかなりギャップある女性の立場、とか、

そういう中のさり気ないラブストーリーとして、映像の美しさもあって、こちらも割と満足でした。

関連サイト:山桜 公式サイトAmazon 「山桜」杉並区イベント情報 セシオン杉並まつり2012象のロケット 「山桜」
関連記事:天国の本屋~恋火(’04)地下鉄(メトロ)に乗って(’06)ざわざわ下北沢(’00)東京マリーゴールド(’01)~追悼・市川準監督~夕凪の街 桜の国(’07)犬と私の10の約束(’08)徹子の部屋 田中麗奈雨上がる(’00)(「博士の愛した数式」スレッドの4)、寝ずの番(’06)フラガール(’06)犬神家の一族(’06)(「市川崑物語」スレッドの9)、愛の流刑地(’07)それでもボクはやってない(’06)さよならみどりちゃん(’05)日本沈没(’06)のど自慢(’99)オーバードライヴ(運命じゃない人(’05)人の砂漠(’10)恋愛寫眞(’03)蝉しぐれ(’05)武士の一分(’06)珈琲時光(’04)SONGS 一青窈武部聡志受け入れて/一青窈(「転校生・・」の下)、春うた 2008LIFE井上陽水~40年を語る~クリスマスの約束(’09)ハナミズキ(’10)クリスマスの約束(’09)クリスマスの約束(’11)SONGS 一青窈
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by MIEKOMISSLIM | 2012-06-07 23:26 | 邦画 | Trackback(3) | Comments(0)

オーケストラの少女(’37)

一昨日、近くの複合施設セシオン杉並で2日、3日開催だった地域イベント「セシオン杉並2012」の、映画コーナーで「オーケストラの少女」「山桜」上映、都合も合ったので見てきました。

この視聴覚室では、大分前やはりイベントで、何か小津作品を見た覚え。今回2作品とも未見、「オーケストラ・・」はモノクロの音楽ドラマ、「山桜」は'08年公開いの藤沢周平原作の時代もので、どちらもそれぞれ結構満足。


まず午前スタートの「オーケストラ・・」は、職にあぶれたトロンボーン奏者ジョン(アドルフ・マンジュー)や仲間の危機を救おうと、ジョンの娘パトリシア(ディアナ・ダービン)が奔走、

失業者100人での即席オーケストラを実現させようと、ふとしたことで知り合った富豪フロスト夫人(アリス・ブラディ)がスポンサーを買って出るけれど、

夫(ユージン・パレット)には話を通さないまま旅に出てしまってて、どうも気まぐれ的。夫は難色ありありだけれど、名のある人物が一群に加わったら、という条件に、

パトリシアは有名指揮者レオポルド・ストコフスキー(本人)に指揮を直訴、途中色々めげながらも、持ち前の歌唱力も披露しながら、恐れをしらぬ大胆さも見せ、明るく活躍、夢を叶える、という、まあ幸せなお伽噺だけれど、

ハートウォーミングな展開+ストコフスキー自身とフィラデルフィア交響楽団が出演、劇中奏でる”本物”の音色の重厚さ+ダービンの伸びある歌声の魅力、嫌味ないキャラクターなどもあって、見応え+聞き応えの後味。終了時には客席から拍手も。


冒頭から、ストコフスキーと交響楽団の演奏シーン。このストコフスキーは、劇中同様、普段も指揮棒を使わず手で指揮するスタイル、とのことで。見るからに、やや気難しく芸術家肌的風貌、物腰。

        

事務的にあしらわれ、パトリシアのとりつくしまもなさそうだったけれど、再度練習場に潜り込んだ彼女が、演奏に合わせて「ハレルヤ」を歌ってみせた歌唱力には、率直に賛辞を送り、

        

その後、ラストにかけて、再び彼の家に入り込んだ彼女の作戦で、所狭しと押しかけてた失業者100人オーケストラの繰り広げる演奏には、思わずその手が反応、ノリノリに指揮してみせる、なかなかコミカルな芸達者ぶり。

また、そういう無名の少女や貧しい音楽家達の出す生粋の”音”の優秀さそのものに、名のある指揮者が率直に反応を見せる、というのも、何だか素朴、素直な流れ。


劇中の演奏曲は、チャイコフスキーの「第五交響楽」、ベルリオーズの「ラコッツイ行進曲」、モーツァルトの「ハレルヤ」、リストの「ハンガリア狂詩曲第二番」、ワーグナーの「ローエングリン」、ヴェルディの「ラ・トラヴィアータ」、

ダービンが歌ったのは「ハレルヤ」「光の雨」「心は自由」「乾杯の歌」だったようで、私が聞き馴染みあったのは「ハンガリア・・」と「乾杯の歌」。

一番インパクトシーンは、やはり失業オーケストラのストコフスキー宅で演奏した「ハンガリア・・」。そしてパトリシアが楽団の練習で歌ってみせた「ハレルヤ」、ラストのステージ上での「乾杯の歌」。

「乾杯・・」はメロディだけは馴染みあったけれど、曲名も今回知って、ヴェルディの「椿姫」からの曲だったのだった、と。


この作品は題名も初耳、この監督のヘンリー・コスター作品も初、ヒロイン役ダービンも初耳、だったけれど、このダービンは、ちょっと検索したら、ジュディ・ガーラントより1才上で、少女期共演もあって、

その映画会社MGM上部から、彼女とガーラントの太ってる方を斬る、という命令、実際ガーラントの方が少し太ってたけど、部下が、間違えて、または、ガーラントと性的関係があったので、ダービンの方が追い出されてしまった、という説があるようで。

とにかく彼女はユニバーサル・スタジオに移転、「オーケストラ・・」の前年「天使の花園」という出演作もヒット、そして、ガーラントが「オズの魔法使」でブレイクの2年前に、この作品メガヒット、でメジャー人気になった、とのことで、

劇中披露の歌声は、オペラシンガーのような伸びで、比べてどう、というものではないかもしれないけれど、ガーラントに遜色ない感じ。

事の次第では、彼女の方が「オズ・・」のドロシー役で華々しくブレイクしててもおかしくなかった、そういう、ガーラントと同世代でやや因縁あった子役スター、こういう女優もいたのだった、と今にして。

今90才で健在のようだけれど、'50年に引退後、芸能界から完全に姿を消してしまった、とか。


先日淀川さんのクラシック名画解説を聞いたばかりだけれど、やはりその頃の、まあ素朴と言えばそうだけれど、こういうホームドラマ+本格的なクラシック音楽ミックスの初の試み、だったようで。

実在のフィラデルフィア楽団と共に、失業オーケストラ演奏も、アテレコではなく生、ではないかと思うけれど、クレジットで名があったのは、ジョン役アドルフ・マンジューと、父娘の隣人フルート奏者マイケル役のミシャ・オウナ位、

でも他の多くの脇役陣もそれなりの楽器の腕前の役者、か、ミュージシャンをあの人数集めて、見せた即席オーケストラ軍団映像、醸した音の重厚さ、というのはなかなか。


ドラマ的には、そもそもジョンとパトリシアは父子家庭のようで、母の姿はなく、特に話が出た覚えもないけれど、行動的で茶目っ気ある娘が、やや情けない風情の父の危機を救う、家族愛、

また近所の同様な立場の人々を助けたいという彼女の正義感、彼女にタクシー代を踏み倒されながらも、その歌声に心動かされて、見守る立場になった運転手、のような人間ドラマ味、というのもやんわり漂ってて、

当時のアイドルもの、程好いコミカルさ+音楽と相まって、後味いいクラシックものでした。

関連サイト:オーケストラの少女 紹介サイトAmazon 「オーケストラの少女」セシオン杉並まつり2012象のロケット 「オーケストラの少女」
関連記事:カサブランカ(’43)・オズの魔法使(’39)


       

by MIEKOMISSLIM | 2012-06-05 23:10 | 洋画 | Trackback(2) | Comments(0)
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「KYOKO」は’02年に映画掲示板にスレッドを立てた村上龍監督、高岡早紀主演映画で、当ブログはそのスレッド、次のブログに続いての3代目です。マイペースで、長年ファンのユーミン関連初め音楽、美術展、仕事、グルメ(食事)、映画、本、日常、旅のことなどアップしてます。


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